けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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投稿日:2010/05/01(土) 23:12:39

女の私が見ても、本当にきれいだと思う。真っ直ぐ伸びた黒髪。それを時折かき上げるしぐさ。クールな横顔。特に作詞してる時の横顔はヤバイ。寝転がって雑誌を読むフリをしながらずーっと眺めちゃう。ファンクラブができるのもしかたないのかもな。それをからかいのネタにもしたけど、少しうらやましくもあったし、嫉妬したりもした。あと、少しだけ誇らしかった。

でも、今は違う。
怖いのだ。どうしようもなく怖いのだ。
これ以上澪のこと、他の人に知られたくない。見られたくない。近づいて欲しくない。私以外は。

小学校の頃から引っ込み思案で弱虫で、頼まれたら断れない彼女を私が側にいて守らなきゃって思ってた。澪が泣いたら飛んでいって、はげまして、手をつないで。そんな私を澪も信じてくれて、いつも側をくっついてきてくれた。
けど、あの日。高校二年の文化祭直前。澪がふっと私から離れた。その前にちょっとしたきっかけはあったんだけど、私は混乱した。澪が私から離れていくなんて、それまで考えたこともなかった。どう振舞えばいいかわからなくなった私はいつも以上に彼女にちょっかいを出して……拒絶されたと思って、体を壊してしまった。
冷静になって振り返るとあれはただのケンカかもしれない。でも、私の中でそれまで知らずに押し込んでしまっていたものが溢れてしまうきっかけだったと思う。
離れたくない。私が澪の側から離れたくなかったんだ。
女の子なのに、いつの間にか澪のこと、好きになってしまっていた。
自分でも異常だと思う。毎日のように顔を合わせているのに、私の知らないところで誰かとメールしてるんじゃないかとか、会ってるんじゃないか。私以外の誰かが、澪の中の私のポジションを奪っていくと考えただけで、気が狂いそうだった。こんな感情、澪に知られたら、私から離れていくだろう。それだけは嫌だった。今のこの場所が最善なんだと必死に自分に言い聞かせていた。

律「はい?」
最近考えすぎだから、聞き間違いだと思った。
澪「今書いてる歌詞に抱きしめられるシーン入れようと思うんだけど、そういう経験ないからどんな感じかなって」
それで私が抱きしめろと。ほんっと、これだから。読みかけの雑誌を放り投げて部屋の真ん中に立つ澪を見上げる。

どきん。

あ、やばい。ほんの数歩歩く間に隠さないと。目の前に立つ直前ふっと息をはく。
律「ほんじゃいくぞー」
頼む。気付かれないでくれ。震える指先を抱きしめる直前キュッと握って集中させる。澪の左肩に頭を持たれかけるようにして体を預けて、腰に手を回す。出来るだけ心音を遠ざけるように、必死に息をこらえて。すると、澪の腕がそっと私の背中に回った。体の小さな私を包むように。そして、引き寄せられる。やばい。そんなにきつくされたら私の心が持たない。逃げよう。
律「澪しゃんおっぱいおっきいね~」
すぐにゲンコツが飛んでくると思って頭を低くする。けど、何も起こらなくて、澪はじっと私を抱きしめてる。静かな呼吸で、どこか、儚げで。
律「…み」
お。直前、澪の体がスッと私から離れた。
澪「ありがと」
そうポツリとこぼした澪の瞳がゆっくり開いて、私にくるりと背を向けた。ふわっと広がった澪のにおいが私の体から散らばっていく。澪の体温と一緒に。

*

あ、いやだ。

ズキン。ズキン。
さっきと違う心音。悲しくて悲鳴をあげてる。
律「待って」
背中を向けた澪の手を握った。振り返る彼女を力づくで引き込んで、力いっぱい抱きしめた。
律「本気でいく」
何か言った彼女の肩に私の首筋を合わせる。

くそっ・・・・・・くそっ!! なんでだよ。何で私じゃダメなんだよ、神様!
こんなにこんなに、澪のことが好きなのに。守りたくて、側にいたくて、誰よりも近くにいたいのに。どうして、私と澪を女同士にしたんだ。
せめて今この瞬間だけでいいから、本当の私を知ってよ、澪。
好きで、好きで、好きでたまらないのに、いつかは私じゃない誰かがこうして澪を抱きしめるだろうさ。わかってるよ。でもさ、今だけ、恋人を演じさせてよ。私は弱虫だから言葉では伝えられないけど、何千分の一でも、何万分の一でもほんの欠片でもいい。
届いてくれよ。 苦しいよ。 好きなんだよ。

どのくらいそうしていたかわからない。腕の力をふっと弱める。今顔をあげると泣いちゃうから、離れると同時に背を向ける。
律「いやーなんか恥ずかしいなー」
ビリッ。 ビリッ。
振り返ると、澪は今まで書いてた歌詞を破り裂いていた。
澪「私…………好きなやつがいたんだ」
意識がずんって遠くなって、棒のように立ちつくす。
澪「私は臆病だし弱虫だから、絶対口で言えなかった。だから歌詞に託して思いのありったけ書いて、歌って、演奏して」
やめて、やめてよ。 
澪「でもそいつ、どうでもいいことにはすぐ反応するくせに、肝心な時に無神経なんだ。いくつ書いても気づかないからさ、頭にきて郵便受けに直接放り込んでやったんだ。それで気付かないなんてありえないだろ?」
律「…え?」
澪「だからさ、わかったんだよ。気付いてないんじゃなくて私振られてたんだなって。それなのにずっと一方的に歌詞書いてそいつに渡して歌って……馬鹿、だよね。悪いことしちゃった」
澪「だから、ムギに頼んでさよならの歌作ろうと思ったんだ。けど…どうしても書けないんだよ。でも直接言う勇気はないから、やっぱり書いて伝えないと。だから後悔しない、ちゃんとしたもの書こうと思ったんだよ」

振り返った澪の顔は私と同じくらい涙で濡れてボロボロだった。

澪「気づけよ、バカ律。」
私は駆け寄って澪を抱きしめた。澪も強く抱きしめてくれた。二人で笑って、お互いに気がつかなくてごめんって言い合って、納得できるまで涙流してから向き合った。
「「 好きです。好きだ 」」
ぶっ。アハハ。
なんだよ、たったこれだけの言葉言うためにどんだけ回り道してんだよ私たち。

律「あー、そういや新曲どうすんだ」
澪「んー、あまり明るい曲調じゃないんだけどな」
律「よっしゃ! 私が逆転満塁ホームランなやつ書いてやる!」
澪「ムードゼロだな、おい」

そうだよ。もともとムードとか空気とか読むほうじゃないよ、私は。演じすぎちゃっていつの間にか自分を見失ってた。これからも演じる事はあるだろうけどでも、澪の前でだけは本当の私をさらして自分の戻る場所にしようと思った。



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