けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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雨の強い日だった。
雨は私の中にある不安を掻き立てる。
降り止む事のない雨の音を聞いていたらこの不安から抜け出せない気がする。
こんな時はいつもあいつの声を聞いていた。
あいつに会いに行っていた。
でも、今はもうできない。
お前は今何をしてるんだ?
どこにいるんだ?
笑ってるのか?
いつも隣にいたあいつはある日私の前から姿を消した。
そうか、あの日もこんな風に雨の強い日だったな。
確か、卒業式の次の日だった。

「卒業式はあんなに晴れてたのに今日はすごい雨だな。雨・・・か、何か歌詞書けそうだ」
机に向かって作詞ノートを開こうとした時、携帯が鳴った。
「公衆電話?・・・もしもし?」
「澪、今話せる?」
「律か?公衆電話ってどうしたんだ?」
「うん、ちょっと・・・」
律の様子がおかしい。
いつもの明るい声じゃない。
「今どこからかけてるんだ?」
「澪の家の近くの公衆電話」
私はベランダに出た。
ここからは丁度公衆電話が見える。
受話器を持ちながらこちらを見ている律がいた。
「おい!びしょ濡れじゃないか。風邪引くぞ。早く上がってこい」
「いや、このままでいい」
「何言ってるんだ?どうした?」
「・・・澪、ごめん」
消え入りそうな声だった。
雨の音で掻き消されてもおかしくないぐらい小さな声だったのに私にははっきりと聞こえた。
「ごめんな」
それだけ言うと律は走り去ってしまった。
私は慌てて家から出て追いかけたが、遅かった。


とりあえず律の家まで行ってみる事にした。
傘を取り出し、律の家まで小走りで行く。
インターホンを押すと律のお母さんが出てきた。
「律いますか?」
「あら、澪ちゃん!律から聞いてないの?」
「何をですか?」
「大学から一人暮らしするって言ってて、もう昨日卒業式が終わった後引っ越しちゃったわよ。
澪ちゃんに言わないで行っちゃうなんて律のやつ」
「一人暮らし・・・?」
「あらそれも聞いてなかったの?アパートの場所教えましょうか?」
「あっいえ、大丈夫です」
「そう。今度律に言っとくわね」
「はい。失礼します」

一人暮らしってなんだよ。
そんな事聞いてないぞ。
どうしたんだよ・・・律。
ごめんってなんなんだよ。
私達親友じゃなかったのかよ。
そうだ、電話して一言文句を言ってやろう。
きっと驚いただろーとか言っていつもみたいに悪戯に笑うんだろうな。
ポケットから携帯を取り出し、電話をしてみた。
「この電話番号は現在使われておりません」
携帯から聞こえてきたのはコール音でも、律の声でもなく冷たい女性の声だった。
携帯が手から滑り落ちる。
足の力が抜けていく。
何で?どうして?
律・・・ねぇ、嘘だって言ってよ。笑って冗談だよって言ってよ。
私は道端にも関わらず、泣き崩れた。
その後はどうやって家まで帰ったか覚えていない。
律のお母さんに聞けば律の住んでるとこがわかる。でも、それは律が望んでいない。
律は私から離れる事を望んだんだ。


あれからもう一年以上が経ったが、未だに雨の日は辛くなる。
毎日律の事を考える。
最後の「ごめん」の意味を探しているが、見つからない。
「澪ちゃん?顔色よくないけど、大丈夫?」
「えっ?あっ大丈夫、大丈夫」
大学に入ってできた友達が心配そうに見ている。
今は学食で昼食を食べてたんだった。
こんな時まで律の事が頭から離れない。
「そうだ!今度○○大学で学際があるんだけど、一緒に行かない?」
「えっ?」
○○大学は律が通っているはずの大学だ。
行きたい。行って律の顔を見たい。
でも、律に拒絶されたらと思うと返事ができなかった。
「じゃあ、今度の日曜日だから空けといてね」
私が答えないのをどうとったのかそう言い残し、講義があるからと去って行った。

予定が入ったとでも言って断ろう。
そう思っていたのに、私は今律の通う大学の前まできていた。
「澪ちゃぁん!こっち~」
私は戸惑いつつも友達の元へ向かった。
「私の友達が軽音楽のサークルに入ってるんだけど、今日ライブするんだって!もう始まる時間だからみに行こう」
私の手を掴んで楽しそうに引っ張って行く。
もしかしたら律もそのサークルに入っているかもしれない。
一目律の顔を見たかった。


「すごい人だねぇ。あっあそこだ!もう始まるみたい。」
人はいっぱいで後ろの方から見る事になった。
ステージへ目をやるとギターが二人にキーボード、ベース、ドラムムがいた。
まるで放課後ティータイムみたいで高校時代を思い出す。
意を決してドラムをみやる。目を凝らすとそこにはずっと会いたくて、会いたくて堪らなかった人の顔があった。
堪えきれない感情が胸を締め付ける。
演奏が始まった。
高校の時律はそれはそれは楽しそうににドラムを叩いていた。
なのにどうしてだ?
何で今お前はそんな顔で叩いてるんだ?
他人にはわからないように笑顔を貼り付けてはいるが、十年以上ずっと一緒にいた私はすぐに気付いた。
そんなの律らしくないじゃないか。

