ジュルノ=ジュバァーナ・Ⅷ
――初めての単独任務は、まだたった8歳の頃だった。
今思い出せば、信じられない。
たった8歳の少年が、銃を持った何十人もの大人達がいる施設を壊滅させたのだ。
病院みたいなとこだったな、確か。
母体が、ある孤児院と同じの研究施設だ。
今思い出せば、信じられない。
たった8歳の少年が、銃を持った何十人もの大人達がいる施設を壊滅させたのだ。
病院みたいなとこだったな、確か。
母体が、ある孤児院と同じの研究施設だ。
拳銃と小太刀だけで何十人も――。
映画にでもなっていたとしたら、酷く奇妙というか、違和感というか……あまりにも「ありえない」。
映画にでもなっていたとしたら、酷く奇妙というか、違和感というか……あまりにも「ありえない」。
目標の地下。
途中に入った部屋が、何だかわからない機械で一杯で、任務中とは思いながらも脚をとめ、好奇心でいろいろ観て回った。
途中に入った部屋が、何だかわからない機械で一杯で、任務中とは思いながらも脚をとめ、好奇心でいろいろ観て回った。
データを受信し続けてるファクシミリ装置がある。
それを観て、オレは違和感を感じた。
今襲撃をうけてる最中なのに、何処から何を送っているんだろう? と。
それを観て、オレは違和感を感じた。
今襲撃をうけてる最中なのに、何処から何を送っているんだろう? と。
近づいて、受信している内容を確認する。
レントゲン写真とドイツ語の文章。
ほとんど読めなかったけど、直感的に理解した。
人間のデータだ。
人間を使った実験の。
今も施設内で何かやっている。
そうそう止められないような、重要な実験を。
レントゲン写真とドイツ語の文章。
ほとんど読めなかったけど、直感的に理解した。
人間のデータだ。
人間を使った実験の。
今も施設内で何かやっている。
そうそう止められないような、重要な実験を。
その後は片端からドアを壊して荒らし回った。
その実験を知りたかった。
その実験を知りたかった。
――途中、炎の少年魔術師との戦闘があったけど、此処では割愛。――
一番奥の部屋が実験室だった。
オレは他でそうしたように、実験室を制圧した。
リヴォルバーで撃って、射って、打って。
小太刀で斬って、突いて、薙いで。
オレは他でそうしたように、実験室を制圧した。
リヴォルバーで撃って、射って、打って。
小太刀で斬って、突いて、薙いで。
無菌ビニール室の手術台には、オレと同い年くらいの女の子が全裸で鎖に縛られ、眠っていた。
任務完了後、オレは父上に報告をし、少女を家の自室に連れ帰った。
任務完了後、オレは父上に報告をし、少女を家の自室に連れ帰った。
「大変だと思うが、1人でか」
「はい」
「どうしてもか」
「はい」
「何故?」
「連れ出したのはオレだから。
……だから、オレが最後まで“せきにんをもって”助けたい」
……だから、オレが最後まで“せきにんをもって”助けたい」
父上は優しく頷き、「欲しいものがあれば云え」と協力的な言葉をくれた。
兄妹・Ⅷ
翌日。
「ねえ、名前は?」
「……」
「オレはジュルノ」
「……」
「食べないの?
おなかへってない?」
おなかへってない?」
「……」
「寒いの?
毛布持ってくる」
毛布持ってくる」
「……」
少女は無言で毛布を受け取る。
……耳が聞こえないのだろうか、などと思っていた。
……耳が聞こえないのだろうか、などと思っていた。
「そうだ!
お風呂に入んなよ、寒いんでしょ?」
お風呂に入んなよ、寒いんでしょ?」
「もう一時間も湯船につかって、動けない? 疲れてる?」
「……」
「オレが洗ってあげるよ」
「……」
「どうすれば、君と話せるのかな」
「……」
「いいよ、もうッ!
オレ勝手に喋るからね!」
オレ勝手に喋るからね!」
好きなテレビ番組やら、アイスクリームやら、動物の事やら、小学校のおかしな獣人の話……。
やはり少女は言葉を発さなかったが、風呂を上がってからも、とりとめもないことを延延と話した。
やはり少女は言葉を発さなかったが、風呂を上がってからも、とりとめもないことを延延と話した。
3日後、下校中に寄り道をして、女の子のために赤いヘアピンを買った。
「ほら、これあげるよ」
「……」
「まだ動けないの?
つけてあげる、じっとしてて」
つけてあげる、じっとしてて」
少女の髪の左側を、それで留めてやる。
似合っていると思ったから、鏡の前に連れて行って、
似合っていると思ったから、鏡の前に連れて行って、
「赤いの、いやだった?
可愛いよ」
可愛いよ」
「……」
「名前さ、ほんとは知ってるんだ。
でも、教えてくれるまで、呼びたくないッ」
でも、教えてくれるまで、呼びたくないッ」
「……」
兄妹・Ⅷ+Ⅵ/ⅩⅡ
「……もう、半年たったね。
もうスズムシもないてる」
もうスズムシもないてる」
「……」
「君も背が伸びたし、髪だって。
何か……云ってよ。まだ声も知らないんだよ?」
何か……云ってよ。まだ声も知らないんだよ?」
「……」
「ねえ、オレ達、もう『家族』だろ」
「……!」
「『家族』なのに名前を知らないなんて、おかしいじゃない。
……ねえ、名前は?
オレはジュルノ」
……ねえ、名前は?
オレはジュルノ」
「……ヮ」
「え!」
「……ワタ、シは、コダマ」
半年喋らなかったからなのだと思う。
それはまともな発声じゃなかった。
それはまともな発声じゃなかった。
「ねえ、コダマ、今日の夜はさ、父さんに内緒で起きてよう。
ずっとお話してよう」
ずっとお話してよう」
「…………う、ん……」
「あれ?
泣いてるの?」
泣いてるの?」
「――?」
コダマは、顔の涙を指ですくい取って眺める。
「何、泣いてるの?
どっか痛いのか?」
どっか痛いのか?」
「わから、ない」
「痛くないの。
何が悲しいの?」
何が悲しいの?」
オレは涙に濡れたコダマの手を取る。
「わか……ら……うっ!
う、うあっ! ……うあああっ! あああぁ……!」
う、うあっ! ……うあああっ! あああぁ……!」
コダマの涙は止まない。
星樹 樹神・ⅩⅦ
「――ねえ、名前は?」
「――オレはジュルノ」
「――オレはジュルノ」
――、
――――、
――――――。
――――、
――――――。
「ワタシは……コダマ……」
ベッドの上で、そう寝言を放つ。
「知ってるよ、ずっと前からな」
「……」
その声に反応するように、柔らかい微笑みを浮かべる。
「……あ、……寝言か」
枕元にかけて洋書を読んでいたジュルノが、
樹神の寝顔に目をやり、布団をかけ直してやる。
樹神の寝顔に目をやり、布団をかけ直してやる。
「……ジュル、ノ……兄上……」
「心配するな、どこにも行きやしないよ。
ずっと傍にいる。
……行くもんかよ」
ずっと傍にいる。
……行くもんかよ」
「……」
幸せそうにすやすやと眠りこける。