投稿日:2010/09/02(木) 20:56:45
「転校、することになったんだ」
小石を蹴りながら、何とでもないようにそいつは言った。
小石を蹴りながら、何とでもないようにそいつは言った。
それは中学二年の少し肌寒い日だった。あと二、三日すれば春休みで、
ついさっきまで「春休みは一緒にあそこ行こう」「あれやらない?」と話していたところなのに。
ついさっきまで「春休みは一緒にあそこ行こう」「あれやらない?」と話していたところなのに。
「てん、こう?」
私は律の突然の告白に頭がついていけず、その場に足を止めた。動けなかった。
律も少し先で立ち止まり、振り向いた。
律も少し先で立ち止まり、振り向いた。
冗談だと思った。
いつもみたいに私をからかってるんだと思った。
だって、さっき三年生も一緒のクラスになれたらいいなって。
だから私は笑い飛ばそうとした。けど、振り向いた律の顔は今まで見たことないくらいに真剣で。
いつもみたいに私をからかってるんだと思った。
だって、さっき三年生も一緒のクラスになれたらいいなって。
だから私は笑い飛ばそうとした。けど、振り向いた律の顔は今まで見たことないくらいに真剣で。
「……、嘘、でしょ?」
ねえ律、嘘だって。
「んなわけないだろ」って笑ってよ。
「んなわけないだろ」って笑ってよ。
「……、嘘、だったらいいのに」
律は小さな声でそう言うと俯いた。
「……っ。いつ、なの?どこ?」
「多分春休みくらいには引っ越すらしい。……場所は」
「遠いとこ?」
「多分春休みくらいには引っ越すらしい。……場所は」
「遠いとこ?」
律は無言で頷いた。
私はそれ以上何も言えずにただ律に近付くと、手を握った。律の手は少し冷たくて、そして震えていた。
私はそれ以上何も言えずにただ律に近付くと、手を握った。律の手は少し冷たくて、そして震えていた。
「澪……、私、嫌だ、転校なんてしたくないよ……」
律は震える声で言うと、私の胸に顔を押し付け咽び泣いた。
私も泣きたかった。大声で泣きたかった。けど一番辛いのは律だから。
だから私は必死に涙を止めようとした。けど後から後からやってくる心の洪水に耐え切れず
私も少し涙を流した。
私も泣きたかった。大声で泣きたかった。けど一番辛いのは律だから。
だから私は必死に涙を止めようとした。けど後から後からやってくる心の洪水に耐え切れず
私も少し涙を流した。
「……あのな、澪」
「何?」
「何?」
やがてお互い泣き病むと、律は私の胸に顔を押し付けたままくぐもった声で言った。
「澪、高校、桜高受けるんだよな?」
「まだちゃんと決めてないけど……多分」
「私もな、高校そこ行くから。ちゃんと勉強して澪と一緒に桜高行くから」
「まだちゃんと決めてないけど……多分」
「私もな、高校そこ行くから。ちゃんと勉強して澪と一緒に桜高行くから」
約束な。
私たちは小指を絡め、一年後、笑って会おうと誓った。
それからその日、私たちは手を繋ぎあったまま家に帰った。
別れるとき、律は大きく手を振って叫んだ。
それからその日、私たちは手を繋ぎあったまま家に帰った。
別れるとき、律は大きく手を振って叫んだ。
「澪!私たち、離れてても親友だからな!」
「桜高一緒に行けなかったら絶交だからな!」
「桜高一緒に行けなかったら絶交だからな!」
私がそう叫び返すと律は「えぇ!?」と困惑したような声を上げた。
それがおかしくて私が笑うと律もつられて笑った。
それがおかしくて私が笑うと律もつられて笑った。
「澪、大好き」
「知ってる」
「澪は?」
「大好きだよ、律」
「知ってる」
「澪は?」
「大好きだよ、律」
普段言えないようなことも今日は言えた。けどやっぱり照れ臭くて、
目が合うとお互い照れ隠しに笑いあった。
目が合うとお互い照れ隠しに笑いあった。
律が曲がり角で見えなくなるまで私は手を振り続けた。律もずっと手を振り続けてくれた。
律が見えなくなると、途端にまた涙が溢れてきて、もう一度私は空に向かって大きく叫んだ。
律が見えなくなると、途端にまた涙が溢れてきて、もう一度私は空に向かって大きく叫んだ。
「律、大好き!」
知ってる!
そう聞こえた気がした。
そう聞こえた気がした。