「わぁすごかったね」
気がつけば演奏は終わっていた。
「澪ちゃんどうしたの?泣いてるの?」
泣いてる?私が?
本当だ。気付かなかった。
お茶を買って一息つき、落ち着く。
オロオロしていた友達には適当に言い訳をしておいた。
律が幸せそうならそれでもいいと思ったが、あんな風にドラムを叩く律が幸せになんて見えない。
そんな律を見ていたくない。
放っておけない。
でも、私が何かしても逆効果なんじゃないか・・・
逡巡を繰り返す。
気がつけは辺りは暗くなっていて、もう学際も終わりみたいだ。
「よし、今日は飲みに行こう」
私を気遣ってかそう提案してきた。
そんな気分ではないが、心配かけたし断りづらい。
「うぅ~ん。よし、行こうか」
私達は大学の近くの居酒屋へ入った。
居酒屋は賑わっていた。店員に案内され、席まで向かう途中私は時間が止まったように立ち尽くした。


「・・・り、つ・・・」
そこには律がいた。
目が合った。
どうしていいかわからなくて私は逃げ出そうとした。
「澪!」
あの声が、いつも護ってくれる優しい声が私を呼んだ。頬を涙が伝う。
こんな顔見せたくなくて走って店の外まで飛び出した。
「澪、待てよ」
律に腕を掴まれ呼び止められた。
「なんだよ?」
「・・・・・」
律は何も言わない。
その態度を見て今まで溜め込んでいたものが溢れ出た。
「何なんだよ!?勝手に私の前からいなくなって、今度は呼び止めておいて何も言わない。何だよそれ。人がどれだけ心配したと思ってるんだよ。なんとか言えよ!」
「・・・・ごめん」
「ごめん?それじゃあの時と一緒じゃないか!!」
私は掴まれていた腕を振り払おうとしたが、律の手はそれをさせようとしない。
律は私との接触を極力避けているのに手は離してくれない。
お前は何を迷ってるんだ?何を考えているんだ?
突然、律が私の手を引っ張り歩き出した。
「お、おい!どこ行くんだよ?」
何も言わず歩いて行く。

十分程歩いて辿り着いたところはアパートだった。
律は鍵を取り出し扉を開けた。
「そこ座ってて」
何だか逆らえない空気が漂っていて、律の言う通り座る。
しばらくしてから律がお茶を持ってきた。
「ここ私の部屋だから寛いでいいよ」
そんな事を言われてもこんな空気のままじゃ無理だ。
しばらくの沈黙。耐えかねた私はもう一度問う。


「律・・・・どうして、いなくなった?」
今度は冷静に律の言葉を待つ。
「私・・・・」
「うん」
言葉を促すが続けない。
下唇を噛み締め、眉間に皺を寄せている。
そんな律がいたたまれなくなり、思わず抱き締めた。
「ずっと、ずっと不安だったんだぞ。律がいなくなって・・・毎日律の事考えてた。元気にやっているのか?幸せにしてるのか?って・・・
今日友達が学際に誘ってくれて、律の顔を一目見たくて、幸せそうならそれで良かった。
なのに・・・なのに何であんな顔でドラム叩いてるんだよ!何があったんだよ?」
「うっ、ぐす。見て、た・・・のか?」
「・・・・うん」
「ごめんってなんなんだ?」
律が少しでも落ち着くように背中をさすってやる。
漸く落ち着いたのか口を開く。
「高校卒業して、お互い大学が違うくて・・・澪が遠くに行っちゃう気がして、それが怖くて・・・」
「へっ?」
「澪が遠くに行くぐらいなら自分からいなくなればって」
「おい!それはちょっと変じゃないか?」
「自分でも、よくわからなくなって・・・」
「だからいなくなったのか?」
「うん。どうしたらいいかわからなくて、でも、今日澪の顔見たら考えるより、先に動いてて」
こんなどうしよもない事を考える律を愛おしいく思い、腕にさらに力を込めた。
「私は律とずっと一緒にいたいと思ってるよ。と言うか、律が一緒じゃなきゃダメなんだ。だから、不安に思う事なんて何もないよ」
密着していた体を離し、律の顔を見る。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を手で拭ってやる。
律が目を開けこちらを見る。
暫く見つめ合った。

「ぷふっ律変な顔」
「なっなんだとー」
「はははっ」
またこんな風に二人で笑いあえる日がくるなんて思わなかった。
律といると自然に笑顔になれる。楽しくなれる。
私は律じゃないとだめなんだ。
ひとしきり笑った後、律が私の手を取り言葉を発した。
「澪、ごめんな・・・・ありがとう」
いつもの笑顔だ。太陽みたいな明るい笑顔。


私と律の顔の距離が縮まる。
目を閉じ唇を重ねた。
「・・・何だろ今の?」
「私もわかんない」
「何だよそれ」
「澪だってじゃぁん」
じゃれ合いながらもう一度口付ける。
何度も、何度も。
空白の時間を埋めるように求め合った。
どうしてこんな風になったのかはわからないが、これが私達に一番しっくりくる感じがした。
きっと律も同じだろう。

「澪、今日は・・・うぅん。ずっと一緒に居て」
「あたりまえだろ」
二人の鼓動が一つに重なる。
まだまだ足りないんだ。
もう絶対離してやらないんだから。


  • 素晴らしいですはい -- 名無しさん (2012-04-21 19:12:15)
  • 離すんじゃないぞ -- 名無しさん (2012-08-20 04:40:56)
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