けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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投稿日:2010/05/30(日) 05:25:39

携帯の電源を入れると、新着メールが一件。
あ、律先輩からだ。
受信時刻は……午前3時?
こんな遅い時間にいったいどうしたんだろう、と考えながらメールを開く。
『話があるので学校来たら部室に集合』
軽音部の皆への一斉送信。しかしそこに澪先輩のアドレスだけがない。
何か澪先輩には秘密の話なのかな?律先輩のことだからどうせ澪先輩へのイタズラの算段かも。
深刻な問題ではないだろうと考えてしまうあたり、私も軽音部に毒されている。
着替えながらそんなことを考えていると、あわただしく登校前の時間は過ぎていった。
学校に着いたら真っ直ぐに部室へと向かう。
部室にはすでにムギ先輩と呼び出した張本人がいて、程なくして唯先輩がやってきた。
「おし、みんな揃ったな」
「まだ澪ちゃんが来てないよ?」
「澪は今日休み。というか、澪のことで話があるんだ」
そう言って律先輩は話を切り出した。
「実は澪、昨日から入院してるんだよ」
予想のしていなかった展開に混乱する。
と同時に私は朝の自分の軽率な考えを思い出して後悔した。
「に、入院ってどういうことですか!澪先輩なにか病気が」
「まあ梓落ち着けって。」
あわてる私の言葉を遮るように律先輩が落ち着いた声で言う。
いきなり入院だなんて言われて落ち着いていられるわけがないじゃないですか。
「澪ちゃん、大丈夫なの?」
「心配だよぉ…」
ムギ先輩と唯先輩が口々に言う。唯先輩なんて今にも泣き出しそうだ。
「いやー、入院したけどそこまで酷くはないんだ。風邪拗らせて肺炎起こしかけちゃったらしくて」
律先輩が苦笑いしながら「大事をとっての入院だからあんま心配すんなって」と、みんなを宥めるように言った。
と言われても、肺炎だなんて心配せずにはいられない。
律先輩はわりと平然とした様子で、ベースがいない間の練習方針について話していた。
こういう時ばかりはやっぱり部長らしいんだ、なんて思ってしまうほどに落ち着いている。
律先輩は「1週間程度で退院できるらしいから」と言って、その場は解散になった。
…律先輩は平気なのかな。いつだって澪先輩と一緒にいるのに。
それとも1週間ぐらいじゃなんともないくらいの強い信頼があるんだろうか。
気付けば私の心配の比重は、いつのまにか澪先輩から律先輩のことへと移っていた。
今まで二人がこんなにも離れたことなんてなかったはず。
律先輩が風邪をひいたときに一度ギクシャクしたことはあったけど…。
それを見ている分、余計に律先輩のことが気になった。
結局、今日の部活は澪先輩がいないこともあり、お茶を飲むだけになってしまった。
部活が終わり、家に着いてからもなんだか落ち着かない。
夜、澪先輩の体調のことや律先輩への余計な心配をしながら眠りについた。
澪先輩が入院して今日で3日目。
部活に行くと先輩達はすでに3人とも集まっていて、お茶をしながらなにやら話していた。
「皆さん早いですね。なにを話し込んでるんですか?」
「あ、梓ちゃん。今みんなで澪ちゃんのお見舞いに行かないかって話してたの」
「でも、大丈夫なんですか?みんなで行ったらご迷惑になるんじゃ…」
心配で仕方ないのだけれど、具合が悪い中行っても申し訳ない。
「その点は問題ない!澪ママから連絡もらってるしな」
どうやら発案者は律先輩のようだ。
「じゃ、明後日の放課後は澪のお見舞いってことでいいな」
はい、と返事をしてギターケースからムスタングを取り出す。
「皆さん!澪先輩がいないからって怠けちゃダメです!」
このままじゃまたティータイムで終わりかねないと思い、声を上げた。
すると予想外に唯先輩がフンスと鼻息をならしながら立ち上がる。
「そうだよね!澪ちゃんの為にもしっかりしないと!」
そう言って自ら練習を始めたので、思わず感涙…とまではいかないもののなんだか感動してしまった。
律先輩も「んじゃやるかー」なんてけだる気に言いながらドラムセットへと向かう。
律先輩のカウントで演奏が始まった。
ベース音がない違和感。
どうしても音に締まりがなくなり、合わせることによっていっそう淋しさが増す。
心なしか、ドラムにも力がないような気がした。

