けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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「……こんなところにいたのか律」
「お、澪。どしたの」
「それはこっちのセリフだ。わざわざ屋上まで来てなにしてるの」
「ん? いやー、別になにってわけじゃないんだけど」
 言いながら、あたしはちょいちょいと空を指差した。

「いい天気だなーって」
「……どう見てもめちゃくちゃ曇ってるぞ」
 苦笑する澪。まあ、当たり前だろう。
 澪の言う通り、あたしたちの頭上に広がる空はどんよりと暗く、
 今にも雪を落としてきそうな分厚い雲が広がっているのだから。
「寒いだろ。ぼーっとするなら部室にしなよ」
「んー……まあ、もうちょっとしたら戻るよ」
「…………」
 澪は何か言いたげな顔をしていたけれど、やがて諦めたようにため息をついて、
「まったく」
 そんな悪態をつきながら隣にやってきた。

「澪は戻りなよ。寒いだろ」
「律の方が寒そう。コートもマフラーもしないで」
「全部部室に置いてあるんだもーん」
「そんなんじゃ風邪ひく……まあ、律なら大丈夫か」
「……おい」
 どういう意味だそりゃ、とは何となく悔しくて突っ込みたくない。
 そりゃ、澪に比べれば……って、いや、そんなことはどうでもいい。多分。

 と、ひとり拗ねモードに入ったあたしを澪は軽く笑い飛ばすと、
「ごめん、うそ。律だって風邪くらいひくよな」
「なーんか引っかかる言い方してくれんじゃん」
「ふふ、いつもからかってくるから仕返し」
「そーかい。ほれ、いいからもう戻れって」
「なんで?」
「なんでって……ほら、あたしって孤独が似合う女だし?」
「疑問系で言われても説得力ないな」
 呆れ顔でそう言うと、ふいに澪が一歩、あたしへの距離を縮めてくる。
「本当は寂しがりのくせして」
「う、うるせ――」
 てっきり「バカ言ってないで帰るぞ」と首根っこでも掴まれるものだと思い、思わず肩をすくめたその瞬間。
 ふわりと澪の香りに包まれた。 


「……珍しいじゃん。澪からこんなこと」
 あたしの首元を覆うのは、ふわふわのマフラー。
 澪の愛用しているシャンプーの香りに包まれて、あたしは隣を見た。
 マフラーで繋がったふたり。なんだか不思議な光景だ。
 ……ていうか、あの澪が自分からこんなこっ恥ずかしいことをしてくれるとは。
「ま、たまにはいいんじゃないか」
「……そか。そだな、たまには」
「そう。たまには」
 しれっと言いながら、澪は明後日の方向を見ている。
 ちらりと覗いた耳が赤いのは、寒さのせいだけなんだろうか?

「……あ、律、ほら」
 澪が空を見上げる。それに引っ張られるようにして、あたしも顔を上げた。
「雪、降ってきた」
「うわ、ほんとだ」
「……そろそろ戻ろう。本当に風邪ひいちゃうよ」
 ちらちらと舞い始めた雪を手の平に乗せて澪が言う。
「…………」
 先に戻れよ。そう言いかけてあたしは口をつぐんだ。
 そんなこと、言えるはずがないんだ。
 だってあたしは、もうこの温かさを知ってしまった。

「そーだな。戻るか。受験生が風邪ひいちゃけしからんからな」
「そういうこと」
「へへ、こんな姿、他のやつらに見られたら大変だな」
「こ、校舎に戻ったら取るに決まってるだろ!」
「えー」
「えー、じゃない!」
 ごちん。愛情たっぷりのゲンコツをもらって、あたしたちは歩き出す。

「で、律は結局屋上で何してたの」
「ん? まあ、ちょっとね」
 最後の文化祭が終わって、卒業が近づいて。
 感傷に浸っていた……とは、言えないよな。
 律らしくないと笑われてしまうに決まってる。
「ま、いろいろと考え事してたのよ」
「考え事? 律らしくない」
「…………」
 考え事してるだけで「らしくない」とはあんまりだと思います。
「まーいいじゃん。たまには」
「そうだな。……たまには」
「ほぎゃっ」
 きゅ、と手を握られてあたしは飛び上がる。
 氷のような冷たい手。他でもない澪の手だ。
 あまりの冷たさに思わず振り払ってしまいそうになったけれど、
「……ま、たまには、な」
 澪の冷たい手を温めてやる日があってもいいだろ。


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