邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ 魔女と雷神 零

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

19.魔女と雷神 零




独りだった私


暗い培養液の底にいて ただ 誰かが見ているだけ


体は動いた でも、動かない


生きる理由も 何も知らない


何もできない


だから、私は考えた
何も無い私が なんで言葉を知っているのか



考えるだけの毎日で 答えはすぐに出た


私は"普通"じゃないんだ。


でも"普通"を見たことがない 何も知らないのに、知っている自分が解らない
だから普通じゃない のかな…?


……………


ある日、培養液から出されて体が自由になった


立つこともできずに、座り込んでいると
私をいつも見ていた"研究者"ではない、和服の男の人が私の頭を撫でる



「お前は、名の無い実験体ではない 気高き魔女の炎を持っている

 立ち上がれ スカーレット。」


私の頭を撫でていた手が 差し伸べられる



「あなたは、だあれ?」

私は問うた 男の名を


「紅葉を知らぬ、時の葉 お前と同じ物だ」

男も 問いに答える


「そう、私と同じなら  私も立つことができるのね」



葉の手を取り、私の物語は始まった―――――




――――――――――――――……





私は一人だけど 独りじゃない


こうして箱庭に一人でいるのも、好きだ



「…おーい……」


最近綺麗に咲いた、薔薇の花もある


「もしもーし…?」

「…何?」


でも今日は、隣に知らない女の子がいる


「何、じゃなくてさ これ、わたしが育てた花なんだよねぃ」

「…そう。」

「雪色のオールドローズ この季節にしか咲かないのよ」

「…そう。」


全てつまらなそうに、私は聞いていた
何故なら、いくらこの花のことを知ろうが より綺麗になるわけでもないから

知りたくもないし、知る必要もない


「だから、あげる」


「えっ……?」


思わず、隣にいる子の顔を見てしまう
私が驚いていると その女の子は嬉しそうに笑っていた


「やっと目を合わせてくれたね スカーレット。」

「…なんで私の名前を……?」

「んー…有名だし? 何より、私があんたと友達になりたいから!」

「友達なんて、いらないわ
 そんなことより、あなたの名前を教えてくれない?」

「友達じゃないのに、名前は聞くのかい?」

「私だけ知られてて、あなたのことはまったくわからないんじゃ 不公平よ」

「ふーん… わたしはマリアンヌ。
 ファントムの中じゃ、"雷神"って名前で通ってるよー これでいいかな?」

「うん。」


私が始めて興味を持った 金髪の少女
"友達"という言葉の意味がよく理解できなかったけれど

嬉しかった。


その時話したことは、とりとめの無い なんでもないような話だったけど


私は、もらった薔薇を自分の名前にした。
この花はいずれ無くなってしまうけれど、私が生きている間は"咲ける"ように


一季咲きの オルドローズを