*

翌々日、みんなで澪先輩が入院している中央病院へと向かった。
律先輩が先頭を切って病室まで歩く。
やっぱり律先輩はいつもと変わらない様子で、
「澪のやつ入院なんて初めてなんじゃないか?怖い話して眠れなくしてやろーぜ」
なんて軽口をたたいている。
やっぱり私の考えすぎだったのかな。おせっかいな自分の思考に心の中で苦笑する。

ドアの横に『秋山澪』と書かれたネームプレートがはまっていて、部屋は個室だとわかった。
律先輩がコンコンと病室の扉を打つと、返事を待たずそのまま横に引いた。

ベッドに横になった澪先輩が目に入る。
腕には点滴が繋がれていて、病人だということより強く感じさせた。
澪先輩は眠ってはいなかったようで、私たちに気付くと儚気に微笑んだ。
まるで小説のワンシーンかと思ってしまうぐらい、この状況が似合う澪先輩。
不謹慎ながらそんなことを考えてしまった。

「律…」
「お見舞いにきたぞー。まったく心配させんなよな」
「ありがとう…。みんなも来てくれてありがとな」
そう言って照れくさそうに笑う澪先輩は可愛いかった。
案の定、唯先輩は安心から泣きそうになっているし、ムギ先輩はお見舞品を渡しながら澪先輩と話している。
私はというと、なんだかホッとしていた。
律先輩の、澪先輩を見る瞳を見て、なんだかやけに安心したのだ。
「澪先輩、ゆっくり休んでください」
「澪ちゃん、お大事に」
「ギー太もエリザベスに会いたいって寂しがってるよ~」
少しの間談笑した後、「長居は悪いわ」というムギ先輩の言葉でみんな病室を後にした。

それからの部活は澪先輩のいない演奏にも慣れてきたし、みんな落ち着いていた。
それに、ドラムが走ることも少なくなった。
そして、あのメールが来てからちょうど1週間。
「今日退院だってさ。学校は明日から来るって」
律先輩は紅茶を飲みながらさらりと言った。
「ほんとう!?澪ちゃん元気になったんだね!」
律先輩は喜ぶ唯先輩を見て笑っている。
「よかったですね、律先輩」
そんな様子を見ていたら、思わず口に出してしまった。
「なっ、なんで私に言うんだよ!澪に言ってやれよ」
律先輩はあわてたように言い、手に持っていた紅茶をごくごく飲み干した。
頬が少し赤くなってますよ、律先輩。


「退院おめでとう、澪ちゃん」
「おめでと~。澪ちゃんの快気祝いしないとね!」
「…快気祝いの使い方間違ってるぞ、唯」
部室にいつものの空気が戻る。
「みんな心配かけてごめんな。これからはちゃんと部活にも出れるから」
「そんな。無理はしないでくださいね」
そんな言葉を交わしながら、ゆったりとしたティータイムを受け入れる。
澪先輩も退院したばかりだし、流石に今日は練習なくてもいいかな、なんて考えていると
なんと澪先輩のほうから練習しよう!とお声がかかった。
なんでも1週間も楽器に触れられなかったから、今は弾きたくて仕方ないらしい。
澪が言うなら、と律先輩もドラムへと向かう。
唯先輩はというと澪先輩がいなかった間の練習の成果を見せたいようで、
「私はいつでもバッチリだよ!」と、ギー太を構えている。
ムギ先輩ははニコニコしながらそんなみんなを眺める。
私もムスタングを肩にかけ律先輩に視線を送った。
律先輩のスティックがカウントを刻む―――

