邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ 魔女 前編

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3.魔女



箱庭で、魔女と出会った。
本の中でしか「魔女」は見たことが無かったが、人目でその言葉が浮かんだ



「えっと…月から来た魔女……?」

フラーテルは、真面目に「ソレ」を問う


「………………」
『魔女』は黙っている。 月明かりに照らされた雪色の肌が幻想的な雰囲気を感じさせる


「クスクス… 私がお月様の魔女に見えた?」
フラーテルの足元に刺さっていた短剣を拾い上げて彼女は言った


「うん… だって見たことない顔だし、魔女の服着てるもん」
『魔女』の着ているローブを呼び刺す


「魔女ってローブ着てたかしら?もっとこう、ロングスカートっぽいアレよね…」
どうにか手で表現しようとしたが、諦めた様子で腰に手を当てた

「でも、魔女っていうのは正解」
「魔女、本当にいたんだね!」
紅色の眼を細めて微笑む魔女に、フラーテルは合わせるように喜んだ。
少しして、再び彼女が口を開いた

「だからって月から来たわけじゃないの。あなたと同じね」
ため息混じりに話しながら、フラーテルが腰掛けていた岩に座る魔女は、月を見上げた

「実験体…なの?」
「……………」

答える必要もないのか、月を見上げ続けている彼女を見て、フラーテルは質問を変えた

「番号は…?」

それも嫌な質問だったのか、顔を少し歪めてフラーテルを見る


「そんなものはね、とっくの昔に忘れたわよ。今は名前があるの」

フラーテルは『名前』というワードに反応した


「名前って、ボクみたいな…?」
「あなたの名前は知らないけど、私は『深紅のオルドローズ』。あなたの名前も教えてちょうだい」

深紅(クリムゾン)のオルドローズと彼女は名乗った。
フラーテルとしては、名前も魔女らしいというイメージしかなかったのだが。


「…No.5924……」

戻っていた魔女「オルドローズ」の表情がまた変わる

「だからね、そういうのは名前じゃないの。あなたが言った『ソレ』はただの番号。生年月日となんら変わらない」

自分でも嫌いな番号を言ったのは、施設で名前を呼び合うのは禁止されているから
そもそも普通は名前なんて与えられないからだ

しかし、彼女は当然のように名前を名乗った
それに戸惑ってしまったのだ。


「えっと……フラーテル…」

フラーテルが名前を言うと、魔女は嬉しそうに微笑んだ
「よく表情が変わる」という印象も与えられてしまったが、フラーテルは口に出さなかった


「うん、そうね それが名前。いい名前じゃない
 ちゃんと覚えたから フラーテル… ううん、呼びやすいからフランでいいね」
「えっ?あ、うん……」

ソロンと同じ呼ばれ方をしたので、少し驚いて頷いた


そんな会話を続けていると、月が雲に覆われて庭は一気に暗くなった


「あ……」
「あら… せっかく満月が出ていたのにね」

二人は顔を合わせて残念そうにした

「そういえば明日は雨が降るかもって。 忘れていたわ…」
「うー… じゃあもういいや……」

明日も月が見れないだろうと思い、フラーテルは足元の石を蹴って施設内に戻った
魔女はまだ庭にいる


「あぁ、明日もここにいるから 気が向いたら来てね
 あなた知り合いに似てるし。」
後ろからそんなことが聞こえたので、『知り合い』という言葉を疑問に思いつつ適当に手を振りながら部屋に戻った



実験体はあまり人と喋らないために、普通よりも「言葉」による理解力は低い
コミュニケーションについては施設から出る時にしか教えられない というのが決まりであった

だから自ら学ぶ他ない。 そのために簡単な漢字も読めない子供がほとんどだ。
完全に言葉を理解しているのは「ソロン」くらいで、フランはそれほどでもなかった