けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

短編36

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mioritsu

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彼女は私のことを『澪ちゃん』と呼んでいた。
私は彼女のことを『りっちゃん』と呼んでいた。

いつからだっけ、彼女は私のことを『澪』と呼びだした。
彼女曰く「澪とはもう気の置けない親友なんだからいいだろ」って。
そして「澪も私のことは律でいいよ」とも。
でも、私は慣れ親しんだ『りっちゃん』という呼び方を変えることはなかった。
いや、変えられなかったって言ったほうが正しいかな。
私はその【ほんの少しの勇気】を出すことができなかった。

そんなこんなで、彼女は私を『澪』、私は彼女を『りっちゃん』。お互いをそう呼び合う関係がしばらく続いた。
彼女はたまに「私のことは律でいいって」と言ってくれてたけど私は相変わらずだった。

そんなある日の夜、彼女から『明日約束十時、いつもの場所で待ち合わせね』とのメール。
ある日とは8月20日、彼女の誕生日前日だ。
あまりにも突然の誘い、不覚にもプレゼントは準備し忘れていた。
どうしようかと思案する私にふと浮かんだアイデア。
それは彼女が望んでいた、私にしか作り出せないとっておきのプレゼント。
よし、これにしよう。そう決心して私は眠りについた。

明けて8月21日、いつもの場所、いつも通り先に到着している私。いつもと違うのは私の心の中だけ。
数分後、手を振りながら彼女はやってきた。
「おっはよー、澪」

早速訪れたプレゼントを渡すチャンス。これを逃すともう今日は渡せない気がする。
彼女にも聞こえそうなくらい高鳴る心臓を恨めしく思いながら、私は昨日決めたとっておきのプレゼントを彼女に渡す。
「おはよう、律。誕生日おめでとう」

意を決して渡したプレゼント。一体どんな反応が返ってくるのだろう?
不安と期待を胸に彼女へ目をやると何だか狐につままれたような顔をしている。
そして私に一言、「今、何て?」って。
私も私で「え? 誕生日おめでとう」とはぐらかしてしまったけど。
すると彼女は「違う違う、その前その前」って。
ここまで追究されて誤魔化すわけにもいかず、私はさっきの言葉をもう一度繰り返す。
「おはよう、律。誕生日おめでとう」
その日二度目のプレゼント、顔には出さないようにしたけど改めて言うのは何だか凄く恥ずかしかった。

自分の耳が間違いじゃなかったとわかるなり、みるみる晴れやかになっていく彼女の顔。
と、突然私に抱きついてきた。
「っとと、急に何?」
「へへっ、何か嬉しくてさ」
彼女の思いがけない行動に戸惑いながらもその嬉しそうな表情に私も幸せな気持ちになる。
【ほんの少しの勇気】を出して本当に良かった。心からそう思える瞬間だった。

「んもう……。それじゃ律、今日はどこ行こうか?」


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