*

1週間ぶりの5人揃っての演奏は、言い表わせない程に充実感のあるものだった。
澪先輩がすごく楽しそうに演奏しているのが伝わってきて、それで私も楽しくなって。
みんなもそうだったのかな、なんて。
ただ、一つ気になったのが…。
「律!おまえ後半かなり走ってたぞ!」
「ごめんって。なんかテンション上がっちゃって」
そう、律先輩のリズムキープがかなり甘くなっていたこと。
「先輩、昨日はしっかりリズム取れてたじゃないですかぁ!」
まったく、楽しくなるとすぐ走っちゃうんだから。
それでも許せる気になったのは、久しぶりに二人のいつものやり取りを見れたからかも。

練習が終わり、そろそろ解散という時刻。
「あれ、澪ちゃん帰らないの?」
「うん、もう少し学校で弾いてから帰ろうかなって」
みんなが帰り支度をする中、澪先輩はずっとベースに触れていた。
「私も澪と帰るから、悪いけど先帰ってていいよ」
「そっかぁ。りっちゃんが一緒なら安心だね」
「それじゃあ、お先に失礼します」
二人を残して、部室を後にする。
帰り道、三人で会話に花を咲かせていると不意にあることを思い出した。
「あ!部室にピックわすれた」
気に入って使っているピックを忘れてきてしまった。
「でも梓ちゃん色んなの持ってるでしょ?」
「今使ってるの、やわらかさがちょうどいいんです」
「じゃあ一緒に学校まで戻ろっか?」
「いえ、私一人で行ってきます。すみませんが先に帰っててください」
そう言って来た道を戻る。
校門に着いてから、ピックぐらい帰りがけに買えばよかったと気付いたが、
ここまで戻ってきてしまったらもう部室に行くしかない。
音楽室への階段を上がりながら、そういえばまだ律先輩と澪先輩が残っていることを思い出した。
なんとなく、気付かれないようガラス越しに中の様子を窺う。
一体私は何をしてるの…。
何故だか、二人の空気を邪魔してはいけないような気がしたのだ。
そして今、私は私が無遠慮にドアを開けなかったことに感謝している。
なぜなら、部室では律先輩が澪先輩に抱きついているから。
ここからじゃ顔は見えないけど律先輩は泣いてるようで、かすかに声が聞こえてきた。
「グズっ心配したんだぞ…」
「うん…。ごめん」
「入院なんて、心配で死ぬかと思った…!」
「ごめんな」
私は見てはいけないものを見てしまったというのに、その場を動けなかった。
あんなに取り乱した律先輩なんて見たことない。
普段は平気そうな顔をして、やっぱり律先輩が一番不安だったんだ。
澪先輩はしがみ付く律先輩の頭を撫でながら、律先輩の全てを受け入れていた。
「律、不安にさせてごめん。もう大丈夫だから」
「…知ってるよ」
「もう離れないから」
そう言って澪先輩も律先輩の背に腕を回してぎゅうと抱き締める。
「ばかみお」
そう言って顔をあげた律先輩が澪先輩の頭を引き寄せたところで、本能的にドアから離れ後ろを向いた。
さすがにこれ以上のぞき見するわけにもいかない。
気付かれないよう静かに階段を下りると、結局ピックは諦めて帰路についた。
家に着いてからも、悶々と考える。
新たに、誰にも言えない心配事が増えてしまった…。
と同時に妙に納得した自分を発見。
だけど…。
明日、どんな顔して二人に会えばいいんですか!

おわり



  • 良い! -- 名無しさん (2011-07-31 08:37:32)
  • よきかな -- 名無しさん (2012-01-11 16:07:07)
  • 一緒に戻ればよかったぁぁぁぁぁ! -- 琴吹紬 (2012-07-08 11:13:28)
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