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とある高校のバレンタイン

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「なに!?旗立師の異名を持つ上条灯子がバレンタイン用のチョコを、とある平凡なる我が校一階の調理室の窓際(体育館側)で作っているだって!?ホントか!?」
「もちろんだにゃー、貴様は俺が人の、それも調理室に緊張した面持ちで入る!そんな女子(おなご)のことを見間違えるとでも思うのか?」
「ありえないな……ん、新情報?な、何だってー!?」
「どうした?なんなんだ!?」
「あの天井まで調理室に入っていったらしいぞ!神作と一緒に!」
「さすがにそれはないだろう」
「いやいや、毎日亜衣たんを目で追っているボクが調理室に緊張(ry」
「………クソッ!貰える幸せ者は一体誰だ!?」


 とある高校のバレンタイン


バレンタイン、もちろん殉教した聖バレンチヌスのことではない。
とあるチョコ会社の陰謀により生まれた乙女達の聖戦記念日である。
ゆえに男子達は盛り上がったり盛り下がったり、果ては乱闘騒ぎになる。この高校の生徒なら五年前の流血沙汰は周知の事実だろう。
諸君、我輩にチョコを渡したい場合は至急!3階放送室にブツと一緒に持ってきたまえ!繰り返すぞ、我輩に(ry
……これは失敬、我輩も男ゆえテンションが上がっていたようだ。ではただの司会進行役を務めよう。

 ~調理室~
そこには60℃のお湯に命を懸ける女達がいた。
60℃とはチョコを溶かす上での適温であり、溶かしている途中に温度が変わってしまうと舌触りが悪くなってしまう、らしい。
つまり今調理室に残っている女子達は皆その舌触りのためだけに一時間以上かけていたりするのである。
そんなガスコンロやら熱意やらの熱気の中、一組だけ第一の関門を突破したらしい三人組がいた。上条灯子、天井亜衣、神作ひのである。
「さすが天井、ぴったり60℃だな!」

「私の亜衣の能力はこういうのに便利ですし、ジャストなんて簡単です」
「いちいちうるさい!気が散るだろう!」
ふむ、天井亜衣という少女は何かしらの能力を使って温度を上昇させたのだろう。
その証拠にガスコンロは使用されておらず熱気のこもる部屋の中で若干涼しい。
「ほら、こっちは私に任せてそっちをやっとけ」
そっち、とは準備のことだろう灯子が板チョコやら生クリームやらココアパウダーやらを取り出していた。トリュフか……
「チョコはひのが刻むです。得意ですし」
そういって神作ひのはどこからか大振りのナイフを取り出し、板チョコを豪快かつ繊細に刻みだした。
その速さたるや手首から先が見えなくなるほどである。実の所この右腕は『エンゼル様』が動かしているのだがそれでも速い。むしろ多分『エンゼル様』は関係ない。
刻み始めて三十秒、その神速の右腕がピタッと止まった。spしてまな板の上には粉状になったチョコ……粉?
「神作スゲー!普通ここまで出来ないよな…物理的に」
「まぁ溶けやすくて助かるが、ひの、あと二十六枚あるからな」
「合点承知です!大丈夫ですよねエンゼル様?」
そう自分の右手に問うとナイフが傍らの板チョコに字を刻む。
《No Problem》
ちなみにこの右腕、英語の筆記試験だけは常に満点である。

皆、チョコ作りに命を懸けていて自分だけ浮いている上条灯子はというと…
「ん~俺暇だな……コンビニ行って昨日読み損ねたサ○デー読んでくるわ」
そう言って調理室を後にしようと思ったら、背後からガシッと肩を掴まれた。
「灯子?アンタなんでここにいるか覚えているの?」
「え?え~と……あれ?」
「アンタの右腕の効果で!」「この調理風景を!」「男子達の能力で見られないためでしょうが!」
口々に言われ頭をくらくらさせながら恐る恐る首肯する。
「よし、分かったら亜衣ちゃんたちの所に戻りなさい」
カクカクと、操り人形のように窓際まで歩いていった。
すでにチョコを溶かし終えたらしく天井たちが彼女を待っている。
「やっと来たか、何もしないのは悪いから何かやるといったのはお前だろう」
「ん、スマン」
「私は温度を調節するために手が使えないし、ひのは切る以外の技術が壊滅的だからな」
「KILLですか?」
「ひの違うぞ!そっちじゃない……まぁ任せろ!」
そういって上条はチョコ液をザックリと混ぜたり、匂いを嗅いだり、ちょっと舐めて天井に睨まれたり(ひのは既に舐めていたり)
「うん、あまい…そろそろ冷やし始めていいと思うぞ」
「私か?それとも甘いのか?」
そう言う天井の能力は温度を調節できるらしい。分子の動きを操ることが出来るのだろうか?まぁ多くは語れない。
彼女が冷やすためにボウルを持ち上げるが、服の袖が手首まで降りてきてしまう
「あ、ひの少し袖をまくりあげてくれないか?」
「スマンです。ナイフについた細かいチョコを掃除しているので手が離せないです」
「じゃあ上条………」
「さっき他の女子生徒に恫喝されて手伝わされてます。主に力仕事です」
「……吹寄、やってくれるじゃないか」
しょうがなくボウルを持ったまま両手を挙げ、重力によって二の腕辺りまで戻そうとする。一度ボウルを置こうと思わないのは自分の仕事に対する誇りだろうか。
そして事件はまさにその誇り、もしくは意地のために起こった。
「…………!?」

