邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ プレリュード 前編

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10.プレリュード 前編





眼を持つに相応しい実験体
相応しいとは、都合が良いということ。


組織にとって都合の良い"モノ"は二人選ばれた



「男性型実験体No.5923 女性型実験体No.5924」




最終選考…つまり殺し合いを生き残った双子は、組織の『都合の良いモノ』になれる権利を与えられた


今思えば最初は点滴しか与えられなかった二人が、籠の戦いを生き残るにつれて人間らしい食事や替えの服を与えられ…
扱いが変わっていったことに気付いた頃には決まっていたのかもしれない



他の"友達"はきっと出ることができない。
出れるとしたら、次の選考まで生き残ることが条件だ




だが、二人は外に出ることができる。
いずれ他のJ3施設に呼び出されるだろう






「僕らだけ、か……」

ソロンは自室の壁によりかかりながら呟いた


「うん………」

ベッドにうつ伏せになりながらフラーテルは相槌を打つ


色々あってここ一週間ほど魔女には会っていない

研究員が"8人目"の死亡のことを話していたので、彼女は無事だということはわかっていた。



「それにしても長かったよね もう夜だもん」
「あっ……!」



ソロンに言われ、フラーテルが窓に目を移すと 外は日が沈んで闇が広がっていた



もうとっくに魔女は箱庭にいるかもしれない
それどころか、もう帰っているかもしれない

急がなければ とフラーテルは思った



「ごめんお兄ちゃん、またお庭行くね!」

「え? あ、うん…」


ソロンに箱庭に行くことを伝えると、フラーテルは急いで部屋を出た。
本を読もうと言われていたが、それについては後で謝ることにした



自分のことはどうでもいい ただ、魔女に会わないと落ち着かない自分がいる





ドンッ




フラーテルが廊下で走っていると
『人』にぶつかった


水色に近い髪の色で、メガネをかけた少女…
少女といっても、フラーテルよりは断然年上だろうが

施設では見たことのない顔だったので、フラーテルはその顔を見つめていた



「………痛いじゃないのさ」


顔をジロジロと見ているフラーテルに、メガネの少女は不快そうな声を出した


「あ、えっと… ごめんなさい…?」

「なんで疑問系なのかねー… ま、いいけど」


『一応』出された謝罪を聞いて、何事もなかったのようにまた歩き始めた



「えぅっ… 寒いの?」

「…まあね、どこも寒いよ  冬なんだしね」


「だからそんなに体が冷たいの…?」


「あんたねー…… なんなのさ 着いてくるな!」


それが当然であるかの如く、フラーテルはメガネの女性の横に並んで歩いていた。
理由は二つ

一つは魔女のいる箱庭と同じ方向のため。

もう一つは、ぶつかった時に触れた彼女の体が氷のように冷たかったからだ
見たところ薄着ではあったが、あそこまで体が冷えていることに疑問を持った。



「あー、寒い……」

彼女のそんな呟きを5回は聞いただろう
もっと服を着ればいいのに…、とフラーテルは思った


そんなことを考えていると、箱庭に出た。


今日も涼しい風が吹き、月が地面を照らしていた





「あら、フラン。 久しぶりね」


もちろん魔女も居た。
もう足の傷も治ったようで、普通に歩いてフラーテル達に近付く



「うん、久しぶりなの!」

「元気そうでなにより…  ところで、こちらの方はどうしたの?」


魔女はメガネの少女の方を見て言った
彼女も箱庭に用があったらしく、魔女を見ながらじっとしている



「あんたが、魔女かい?」


「……そう呼ぶ人もいるわね」


「ふんふん… 八人抜きおめでとう、オルドローズさん」


…空気が変わった
今の言葉でオルドローズが警戒したからだ。



「エスカレイドがすぐにやられちゃったみたいだから、あたいが9人目ってわけ。
 つっても今すぐ殺り合うってわけじゃないから安心してー」


「あなたが9人目、ね…」

メガネの少女の言葉を聞くと、魔女は短刀をしまった
とりあえず警戒は解いたようだ

フラーテルはどうすればいいのかわからずに二人の顔を交互に見ている


「あんたが10人の能力者を倒すことなんかどうでもいいの。
 ただね、あたいは自分の意思であんたと戦う。」



「あたいの名前は氷仙 霧子。 他のやつらからは"氷の前奏曲"なんて呼ばれてるけどね。」



―――氷仙 霧子。
またの名を"氷の前奏曲"


後に黄昏の雨となる「8」の軍勢の一人である