1番・相葉ミズキの場合

 いよいよ乙女実習のスタートだ。
「いよいよ始まるのか」
「ミズキ、具合でも悪いのか?」
「べ、別にそうじゃないですよ」
「そうか」
 一番手である相葉ミズキは青ざめており、
「き、緊張するな」

 乙女実習とは出席番号順にクラスの誰かが一週間ごとに女になり、
 次の週に元に戻るのを繰り返すのだが、

「俺、どうなっちゃうんだ?」
 ミズキは元々顔立ちが女っぽく、背も低く、髪もさらさらとしており、
「お前、女になってもあまり変わらないよな」
「何だと」 
 ミズキが思わず立ち上がると、
「こ、これは」
「ちょっとくすぐったいぞ」
 担任教師がにやりと笑う。

「うう…」
 クラスメート達が見ている中でミズキの体が変化を始め、
 すると皆が見ている前で胸元が競り上がってくる。
 その敏感な先端が男性用のタンクトップに擦れて痛みが生じ、
 次第に胸の膨らみが増していき、
「ああっ」
 無意識に出した声がやたらに色っぽい。

 腰がくびれていくに伴ってズボンがずり落ちそうになるが、
 大臀部が大きく横に張り出したためにズボンがずり落ちずに済んでいる。

 服に隠れて見えない部分でも変化が生じており、
 男性器が消失した代わりに新たな器官が形成されようとしており、
 そして服どころか体に隠れて見えない部分、つまり、内臓も変化している。
 精巣が卵巣へと変化していき、子宮も形成されている。

 体の変化がようやく治まったのだが、顔が脂汗にまみれていた。
 急激な性転換はやはり体の負担が大きいのである。

「どうだ?女になった気分は?」
「え?」
 まだボーっとしている。
 自分の肉体に起こったことを認識していないのではなく、苦悶のうちに忘れてしまったのだ。
 辛うじて立ってはいられるようが、足元はふらついてる。
「ほら」
 いきなりセイジがミズキの胸を触った、いや、揉んだ。
「うひゃあああっ」
 今まで感じたことのない感触。体中にゾクゾクとした感触が体を駆け巡る。
「な、何しやがる?」
 思わず両手で胸元を手で隠すミズキ。
「それが女の子の感触だよ」
 妙に優しげにセイジは言う。
「俺、本当に女になったのか?」
「確認してきてもいいぞ。ああ、トイレは職員用のが空いているぞ」
 もちろん女子トイレである。
「そ、そうします」
 妙に尿意を覚えていた。

 しばらく悩んで、女子トイレに入る事にしたミズキだったが、
 ミズキ同様、他のクラスでも性転換した「出席番号1番」の「女子生徒」達がトイレに来ていた。
 個室の中から「うひゃあっ」「ぎょええっ」などと声がしている。

 個室が空いたのでミズキも意を決して入るのだが、
 しゃがんで用を足すこと自体はさほど抵抗はなかったものの、
 生まれてからずっとトイレと風呂では見慣れていた男性器が消失した事に驚き、
 また何とも言えない喪失感に見舞われたのだが、
「本当に女になったのか?」
 それでも自分が女になった事に確信が持てなかった。

 帰宅すると、ミズキが女になったのを見て、
「キャー、ミズキ、可愛いわね」
 「永遠の17歳」と呼ばれるほど年の割に若々しく見える母のミズエが嬌声を上げ、
「母さん、止めてくれよ」
「凄いね、お兄ちゃん、本当に女になっているなんだ」
 ポニーテールにセーラー服を身に纏った弟のカオルが感嘆の声を上げる。
 カオルは普段から女装をしているのだが、女になった兄を見て、
「良いな。女子の制服での登校を認めてくれるから今のところにしたけど、
 一週間とはいえど本物の女になれるならあたしも同じ高校にすれば良かったかな?」
「お前は心が女みたいだな」
「別にそういうわけじゃないよ。でもあたしにはスカートの方が似合うんだよね」
 末弟のシノブを含めた相葉家の三兄弟は元々、顔つきなどが女っぽいのだが、
 特にカオルは悪乗りして女っぽい服装や仕草をしているのでなおさらである。
「カオル、ミズキにあなたのお洋服を貸して上げてね」
「はい、ママ」
 渋るどころか喜んでいる。
「ちょっと待て、俺にスカートを履けと?」
「せっかくですもの。元に戻るまでは女らしくしてましょう」
「うふふふ、お姉ちゃん、あたしが可愛くしてあげるね」

 カオルの笑顔に警戒心を抱くミズキであった。

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最終更新:2012年04月23日 20:15
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