都内のとある男子校、何の変哲もない私立校に見えるがある特別なカリキュラムが存在している。
ホームルームで一人の男性教師が説明をしていた。
中肉中背、短めの髪、メガネと至って平凡な男性だった。
彼の名は南原セイジ、このクラスの担任である。
彼の説明を神妙な態度で聞いている男子生徒達。
「さて、みんなが知っての通りこの学校では乙女実習というのがある。乙女実習が来週からスタートする」
一旦説明するのを止め、生徒達の様子を窺って静かになったのを確認してから再び説明を始め、
「クラスの誰かが一週間ごとに女になって、次の週に元に戻る。そういうスケジュールだ」
ざわめきが起こる。
乙女学習があるのを承知しての入学だったがいざとなると怖気づく。
「静かに。これは長い人生で女性の立場を尊重できるようになって欲しいという願いで組み込まれている。
身を以って足掛け八日間、女として過すように。その間は私服登校を認める。
多少の化粧やアクセサリーも大目に見よう。それもまた女になった良い経験になるのだからな」
ちょっと笑いが起きる。
いきなり化粧までするかよと。
なお、私服での登校が認められているのは、僅か一週間では新たに制服を買っても無駄になってしまうので、
制服のレンタルも検討されたが、体形の変化などを考慮した結果、私服での登校を認められたのであった。
教壇での説明が続く。
「出席番号順に行くぞ。最初は相葉から」
「やっぱりオレが一番かよ」
小柄な体格をした相葉ミズキがぼやく。
そうでなくても顔が女っぽいため、中学校までよく女と間違われていて嫌な思いをしていたのだった。
まさか本当の女になるなんてとげんなりしていた。
「逃げても無駄だからな。君達のDNAを採取したマシンが作動する事によって、どこにいても女になるぞ。
逃げていたらずっと男に戻れなくなるかもしれんな」
青ざめる生徒達。
「なぁに、僅か一週間だ。何も一学期の間ずっと性転換していろというわけじゃない」
ここでちょっと疲れたような表情を見せる担任。
「ね…兄さん」
大柄だがおとなしそうな生徒、南原スナオが呼びかける。実はセイジの甥にあたるのである。
「あ…」
我に返ったセイジは慌てた口調で、
「以上、質問がなければ解散だ」
生徒達は部活に向かったり帰宅したりする。
最終更新:2011年08月22日 18:43