けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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だれでも歓迎! 編集
投稿日:2010/07/27(火) 08:42:41

外のあまりの暑さに負け、エアコンをつけている私の部屋。
そこに、我が物顔で寛ぐヤツが一人。
ソイツは突然押しかけてきて、何を言うでもなくうちわ片手に床に寝転んだ。
まるで、自分の部屋かのように。

「み~お~」
「なに」

こうなることなど予想がついたはずなのに、招き入れてしまった私も私だ。
そう思って、次から次へと浮かんでくる小言は飲み込んだ。

「アイス食べたい」

怒るな、私。そうだよ、コイツは元からこういうヤツだったじゃあないか。何を今さら。

「冷凍庫に入ってるよ」

そして、コイツのためにしっかりとアイスを常備してあるのだ、我が家は。
どれだけ染まってるんだ、まったく。

「もってきて」
「自分で行け」

さすがにそこまでしてやる筋合いはない。……仮にも客人と言えなくもないけれど。
強引に上がりこんできて勝手に寛いでいるコイツに、客人扱いはしてやれない。
だいたい、何度も来てるんだから何が何処にあるかくらい、知ってるだろ。

「あーつーいー」
「じゃあ、なし」
「とってきまっす!」

アイスを諦めるより、自分で取りに行く方を選んだあたりがコイツらしい。
先程までのダラケぶりから一転して、勢い良く部屋から出て行った。
別にそんなに急がなくても、アイスはなくなったりしないぞ。
……何せうちの冷凍庫は、アイツの好きなアイスが所狭しと積んであるんだから。


しばらくして、階段をリズミカルに登ってくる音。
それだけで分かる、アイツが異様なまでに上機嫌であることが。

「うはー、やっぱこれだよな!」

そう言いながら、水色の棒アイスをガリガリと食べている。
そのアイスは袋に『ソーダ』と書かれただけのシンプルなアイス。
私もいくつか食べたけど、とても美味しい。
どこかの誰かさんが「シンプル イズ ベストってやつだな!」とか言ってたっけ。

「冷凍庫開けたらさ、すっげーいっぱいあって思わず『ここは天国ですか!』とか言っちった」

うちの台所で何やってんだ、お前は。……ちょっと見てみたかったかもしれない。

「ん」

自分のアイスを齧りつつ、当然のように私の分のアイスをさし出してくる。
わ、私は食べるだなんて一言も言ってないぞ。……食べるけどさ。

「ありがと」
「えっへん。褒めて!」

あぁ、どうしてコイツは普通に言ったお礼すら撤回したくなるような事を言うかな。
取り敢えず聞かなかったことにして、アイスを齧る。
ふとアイツの方を見れば、既にアイスを食べ終えてこちらを見ている。
相変わらず食べるのが速い。……って、なんだよ。

「あげないぞ」
「ちぇー」

コレは私の分で、お前はもう食べたでしょ。あげません。
いやいや、そんな目の前に餌をぶら下げられた犬のような目でこっちをみるんじゃあない。
そんな目したってあげないんだからな、だめだぞ。絶対。

*

…………仕方ないな。

「はい」

根負けした私は、幾らか齧ったアイスをそのままコイツに差し出した。

「やったー!いっただっきまーす」

自分で手に取らずに、何故か私がアイスを持ったまま、コイツが食べるという形になった。
……いや、自分で持ってくれ、と目で訴える。

「いーじゃん、気にすんな!」

そういう問題じゃあないから。……っていうか、ちょっとまて。
別に今私のをあげなくとも、まだいっぱい冷凍庫には入っているわけで。
また新しいのをとってくればいいだけじゃないか。
そう思ったものの気づけば既に半分以上食べられていて、そんな言葉はもう出てこなかった。

「うまー」

相変わらずガリガリと食べている。
なんだろう、ペットに餌でも上げている気分だ。
かわいい。……いやいや騙されるな私。
コイツが自分で持たないから私が食べさせてるみたいになっちゃってるだけで。
そういう風になっちゃったから可愛く見えるんだ、騙されるな。うん。
……でも、かわいい。

そんな事を色々と考えていると、いつの間にかアイスはなくなっていた。
そして。

「ちょ、ちょっと!なにしてんだよ」
「何って、舐めてる」

あろうことか、私の手を舐め始めた。

「っ!……く、くすぐったい」
「アイスあまー」

どうやらアイスが溶けちゃったから、舐めてくれているらしい。
必要ないから、頼むから舐めるのをやめてくれ。
手を退けようにもしっかりと両手で掴まれていてびくともしない。
どこから来るんだこんな馬鹿力。

「ほ、ほんと……やめっ……」
「はい、終わり。……んー?澪ちゅわんどったのー?お顔が真っ赤ですわよん」

……からかいの目で見つめてくるこの馬鹿に、仕返しをしてやるべく私は行動にでる。

「おまえのせいだ、ばかりつ」

そういって、ゆっくりと押し倒してやる。
流石にこうしたらいくらコイツでも慌てるに違いない。
そう思ったのに。

「みお」

私の下にいるコイツはなんとも満足気な表情をしていた。
まるで、こういう風になることを望んでいたようだ。
そこまで考えて、私はコイツに「負けた」事実を知る。
あぁ、やられた。

「律、回りくどすぎ」
「うっせーやい」

そして私は、コイツの作り出した波に流されることを選んだ。



おわる。



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