けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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投稿日:2010/07/29(木) 02:04:53

私は律に依存しているのかもしれない。

律は優しいし、気遣いの人だから私はついつい甘えてしまう。
一緒にいると心地よくてたまらない。
律の前だとわがままになるんだ、私。

けれどそんな律は、いつも他人のことばかり気にかけている。
そのくせ自分のことは溜め込んで、誰にも気付かれないうちにじわじわと飲み込んでしまう。
たまにそれがうまくいかなくて爆発しちゃう時もあるけど、そんなになるまで本当の意味で頼ってくれない、甘えてくれないなんてやっぱり悲しい。

そうだ。
それならせめて、律を思いっきり甘えさせてあげよう。


「律」

そんなことを考えてから数日が経った。
今日は金曜日。
今は二人っきりの帰り道。

「んー?」

「今日さ、泊まりに来ないか」

「どうしたんだ急に?」

「来ないの?」

「ん。行く」

特別珍しいことでもない。律は小さく頷いて続けた。

「じゃあ私ちょっと荷物とってくるよ」

律の背中を見送ってから私は家に向かう。
軽く部屋を片付けて腰を下ろす。
律、早く来ないかな。

…今日は律をいっぱい甘えさせてやるんだ。


待っている間私はいろんなことを考えていた。

今日は二人で何をしようか。
何を観ようか。
何を聴こうか。
何を話そうか。

律を思いっきり甘えさせてやるっていう本来の目的も、いつの間にか忘れかけていた。
それにしても遅いなぁ。
また何かいたずらでも仕込んでるのかな。

「ふふっ…」

思わず口が緩んでしまう。
そんな時だった。


携帯のディスプレイが光る。律だ。

「もしもし、りつー?」

『あ、みおー…あのさぁ…』

「んん?」

『ごめん、今日行けなくなった…』

「え…なんで…?」

『急な用事でさ、いとこが帰って来ることになったから家族でばあちゃん家に行くことになったんだ。それも今から』

「あ、あぁ…」

『…ごめんな?』

「い、いや…律とは毎日顔合わせてる訳だしな!そんなに気にしないって」

『ほんとごめん…』

「だ、だから気にしないって!楽しんでこいよ、じゃあな!」

『あ、み』

ふぅ…ついつい勢いで切ってしまった。
楽しみにしてたんだけどな…。
浮かれていた分気が沈んでしまう。

「…ばかりつ」

悪いのは律じゃない。
だけど分かっていても口にでてしまう。
だめだな…私。
もう今日は何もやる気がでない。
さっさと寝てしまおう。


翌日、寝覚めは正直あまり良くなかった。
気分は沈んだままだ。
時間はもう11時過ぎ。
のろりと起き上がってご飯を食べに行く。

しかし家に人の気配がない。
おかしいな…。
そう思ってリビングを見回すと置き手紙を発見する。
…どうやら両親とも明日の昼過ぎまで帰らないらしい。
本当はその話は昨日するつもり、だったそうだ。
私は一緒に置いてあったご飯代をもってコンビニへ。
未だ何もやる気が起きないからカップ麺だけすすって、昼はベッドの上でぼーっと過ごしていた。

律は今頃楽しんでるんだろうな…。
律に会いたいな…。

なかなか働かない頭に浮かんでくるのは律のことばかりだった。


そして夜。
私はサンドウィッチだけ口にして相変わらず無気力に過ごしていた。

誰もいない家はやはり寂しい。

…寂しい。

それでも時間だけは過ぎていく。
睡眠時間だけは無駄にとっていたから眠くはなかったのだが、あと1時間もすれば日が変わる。
私は電気を消して横になった。

「…おやすみなさい」

誰に言う訳でもなく、小さく呟いた。


…と、そうは言ったものの、やはりしばらくは眠れそうにない。
仕方がないので音楽を聴くことにした。
私達のライブがはいったテープを再生する。
…ほんと、ライブだといい感じなんだよなぁ。
ここ、今度フィル入れてみようかな。
律、また走ってるよ。

あれこれ考えていると、思わず顔が綻んでいた。
久しぶりに笑ったような気がする。
早く月曜にならないかな。
早くみんなに会いたい。
早く律に会いたい。

やがてA面の再生が終わり、B面に切り替わる。
その時、不意に携帯が鳴り出した。


…律だ!


「もしもし」

『あ、澪。ごめん、寝てたか…?』

「いや、寝付けなかった所だよ。それでどうしたの。もう12時だよ」

『いや、実はさ、今ばあちゃん家から帰って来たんだ』

「随分早かったな…。近い距離でもないだろうに」

『うん、もともとあっちも急に来たからそんなに長居するつもりはなかったみたい。それで、だ…』

「うん」

明日の約束かな。私は少し胸を弾ませた。
『今から泊まりに行ってもいいかな…?』
「え!?」

思わぬ申し出につい声を上げてしまった。

『あ、やっぱ今からだと迷惑か。ごめんごめん』

律はさっきの嘆声を拒否と捉えてしまったようだ。
迷惑な訳があるか。

「そんなことないよ!りつ、早く来てよ!」

嬉しくなり、気持ちが高揚していくのが自分でも分かる。

『わ、わかったわかった。じゃあとりあえず玄関あけてくれないか?』

「え?あ、うん。分かった!」

私は小走りで家の電気を点けながら玄関の鍵を開ける。
すると―――

「ごめんなみおー?ほんとこんな時間に。電気点いてなかったからもう寝たと思ってたよ」


「いやー、私ってば愛されてる?」

あれからしばらく、私たちは部屋に落ち着いていた。

「みおちゅわんってば『りつ、りつぅ~!』なんて言いながら熱ぅ~い抱擁を…」

「あ、あれは!違っ…わないけど…!」カアァ

「そうかぁ、そんなに私が恋しかったかー」ニヤニヤ

「だ、だから…そう!家に誰もいなくて少し心細くなってただけなんだあれは!」

「顔真っ赤にして反論しても説得力ないわよん♪」

「~!ばかりつ!!」ゴチッ

「いでっ」


…悔しいが律の言ったことはほぼ事実だ。
あのあと、つまり律が玄関に現れた後の話になる。


『ごめんなみおー?ほんとこんな時間に。電気点いてなかったからもう寝たと思ってたよ』

『り、りつぅ…』フルフルッ

『非常識かなとも思ったんだけどさ、約束ほっぽらかしたままってのも気持ち悪いし…。埋め合わせ?って訳でもないんだけど』

『うぅ…』ジワッ

『あ、ほらそれにさ!昨日電話した時みお最後ちょっと変だったから…もしかして私求められてる!?な~んて…わぷっ!』

『りつ、りつぅ!!』ガシッ

『み、みおー?ど、どうした?』カアァ

『りつぅ…!』ぎゅうぅぅ

『ちょ、ちょっと苦しい…か…も…』



…そんな感じで今に至る。


「ほ、ほら!もう寝るぞ。遅いんだから」

「いたた…機嫌なおせよ、みーおー」

「ふんっ…」

「わーるかったよ、ごめんごめん」

「………」

…やっぱり律は優しい。理不尽に怒って意地張ってるのは私の方だっていうのに。

「…んーと、とりあえず布団借りるぞー?」

反応のない私を困ったような笑顔で見ながら、律が来客用の布団に手をかける

そんな律の顔を見た私は…

「…だ、だめ!!」

つい声を上げていた。

「え、布団すらもだめって…なんだぁ?そんなに怒ってるのかー?」

「い、いや、違う!そうじゃなくて…」

少しの間。
心臓の音がいつもより速く、はっきりときこえてきた。

「一緒のベッドじゃなきゃだめだ!!」

「………へ?」

沈黙。律が目を丸くしてこちらを見ている。
普段の私なら絶対に言わないであろう言葉。
それを叫んだんだ。無理もない。
だんだんといたたまれない気持ちになってくる。
頼むから何か言ってくれ。そうじゃないと私…

「………ぅぁ」ジワッ

こんなこと言うんじゃなかったかな…。
恥ずかしさや後悔やらで涙腺が緩んでいく。

「み、みお!?わかったから、一緒に寝よう、な?」

「……グスン」コクッ

なんか…情けないな私。
当初の目的とは裏腹に、律に迷惑かけちゃってる。


「ちょっと狭いかも」

「…ごめん」

「いいよ、気にしないから。にしてもあの澪が『一緒のベッドじゃなきゃだめだ!』なんてなぁ」ニヤニヤ

「…ぅ」ジワッ

「あ、あぁほら悪かったから。な?」ナデナデ

「…うん」ギュッ

その後、私と律は一緒のベッドで横になっている。
完全に私のわがままを通す形だ。
そして今甘えているのも私。
律じゃない。

「でもみおー、本当に今日はどうしたんだー?」ナデナデ

律があやすように言う。
律の傍は…律は、本当に心地いいな…。

「…本当はさ」

「ん?」ナデナデ

律を甘えさせてやりたいなって。

私はそこで言葉に紡ぐのをやめる。

「うん?本当は…?」

私はまっすぐ律を見つめる。

そして会話に気を取られて、律が私をなでる手を止めた一瞬。

その一瞬に。

「わふっ」

律を抱き寄せた。


「み、みおー?」

律が少し調子の外れた声を出す。

「ふふっ…」

私はと言うと、そんな律の頭を撫で続けている。

「なんか…その、は、恥ずかしいよ…」

律がか細い声で呟く。
暗がりなのが残念だ。
今の律、多分すごくかわいい顔しているんだろうな。

「誰もいないよ?」

私は少しいじわるを言ってやる。

「~!」

律は言葉にならない声を出す。

そして―

「…じゃあ、その、今、だけ…」

律が私に抱き着いた。


翌朝、気がつくと私は一人だった。

体を起こし、ぼんやりとした頭で部屋を見渡すも律の姿はどこにもない。

昨日はあのあと、律を抱きしめ、律に抱きしめられるかたちでそのまま寝てしまった。

それがあまりにも充たされた気持ちだったから、今のぽっかりとした気持ちとの落差に私は

「…ぅぐ、グズッ、ヒグッ、ぅぇぇぁあ」

思わず、泣いてしまった…。

「みーおー、ご飯できたぞー…澪?」

ドアが開いて、エプロン姿の律が私を呼ぶ。

よかった。律、ちゃんと居てくれた。

そんな安堵が押し寄せるも、涙やら嗚咽やらは止まってくれない。

「みお」

泣いている私をみて一瞬戸惑ったかのように見えた律は、とても優しい声で私を呼んだ。

私は涙を隠そうと律に背を向ける。


ふわり、と私を包む柔らかい感触。

律はそのまま、何も言わない。

「私、は…」

なぜだろう。
嗚咽を抑えて、自然と私は話し始めていた。

「律、と、一緒、がいい」

「ずっと、一緒、がいいっ…」

たったそれだけ話して、私はまた泣き出してしまった。
律はやはり何も言わずに、私を包み続けた。


しばらくした後、ようやく私は泣き止む。
律は私から体をそっと離して言った。

「ご飯、食べよっか」

振り返った私は応える。

「…うん」

そして私に背を向けて部屋から出ていく瞬間、律は小さな声で呟いたんだ。

「私は澪とずっと一緒だから」


私は律に依存しているのかもしれない。

そんなことを考えていた。
けどそれは間違っていた。

単純な話だったんだ。

私は律に、恋している。


おわり



  • 最後の二行が好き -- アクティブ (2012-02-10 12:55:26)
  • うわぁ…めっちゃいい感じだぁ… -- 名無しさん (2012-12-15 16:59:55)
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