さて、少し前の悶々としている男子たちの話でもしようか。

どうやら扉の前で聞き耳を立てていた男子は誰が誰と協力し、どこで作っているかを土御門&青ピのコンビで割り出すことに成功したらしく話題はある一組に集まっている。
「あの三人の作るチョコか……きっととても甘いんだろうね」
「生クリームに溺れて見る夢?イヤナンデモナイ」
「いやいや、ここは何を入れたの!?ってぐらい不味いのもそそるものが……」
「ううん、トーコは料理巧いからそれは無いよ」
「く、毎日手料理を食ってる奴だから言えるセリフだよなぁ」
「あら?お兄様羨ましいんですの?男の嫉妬は何とやらと言いますよ」
「そそそ、そんなこと無いぞ!」
他校生どころか、いつのまにかブラザーまで来てたりするが……
「気にするな少年、旗立師には誰も抗えんさ……あのバカ二人以外にはな」
「そんなことはないにゃー」
「ボクたちはとっくに立てられてるんやで」
「なに!?」
「戦友(とも)フラグだけどにゃー」
「なんだ……(上条灯子唯一の汚点か?)」
「そして今一番熱いのはこの男!神裂にーやん!」
「な、なんで私なんですか!」
「なんでって、にーやんとぼけちゃダメにゃー風呂に一緒に入った仲だからにゃー」
「ナ、ナンダッテー!!!Σ(゚Д゚)」
「違います!あれは彼女がいきなり風呂場に!」
「もう一回ナンダッテー!!!Σ(゚Д゚)」
「いや、それはその!」
暴走もとい妄想する漢たちには変な連帯意識が生まれており……?
「にーちゃん、抜け駆けはダメじゃないか」
「アンタ強そうだけど……この大人数に囲まれたらな」
「まぁ口を割ってもらおうじゃないか、抵抗するなら本物の電気あんまをプレゼントしてもいいけど……」バチバチ
「え!?いや!あの!」
第二回漢達の血の婆煉蛇因魔津裏(バレンタイン祭り)の開催だろうか?
「ウオオォォォォ」
「ドリャァァァァぁぁ」
「セイヤァ!」
「トゥ!」
「ウッ、ック、甘い!あなた達が何人集まろうとも私にはウゴッ!」
「にーちゃん隙だらけだぜ!」
離そうとしている間に後ろからわき腹を蹴られたようだ。隙云々より狡いとかだと思うが。
「人のセリフを邪魔するとはインデックス、あなたという者は………私を怒らせましたね、そうですかそんなに死にたいですか、それなら聖人の力を見せてあげましょう」
「にーやん刀は…」
「土御門!元はと言えばあなたのせいでしょう!」
「そ、そんなことしたら……!」


