けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

SS107

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/09/09(木) 23:31:05

 アパートのベランダに出る。吸い込めば、肺の中にじんわり広がっていくのが感じられるぐらい冷え切った夜の空気。少し深呼吸をして、どてらのポケットから携帯を取り出してリダイヤルの画面を呼び出す。
もう何百回となく見たあの番号を見つめながらほんのわずかに勇気をこめてボタンを押すと、右から左へ流れてく。

プルルル プルルル プッ

澪「もしもし」
律『もしもーし』
澪「うん。おつかれさま。体調はどう?」
律『ちょっとつかれた』
澪「律の好きなチーズケーキ買ってあるぞ」
律『澪だいすきーっ』

言ったそばから消えていってしまいそうなぐらい、なんともない話。ただ、大好きなあなたの声が聞きたい。話していたい。側にいるからこそ、素直になりたいから。


律が今のバイトをやめて、夜の居酒屋のバイトをやると言い出した。

律「時給も良いし、夕飯代うくんだぜー」
澪「で、でも、まだ貯金あるし…」

なかなかうんと言わなかったら、律が言った。

律「あたし高校と大学と私立だろ。聡もまだまだ金かかるし。あまり親に頼れないよ」
澪「それなら私だってシフト増やすよ」
律「うちの問題だからさ」

やんわり拒絶されて、私もこれ以上言えなかった。

お互い言葉には出さなかったけど、二人でいる時間はめっきり減った。交代で作っていたご飯はいつも私一人分になり、律は真夜中に疲れて帰ってきて会話も減った。たまには丸一日一緒にいたいって思っても、それは私のわがままだって言い聞かせて。
 だから、たまに二人で一緒にいられる夜は必死に律を求めて、抱きしめて、がまんできなくて泣いた。そんな私の頭を律はゆっくり撫でてくれた。



 そんなことが数週間たったある日。その日も律はバイトで、私はヘッドホンをして作詞をしていた。ムギの作ってくれた曲はアップテンポの激しい曲なのに、私の歌詞は………今回は唯に頼もうかな……。メールしようと携帯に手を伸ばしたとき、ディスプレイがパアァッと光りだした。

澪「り、りりぃつぅ?」
律『おー、起きてたか』

時計を見るとまだ日付が変わってない。

律『今日ヒマでさ、今から帰るよ! 澪ちゅわんが泣かないうちにさ!』
澪「だ、誰が泣くかっ!」

言ってるそばから体がぽっと熱くなるし、笑顔になっていく。何でこいつの声はこんなに人を元気にさせるんだろう?
唯とムギ。梓の話、私のバイトの話。今まで話す時間がなかったことをずっと話した。そういえば、高校生の頃は毎日電話してたっけ。

律『あたしさ、結構今のちょっと足りない関係。好きだったりするんだよ』

ずっと話してるから、電車に乗らないで歩いて帰ってきてるみたい。

澪「なんで?」
律『だって澪ちゅわんの涙で濡れた寝顔見れるもんなっ!』
澪「誰が泣かしてるんだ!」

あの頃よりずっと二人でいる時間は長いはずなのに、どうしてこんなに話すことが多いんだろう。素直に話せるんだろう。

律『安心するんだ』
澪「え?」
律『澪一人で寝るとき、いつも豆球だろ? あたしのために玄関の明かりをつけてくれてるだろ。あれ見るとさ、澪家にいるんだな、待ってくれてるんだなって、すっごくうれしくなるんだ。 ほら、今日だって』

私は携帯を握り締めたまま玄関を飛び出した。

それからは減った二人の時間を埋めるように電話したり、メールして。

律『なに?』
澪「幸せだなって」

今日もベランダから見える家々の明かりひとつひとつがすごく暖かく見えて……。

澪「ぶぇっっくしっ!!」
律『なにやってんだよ』

そろそろ律、見えるかな。やっぱり待ってるってのがいいんだよな。
恋人気分、出るしね。



  • この雰囲気、いいですね! -- 名無しさん (2011-05-20 01:02:41)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー