邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ

星を視る者(スターゲイザー)仮説

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jyakiganmatome

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概要

大戦期、人類は無数の異世界、平行世界や果ては太陽系外の未知の文明に至るまで、数えきれない程の未踏の領域が有る事を思い知らされた。
それは地球と言う小さな惑星上ですら、未だ地表の上をせせこましく這いずり回る程度しか解明できていない人類にとって、これ以上ない脅威と言えた。
最新鋭の科学が、古来の魔術が、鍛え抜かれた技術が、そして人類の革新の可能性とされた「眼」ですら、異文明に対抗するには心許ない物となってしまう。
その事実は、ある意味開拓期の時代へと逆戻りしたかのような不安感を人類に与える事となったのである。

しかし、その状況に対し精神の拠り所を求めるかのように、ある仮説が一部の学者の間で嘯かれるようになる。

曰く、「異世界や宇宙文明との遭遇で拓けた世界には、それに適応し進化した人類が現れる筈だ」という説である。

異次元世界の存在を知覚し、無重力下で正確な空間把握力を持ち、地球上の環境を必要としないコミュニケーション能力を有する、進化した人類の可能性。
それは突飛な希望的観測に他ならなかったが、無数の異文明への恐怖に脅える人類にとって、その克服は魅力的でもあり、必須的でもあった。
やがてそれは「出現して欲しいと言う希望」から「人工的に人類そのものを進化させる」という方面へシフト。
以降、本仮説は学説というより、ある種の宗教に近い概念としてじわりと成長していく。

やがて戦後15年、エーカーグラターの消滅により異世界の浸食が落ちつき、J3事変による混乱から再び立ち直り始めた人類は、進化人類の可能性に傾倒しなくても落ち着きを取り戻しつつあった。
しかし進化人類学は一時期、錬金術の如く学問として大真面目に取り組まれており、それによって生まれたいくつかの科学的成果も実用段階にあった。
フラグメント理論はその一環であり、コンピューターによる状況予測技術を加速的に発展させ、気象予報や戦況予測CPU、宇宙開発に至るまで浸透した。
そうするうちに進化人類仮説からは「異世界の脅威への対抗」という概念が薄れて行き、再び火が灯りつつあった宇宙開発の面でその研究成果が多く生かされたことから、「宇宙進出への適応」という概念へとすり替わって行く。

進化人類に現れると思われた空間認識能力、超越的なコミュニケーション能力や予想力、超感覚等の要素はむしろ宇宙へ進出するのにうってつけの「才能」として、それらを備えたアストロノーツが出現すれば宇宙開発は飛躍的に進むと言われていた。
勿論、そのような進化した人類の出現は、現在では科学的根拠の無い夢物語となりつつある。
しかしその存在を「理想像」とし、それを出来る限り再現できる環境、装置を目指して研究を進めると言う一種の指標として、現在でも忘れられたわけではない。
そして現在では「進化人類」と言う名はカルト的でそぐわないとし、宇宙開発における一つの概念としてより、親しみやすい名称がつけられた。

理想であれば、たとえ瞼を閉じていても、自身の進路を導く星が視える人類。

    スターゲイザー
即ち、「星を視る者」である。
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