壁が縦に裂けた。有り得ないと思うかもしれないが実際に有り得たのでしょうがない。
裂け目の向こうには刀を振り下ろした形で「やっちまったよ」的にフリーズしている聖人の姿。
事態がなんとなく分かったのは上条ぐらいだろう。
(あぁ土御門たち、神裂を怒らせたんだろうな~)
その結果がこれである。しかしまだ事件は終わっていない。
神裂がようやく再起動を終え刀をカチンと鞘に収めた瞬間、天井の頭上のボールが斬れたのである。それどこのゾ○?それとも五○衛門?並みではあるが、斬撃が飛んだのである。
そしてもちろん切れたボウルの中のチョコは全てこぼれ、天井の小さい体に降り注いだのである。
余談ではあるがこの三人、特に渡す相手もいなかったので学年全員にチョコを渡す気だった。
その量は比較的小さい天井の体をチョコ色に染めるには十分すぎる量で、
「…………………………………あ」
もう一度全ての人がフリーズする。
それと同時に天井は腰を抜かしたように床にへたり込む。ペタンという感じに。目に浮かんでいるのは涙であろうか。そしてゆっくりと口を開く。
「あ………………」
「え?」
声が小さかったため皆聞こえずに聞き返すが内心それどころではない。女性の涙とは男にとってそれほどの威力なのだ。魅力的でもあるが。
「…熱い…………」
「あー!大丈夫か天井!?良かったな!後数十センチ下だったら死んでたぞ!いやぁよかったな~」
「いいのか?……そんなことよりにーやん!早く謝ったほうがいいにゃ~!」
フォローに入る土御門の軽薄な物言いにも若干の緊張が見て取れた。
天井はキレるとヤバめなのである。そしてそういう人は泣くともっとヤバいのである。
「わ、わ、分かりました!」
そういうと聖人はチョコの魔人と化した少女の近くにより膝と手を床につき、頭を深々と下げ、
「すみませんでした!」
すると少女は
「気持ちが篭っていない」
と小さく呟いた。これは死刑宣告か!?と神裂は震えもう一度頭を下げる。「なにとぞご容赦を~」と言っているのは空耳ではないだろう。
他の男子達も少しでも一緒に騒いでいた罪を軽くしようと土下座をする。異国の少年神父でさえ、その行為の意味も分からないまま同様にしている。
それほど天井亜衣の出すオーラは危険だった。目に見えない分インフルエンザウィルスの方がましだろう。
「……まぁいいか」
そういって上条たちのもとへ戻ろうと後ろを向く。このときの男たちの顔と言ったら言葉では言い表せないほどに輝いていた。
そして天井は一度後ろを向いて、
「む………そうだ」

この瞬間、神作ひのと上条灯子の表情が凍ったのには誰も気づかなかった。
天井は目の前のそんな顔を気にもせず振り向き
「服がチョコまみれで動きにくい……お前達喰うか?」
顔には妖艶な笑みを浮かべ、そう続けたのである。
『…………………………ゴク』
その言葉に誰もが唾を飲み込んだ。ついでに彼女と同じ組だった二人は既に姿を消していた。
男たちも頭の中では(絶対ありえねぇだろ……)と理解していたのである。
しかし一人、また一人、と徐々に前に行く者に釣られぞろぞろと、結局全く動かなかったのは頭を下げ続けている聖人と言っている意味の分からなかった少年神父と既に逃げた上条を追うか悩んでいたLv5だけだった。
そしてもう一度全員が示し合わせたようなタイミングで唾を飲み、
「い………いっただっきまーす!!」
いわゆるルパンダイブをである。
その瞬間、天井の体が光り始め…………………


とある有名病院

「先生、急患です!」
「どんな感じだい?」
「患者は頭部裂傷、また全身に火傷および擦過傷!咳き込んでいることから内臓にも何かしらの異常があると思われます」
「それは…爆発にでも巻き込まれて吹き飛ばされ地面を散々滑った挙句頭から壁に激突、さらに追撃とばかりに飛んできたコンクリート塊が腹部に命中…てな目にでもあったのかな?」
「さぁ、それは……」
「まぁいいや、ボクは手術を……」
「急患です!」「大至急手術を!」「重傷を負った少年が入口に!」「救急車が十台強当院に向かっている模様です!」
「……さすがにそれはボクにもキツイかなぁ、死んだ人は専門外だからね、まぁこの金髪の子をいじってくるから他の人たちはお願いするよ」
と言い残してだんだんと血が滲んでくる担架を押しながら女医は手術室(せんじょう)へと向かっていった。
「ところで君、実際予断を許さない状況だけど何か言い残すことは有るかい?」
「………まぁこんなオチなのは分かっていたけど、ここで引くのは男じゃないにゃー、ゲフッ」


余談だが神作ひのと上条灯子が目撃した天井の表情は雪女より冷たく、なまはげより禍々しい悪戯を思いついた顔だったという。
結局急患が30人もいたのも余談である。ついでにそれを全部一人の女医が救い「久しぶりに熱くなってしまったよ」と言ったのもである。
我輩が顔の大きさの割りに大きいサングラスをした幸せそうな顔で白線をなぞる様に歩く金髪の少女や、「死ぬ、生きていけない、死ぬ……」と道端でブツブツ呟く青髪の少女を見たのなんかはもう全く関係ないだろう。


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