けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

短編132

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mioritsu

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投稿日:2010/08/21(土) 21:36:33

そろそろ夜も深まってきた頃、律のサプライズ誕生日会はお開きになった。
途中さわ子先生が乱入してきたり、和が赤飯を炊いて持ってきたりと色々あったけど
何より一生懸命考えたこの誕生日会を律が喜んでくれたのが嬉しかった。

「けど、ほんと驚いたぜ……、明日ちゃんと皆にお礼言わないとな」

律が大きく伸びをしながら言う。私はその隣で歩きながら「そうだな」と頷いた。
帰り道。いつもの通学路を二人で並んで歩く。あと何回、こうやって一緒にこの道を
歩けるんだろう。そう考えると少しだけ胸が疼いた。

「にしても、今年の唯の誕生日プレゼント、何なんだろうな。ムギのよりでかいし」
「さあな」
「梓のは逆にやけに小さいんだよなー」
「へえ」
「……、澪」
「何?」
「人がわざわざプレゼントの話持ち出してるのに何で澪は渡してこない。
いつもみたいにさー、『え、律にプレゼント!?恥かしくて渡せなーい!』とか
思ってるだろうから渡しやすいようにしてやったのに!」

わざわざ裏声を使って私の真似(?)をしてプレゼントを催促する律。
全く、自分から催促するバカがどこにいる。
私は溜息をつくと「ないよ」と言った。

「え?」
「だから用意してない」

本当に何も。
忘れてたわけじゃ無い。ただ私は、他の皆が律にあげるようなありきたりな
プレゼントは嫌だった。それだけ。

「……あ、そーなんだ」

律が暗がりの中でもわかるくらい、とてつもなく悲しそうな顔をした。
私はもう一度、今度は自分の心を落ち着かせる為に大きく溜息を吐いた。そして律の手を掴んで
自分の方を向かせた。

「律」
「な、なに?」
「何も用意してないから。だから律の欲しいものを言って」

何でも良い。今なら律が望むことなら世界中の人の前で歌うことだって出来る気がする。
カタチに残らないものでも、律の心に残るものをあげたいから。

「……そうだな。それじゃあ」

律が真剣な顔をして言った。私はうんっと大きく頷いた。

「もし学園祭で劇やるんなら澪主役やって」

は?
いや、ちょっと待て。確かに世界中の人の前で歌うことさえ厭わない気分でいたわけだけど。
そう現実的なことでしかも主役なんて――

「嘘」

しかし私の混乱をよそに、律は飛びっきりの笑顔でそう言ってくれた。
真剣に考えた私の数秒間を返せ。律の頭をごちんと殴ると律は「いってー」と
顔を顰めつつも少しだけ嬉しそうな顔をしていた。

「で?ほんとは何?いらないの?」

私はそのまま暫く黙り込んだ律に痺れを切らして訊ねた。
律は私の声に少し俯かせていた顔を上げると、私の顔を見詰めたままやっぱり黙り込んだ。

「律?」
「あのさ、……、欲しいとか、そんなんじゃないんだけど」
「うん」
「約束、して欲しいんだ」
「約束?」
「澪、高校卒業しても、大学行ってもまた卒業しても、ずっと、ずっと、私の
傍にいてくれる?」

真剣な瞳。いつもなら逸らしているようなその瞳を、今日は真直ぐに見詰めたまま、
私は頷いた。

そんなの約束することじゃないよ、バカ律。

「……、当たり前だろ。私は何が在ってもずっと律の傍にいる」
「――、ありがと」

律の声はほんの少し泣き声だった。だから私はそんな律を包み込むように抱き締めてみた。
昔、律が私にしてくれたように。今はほんの少し律のほうが年上だけど。

「――ハッピーバースデー、律。ずっと大好きだよ」




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