けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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投稿日:2010/05/21(金) 03:31:23

―――ここ数日、律の“付き合い”が悪い。
部活終わりの買い食いもしなくなったし、唯や私が誘っても

「悪い、今ダイエット中なんだ」
「今日はちょっと、弟と用事があるんだよね」

とかのらりくらりとかわして帰ってしまう。
挙げ句に、私がおごると言っても断られてしまった。
三度の飯より空腹が嫌いなあの律には有り得ないことだ。
結局、律を除いた四人でクレープを食べたり、“りっちゃんがいないなら止めとこう”という唯の言葉で学校から直帰、なんて事が続いている。
一体どうしちゃったんだよ、律。みんな心配してるんだぞ?

ほんのちょっぴり退屈な日々を過ごし、やってきた土曜日。
そろそろ傷んできたベースの弦とピックの買い出しに楽器店へと出掛けた私は、その道中、見慣れた背中を見付けてしまった。

(律……!)

散々私達の誘いを断り続けていた律が、休日に一人でお出掛け。なんだかそれ、面白くないな。
自覚はある。ちょっぴりイジケた私は、予定を変更して律の後をつける事にした。
これでゲーセンにでも行ったら、イヤミの一つも言ってやろう。

ところが私の足取りは、まったく朝からの予定通りに進む。
律の背中は、楽器店の地下へと続く階段の下に消えた。

(なんだ?新しいドラムの教則本でも買うのか?)

確か、スティックは先月新しいのを買ったばかりだ。
律がここに来た理由が分からないまま、私も階段を降りる。

直ぐにその姿を見つけた。レジで店員と何やら話し込んでいる。
しばらくその様子を眺めていると、店員が店の奥へと立ち去る。
再び現れた店員が持って来たのは、巨大なハードケース。

(あれって……)

私の視線の先で、律はそのハードケースを数人の諭吉さんと引き換えに受け取る。
心配する店員に“大丈夫大丈夫”とジェスチャーしながら実に重たそうにケースを持ってこちらに、店の出口に通じる階段へと歩きだす律。

その前に影へと隠れた私には、まだ気付いていないはずだ。

*

「よいさっと。これ、家までは結構キツいかも……ういしょっとっ」

独り言と呻きを交互に挟みながら、律が私の目の前を通りかかる。
私は極力無表情を装って、声をかけた。

「手、貸そうか?」
「うお!?……え?澪?」
「それ以外の誰に見えるんだ」
「いや……、うん、間違いなく澪だな。……なんでここに澪が?」
「良いから、手伝うよ。それ」
「お、おう。ありがと」

ケースの持ち手を片方握る。なるほど、これは重いな。
二人で階段を上がり、外へ。
律の家へと向かう。つまり、ほとんど来た道を戻る。
その間、律はずっと開いた片手で鼻の頭をかいたり、髪をいじったりして目を合わせない。
どうやら本人は、この姿を見せたくなかったようで。
でもやっぱり、気になるモノは気になるわけで。

「ところで、律。この重りの正体はいったいなんだ?」
「………、フロアタム」
「フロアタム?また突然どうしてそんなもの……」
「新曲にさ、使ってみようと思って。結構奮発したんだぞ?」
「そりゃ安い物じゃ、……あ」

ようやく分かったよ、最近付き合い悪かった理由。
“謎は全て解けた”なんてね。

「これを買う為だったのか」
「ん?……あ、うん、その通り。小遣いじゃ足りなくてさ、短期のアルバイトしてた」

まったく、似合わないことしてるなコイツ。
凄く私の知ってる律らしいけど、全然似合わない。

「ったく、一言くらい言えよ。みんな心配してたんだぞ」
「ごめんごめん!“秘密兵器登場”とかって、こっそり驚かせてやろうと思ってたんだけど」
「まあ、唯達は驚くだろうな」
「澪には見つかっちゃったけどね」
「驚いたよ、私も。律が買い食いを我慢できる事に」
「ああもうひっでぇなあ。でも、澪しゃんがおごってくれるって言った時は正直ぐらつきましたでございます」
「まあ、また今度おごるよ。良くできたご褒美は、上げとかないとなっ」
「私は犬か!……でもありがたく頂きますぅ」

まったく、こんな下らない会話、久々だ。下らないけど、全然退屈じゃない。

*

律の家へと、重たいケースを運び込む。
“似合わない”気遣いで律が持ってきてくれた麦茶で喉を潤していると、一気で飲み干した律が私の顔を覗き込んでくる。

「なんだよ、何かついてるか?」
「いんや、澪ちゃんはなあんであんなとこにいたのかと思ってさ。ひょっとして私の浮気を疑って尾行とかぁ?」
「そんなわけがないだろ!それに浮気ってなんだよ浮気って」
「冗談だよ冗談」

もともと楽器店には用事があったんだよ!そりゃ、尾行していたのは事実だけど……。

「ピック……」
「なに?」
「ピックと弦、買いに行った」
「……買ってないよな?」
「そりゃ、ここにいるからな」
「………っ、ごめん」

そこで謝るのは“らしくない”よ。笑い飛ばしてくれなきゃ……、困るじゃないか。

「……律、明日って暇?」
「お、うん、暇」
「そうか。じゃあ明日は私に付き合ってもらおうかな?」
「おう、明日は澪のピックと弦を買いにな」
「クレープもな。律のおごりで」
「えぇ~!なんでだよ~?」
「そのフロアタム、学校まで運ぶのもどうせ私が手伝うんだから、それの前金だよ」
「え、……手伝ってくれんの?」
「私以外に誰がやるんだよ」
「………そうだよな!じゃあ明日は私のおごりだ、クレープでもアイスでもなんでもござれだぜ!」

律は賑やかに騒ぎながら、それからずっとニヤついている。
何か企みか?

「さっきから何をニヤケてるんだ」
「ん?……んへへ、ドラム買った時もさ、澪が運ぶの手伝ってくれたなって思ってさ。思い出してたら、よくわかんないけどさ、なんだか嬉しくなっちゃって」
「なんだそりゃ」
「良いんだよ、分かんなくても。とにかく凄い嬉しいんだ。澪!新曲の歌詞もよろしくな!」
「う、うんっ」

なんだよ、もう。私だって嬉しいんだぞ。私が大好きな、律のあの軽快なドラミング、その手伝いを私が出来る事。
凄く嬉しいのに、私は言葉に出来なかった。
ここで言ってしまうのは、私“らしく”ないってことかな。
そうか、それなら私“らしく”伝えよう、この気持ちを。
私が作る歌にのせて……。



  • いいなぁ。支えあう律澪ねぇ。 -- 名無しさん (2012-02-24 23:33:56)
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