「何が逆密室殺人だ。そういうのは遠隔殺人と言うんだよ」
見張りをセブンに任せ、僕はリビングで考えをまとめていた。
「監禁されて置いて直接手が下せるわけは無い。となれば遠隔殺人…あらかじめ用意されたギミックを
用いて殺すか、殺し屋でも雇うしかないわけだ」
用いて殺すか、殺し屋でも雇うしかないわけだ」
この界隈で信頼性の高い殺し屋と言えばミルチャの奴だ。
が、殺し屋を雇って殺すならわざわざ、こんなに手の込んだ事をする必要は無い。
しかしあいつは結構区別なく依頼を受けるからな……。
が、殺し屋を雇って殺すならわざわざ、こんなに手の込んだ事をする必要は無い。
しかしあいつは結構区別なく依頼を受けるからな……。
「でもお姉ちゃん」
ここにきてアシュリーが口を挟んできた。
「もしあの人が能力者だったら、部屋にいながら人を殺す方法もあるんじゃ……」
姉より聡明な妹なんて嫌いだ。
ミステリーの大前提をぶち壊す要素を真っ先に持ってくる。
しかし実際問題、あの女が能力者だったならまともな対策等通用しない可能性が有る。
ミステリーの大前提をぶち壊す要素を真っ先に持ってくる。
しかし実際問題、あの女が能力者だったならまともな対策等通用しない可能性が有る。
「……素性を調べる必要が有るね。幸いにして、あの女は仙堂財閥なんて目立つ家柄の人間
もし能力者だったりしたら、その筋の情報屋にでも聞けば良いわけだ」
もし能力者だったりしたら、その筋の情報屋にでも聞けば良いわけだ」
情報屋。
そういう胡散臭い家業で糧を得ている奴も、案外に居るのだ。
運用するには信頼性の高い奴を選ばないといけないし、高く吹っ掛けられることが多い。
しかしながら、上手に使えば相当に力強い味方となる。
探偵業とは切っても切り離せない存在、それが情報屋だ。
そういう胡散臭い家業で糧を得ている奴も、案外に居るのだ。
運用するには信頼性の高い奴を選ばないといけないし、高く吹っ掛けられることが多い。
しかしながら、上手に使えば相当に力強い味方となる。
探偵業とは切っても切り離せない存在、それが情報屋だ。
「……クドリャフカかな。情報が無くても調べてくる積極性があるのは彼女くらいだし…
今回の件の隠蔽も頼んでおこう」
今回の件の隠蔽も頼んでおこう」
クドリャフカは綾時出版のライターであり、ニュース面を担当している。
姉のライカの「ドア」とのコンビネーションで行われる、彼女の「突撃取材」は、あらゆるプライベートを丸裸にする。
自社の独占ニュースとしてよく芸能人のスキャンダルを取り上げるが、世間を揺るがす大事件なんかの最速情報を
会社公認で大手新聞社に売りつけたりもして、マスメディアの3割を掌握しているとかなんとか。
姉のライカの「ドア」とのコンビネーションで行われる、彼女の「突撃取材」は、あらゆるプライベートを丸裸にする。
自社の独占ニュースとしてよく芸能人のスキャンダルを取り上げるが、世間を揺るがす大事件なんかの最速情報を
会社公認で大手新聞社に売りつけたりもして、マスメディアの3割を掌握しているとかなんとか。
「その代り、彼女の情報は危険なんだよな」
彼女は「ライアーメイカー」という裏稼業も営んでいる。
依頼を受けて嘘の情報を創りだし、大手新聞社にリークして報道させ、大衆への真実を捻じ曲げる。
元々空想癖の激しかった彼女だからこそ、その嘘は重厚に「設定」が練られ、真実との境界線を限りなく薄くしてしまう。
法外な報酬を要求する上、彼女の矜持に沿わなければ断られる事も多いが、得られる効果は絶大だ。
依頼を受けて嘘の情報を創りだし、大手新聞社にリークして報道させ、大衆への真実を捻じ曲げる。
元々空想癖の激しかった彼女だからこそ、その嘘は重厚に「設定」が練られ、真実との境界線を限りなく薄くしてしまう。
法外な報酬を要求する上、彼女の矜持に沿わなければ断られる事も多いが、得られる効果は絶大だ。
「「赤いシマウマ」も「空飛ぶヘラジカ」も、彼女が創れば真実だ。たとえ仙堂 萌葱の犯行を阻止できたとして
今回の誘拐騒動の火の粉がウチに降りかかってくるの避けるのは難しいだろうからね……余計な出費になるけど
………この際だ、高い情報も買ってやるさ」
今回の誘拐騒動の火の粉がウチに降りかかってくるの避けるのは難しいだろうからね……余計な出費になるけど
………この際だ、高い情報も買ってやるさ」
ダイヤルを回し(うちの事務所は黒電話だ)、すぐさま連絡を入れる。
こうなっては時間との勝負もしなければならない。
一刻一秒を先んじて、有益かつ新鮮な情報を手に入れる。
しかし、この電話回線はどうやってあの僻地の城に通じてるんだ?
こうなっては時間との勝負もしなければならない。
一刻一秒を先んじて、有益かつ新鮮な情報を手に入れる。
しかし、この電話回線はどうやってあの僻地の城に通じてるんだ?
「もしもしクドリャフカです。このタイミングでかけてくるっていうのは…仙堂さんの事で何か関わっているのかな?」
相変わらず見透かしたような事を言って本当に見透かしているから腹が立つ。
大方、とっくに必要そうな情報は集め終わっているのだろう。
大方、とっくに必要そうな情報は集め終わっているのだろう。
「出来る限りの仙堂 萌葱の素性を教えてほしい。能力者であれば能力の詳細もだ
ついでに、婚約者の下に届けられたとかいう脅迫文の内容も知りたいんだけど」
ついでに、婚約者の下に届けられたとかいう脅迫文の内容も知りたいんだけど」
「FAX無かったよね。パソコンの方に暗号メールで送るからいつもの解読機に突っ込んであげて?」
後半は駄目もとで言ったのに有るのか。
相変わらず恐ろしい。
この女は絶対に敵に回したくないと本気で思わされる。
相変わらず恐ろしい。
この女は絶対に敵に回したくないと本気で思わされる。
「報酬は全部終わったら銀行に振り込んでおくから」
「今回は基本料の8割で良いよ♪」
「「嘘」も必要なんだ。僕がこの事件にかかわったという事実を世間には隠し切ってもらいたい」
「じゃあ8割増し」
遠慮しない眉毛だ。
それだけに仕事はきっちり行ってくれるから文句は言えないのだけど。
それだけに仕事はきっちり行ってくれるから文句は言えないのだけど。
「……光回線、通しておいて良かったね」
既にPCを起動させているアシュリーの頭を撫でつつ受話器を置き、メールを開封する。
これで事前知識は手に入れた。
これで事前知識は手に入れた。
情報は、兵士で言えば銃弾。
探偵としての、武器。
探偵としての、武器。
「…………よし、大体わかった」
「全部本当の事だと良いね」
「嘘が交ってたら5割増しで留めるんだ、彼女は」
弾の補充は済んだ。
ここから先は、足で稼ぐ。