邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ 闘劇の箱庭 後編

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7.闘劇の箱庭 後編






  あぁ   楽しい



きっと今、私の顔は歪んでいるだろう
私は私の狂気を自覚している。


実験体に必ず植えつけられる  "殺人衝動"



痛いけど、楽しい。



私は"自由のため"だなんて言って 殺しに理由をつけて楽しんでいる
狂っている



でも、そういう様に作られたのだから

仕 方が な  い






ズシュッ



立ち尽くしていた私の腱に、さっきよりも深く刃が入る



「…あと…二回……」


炎の絨毯となっていた地面を元に戻し、両手をつく


と同時にすぐに"首"を上げた




浅く、首筋に刃が通った



「ほぅ……?」

避けられるとは思わなかったのか、オルフェウスの声がまた聞こえてきた



そんなことはどうでもいい



傷が少ない方の足を使って無理やり立ち上がる




「"浄炎"…」

炎の絨毯が先ほどよりも勢いよく広がる


それと同時にオルドローズは木の元に飛ぶ



「(無駄なことを……!)」


「……………」

魔女は片足でようやく立っている状況だ
オルフェウスに仕損じることはもうない



「深紅の魔女よ、さらばだ」


「えぇ、さようなら」





闇に赤い霧が生まれ、オルフェウスが地に落とされた

いったい何が起こったのか 一瞬わからなかったようで、目を開けたまま倒れている




「ば……かな………」

ナイフを持っていた左手、心臓、喉元を同時に突かれて、もはや動くこともできなくなっている
そんなオルフェウスを見下ろしながら、魔女が口を開いた


「やっぱりねー…」


「あなたは『影』の能力。 闇に溶け込むなんて力は無かった」



「……………」
喋れないのか喋らないのか、オルフェウスは黙っている


「その黒い布がステルスみたいなものなんでしょうね
 影から出てきた時は、ずっと"感知"の網にかかっていたのよ?」


オルフェウスの能力は影。
相手の場所を知覚できるオルドローズに対しては、影の中からの攻撃でしか当てることができない

弱点を攻めるには足を多く斬って転ばせるか、木の影を伝って高い場所まで移動しなければならない


攻撃する瞬間はなるべく悟られないように"暗瞑の布"で姿を消した



しかし、転倒させるのに時間がかかったために 魔女に能力を悟られてしまっていた



「不覚…か……」


オルフェウスは、それだけ言って息を引き取った



「強かったわよ "暗闇のオルフェウス"。 あなたが、七人目。」




ドサッ



戦いの緊張が解け、魔女は地面に倒れこむ
足の出血のせいで立つこともできない



「参ったわねー…  草陰にいるフランが医療班を呼んでくれればいいんだけど…」


そう魔女が言うと、フランが草むらから出てきた
言葉は無く 一度魔女の姿を見ると施設内に走っていった



「………………あ…」



丁度天を見上げる形になっていたオルドローズは、つい声を出してしまった



「いつもより、月が綺麗に見えるわね…」



きっと自分は変われない
こんな自分だからこそ、月が綺麗だと思える


それなら、それでいい





――――この世界は、なんと美しいことか