邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ

順境と逆境 前編

最終更新:

jyakiganmatome

- view
管理者のみ編集可
12.順境と逆境



魔女は時に思い出す。


一面の焼け野原を

重なっている骸を


川は紅く、風は死の匂いしかしない




記憶と呼ぶにはあまりに曖昧で

ただ、それは魔女の体に刻まれた情報であった


中世 魔女狩りにあった一族。
国は、異端者を魔女と称して滅ぼしたが

中には本物の魔女もいた


世界の流れにより消された一族。


記憶の最後――その場に不釣合いな、場違いと言える和服の男が立っていた

男はゆっくりと近付き……………




――――――――――…







魔女は、箱庭に立っている。

いつもの 場所


"暗闇"を除く七名は炎で焼いた。
後処理が早くなるうえ、見える敵はこれですぐに決着がつくからだ

氷仙、と名乗った女も同等に焼く――


そんな風に魔女は考えている




  今日も月が綺麗だ 





「お、早いね 見かけだけじゃ判断できないもんだ」


箱庭への入口となるゲートをくぐってきたのは氷仙 霧子だ
約束通り、"3日後"にここに現れた



「私はいつでもいいわ 氷仙」

せかすように魔女は言う
もとより無駄な話は嫌いだ。


「まぁまぁ、少しは話そうじゃないのさ せっかく知り合ったんだしさ」


氷仙には敵意が感じられない
変わったやつだ、と魔女は思いつつも言葉を発した


「これから命のやりとりをする相手と、言葉を交わす必要はないわ
 そういう面では、"暗闇"の方ができてる。」


構える

魔女は、とうに紅の魔眼を発動して"感知結界"を張っている


箱庭の広さは、有効範囲の100mに収まっている。



―――感知できぬものは、無い




「負けた奴の名前は、嫌いだよ オルドローズさん」


魔女が構えをとったのを見て、氷仙も構える


魔女が短剣を持っているのに対し、相手は素手だ。
武器を持った相手よりも、素手の方が何をするか予測しずらい



「――だが、関係ない」


魔女は"眼"に力を込める。



「目標、感知」


自己暗示をかけるかのように、魔女が呟く


「浄炎。」



そして、魔女の二つめの言葉が発された瞬間に氷仙の体を炎が包んだ




……はずだが



「貴方…まさか……」



魔女は少し驚いて、炎の中を見つめる。



次第に炎が弱まり、状況が把握できた



「…氷使いだとは思っていたけれど、あそこまでやるとはね……」



魔女の攻撃は確かに命中した。
"感知"し、その場所に炎を出現させる

氷仙はその炎に包まれる前にあることをした。





バキンッ




炎の中心にあった"結晶"が砕け、中から氷仙が出てくる




「あんたが初撃に炎を使うのはわかっていたから、自分を冷凍保存したのさ」


聞かれるまでもなく、氷仙は答える


「あんたの能力はわかっている。 炎がどれほど強いかもな
 それを守りきるほどの強い冷気を纏うことができる能力者は少ない

 でも、あたいはできるんだ」




「…相性が悪いわね あそこまで力を使いこなせる氷使いは………」


自信さえ感じとれる氷仙の言葉に、魔女はたじろぐ

魂さえも焦がす炎は、氷であろうと溶かすことができるが
それを上回る氷の力を持っている。



「なら、斬る…っ!」


無駄な思考を断ち切り、5mもあった間合いを一歩の踏み込みで魔女は近付く
一瞬で氷仙の間合いに入り 胸の中央めがけて「八紘錦」で一気に突――――




ガキン




「あー、寒い…」


魔女の突きは、胸の中央に張られた氷によって無効化されている
ただ立っていたように見えた氷仙は 全ての攻撃に対抗する防御を備えていた



「どうしたんだ?オルドローズ

 まだ、前奏曲は始まっていないんだけど。」




つまらなそうに氷の仙女は言い放つ


互いの吐息がかかりそうなほどの距離。
二人は見つめあった形で静止した
記事メニュー
目安箱バナー