とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

TS建宮

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だれでも歓迎! 編集
東京西部に学園都市と呼ばれる場所がある。名前は仰々しいが、早い話教育機関の塊である。
詳しい特徴は割愛するが、名前が指すように、住んでいる人口の9割は学生だ。
故に、日が傾いている夕暮れ時は学生の帰宅ラッシュが集中する。
物語の主人公である上条当麻もそんな一学生であり、群れる群集に埋没しながら帰路に着くつもりだったのだが、
「何だかよくわからないプレッシャーを感じるような…感じないような……」
彼は軍人でもなければ格闘技の達人でもない。それでも感じとれるだけの違和感を、彼は学校を出てから背中に受け続けていた。
最初はまた御坂か、と何度か振り返るも、視界に入るのはただの見知らぬ学生ばかり。すわ何かまた厄介な事件に巻き込まれるのか、と汗を一筋たらしながら溜め息を吐き前を向く。
そして、俯きながら厄介事のエキスパートである、友人で魔術師で能力者であり、二足のわらじを苦もなく行っている土御門に連絡するかどうか真剣に考え出していたところに―――
「おいおいお兄さん。そのストレートなスキンシップは嫌いじゃないけど、それでも恥ずかしいもんは恥ずかしいのよなぁ」
ぽふっ、というか、ふにゃっというか、とにかく気づけば柔らかな感触に上条は頭から突っ込んでいた。
「うわッ!?え、あ、とても柔らか――じゃなくて、うれし――でもなくて、とにかくごめんなさい!!」
後ろに滑る勢いで後退すると、上条は自分がぶつかった人の全貌が明らかになった。
服の上からでもわかる細身の体に不釣り合いなほどぶかぶかのTシャツとジーンズの上下。そのぶかぶかなTシャツの上からでもわかるほどの双璧を携え、異常なまでの黒さをほこる髪を何房か髪の上にツンツンと立てている。意外と後ろ髪が長いからか、余った部分は下に無造作に垂らしたままだ。首から下げられたいくつかの小型扇風機が意味不明ではある。
顔つきも、どことなく引き締まっているのに対し、その目元の緩やかな印象がなんとなくミスマッチだった。
色々と奇抜な部分があるが、彼女を一言で表現するなら美女だ。そして上条にこんな知り合いは一人しかいない。
「建宮!?なんでお前が!?」
上条の目の前でニヤリと笑ったのは、現天草式教皇代理である、建宮斎子(たてみや さいし)だった。
「何でも何も、私は朝からお前さんの近くにいたのよな。気づかないなんて、あんまりじゃねえの?」
ニヤニヤと、意地が悪そうな笑顔で上条を見下ろしてくる。
「朝ぁ!?ちょっと待て!!また何か事件でも―――!!」
「まぁ落ち着け。一応往来なんだから、あんまり騒ぐのは感心しないぞ」
納得しない上条を腕を担ぐように引っ張りながら近場の喫茶店へ入って行く。その際肘にあたる柔らかな感触に、上条は頭の中に電流が流れたのを感じた。
「最初に言っとくけどな、事件とかそんなのは関係ないのよ。ついでに言うと、これはイギリス清教も関与しとらんのよな」
つまり、斎子が学園都市にいるというのは、あくまで天草式による独断ということになる。
何時の間に頼んだのか、上条が妄想の世界から帰ってきた時には、既に斎子の前にはアイスコーヒーと心太が置いてあった。はたしてこの組み合わせに魔術的な意味があるのかどうか、上条にはまったくわからない。
「というか、それならなんで意味もなく学園都市に来る必要があるんだ?しかも“必要悪の教会”が関係してないとなると、上条さんはさらに頭に疑問符が浮かび上がるのですがー?」
いまいち復帰しきれていない頭で考えたにしては、上条の言い分は最もだ。今は世界情勢が危ういバランスで成り立っている。そんな中で、目的もなく科学サイドの頂点たる学園都市に侵入するというのは、上条にはデメリットしか見つからない。なぜなら、科学サイドの情報を流すパイプは既に存在しているからである。
隠密性に特化してるとはいえ、危険を侵してまでくる意味はないのだ。
しかし―――

「いや、意味ならあるのよな、これが」
先ほどまでの気の抜けた雰囲気を消して斎子は真剣な表情で上条を見つめる。
それについついドキッとしてしまった上条だが、そればかりは仕方がない。彼も健全な男子学生なのだから。何より斎子自身、この陰陽のギャップが自身の魅力の一つであることに気づいていないから何もいえない。
「学園都市は関係ないのよ。我らが来た目的はお前さんだ」
え?俺??と、上条は内心狼狽する。
「2つの世界がぶつかり合ってはいるが、その中心はいつもお前さんだ。だから我ら天草式は、いつでも動けるようにお前さんの近くきたわけなのよな」
最近起こった事件といえば、やはり左方のテッラによる『C文書』事件だろう。
あぁもしかしてあの時五和に何かしちゃったのか、いやいや確かに透けて見えた下着は見たし替えの服がないからってブラウスだけとか危うい格好でつい谷間に目がいったりしたしパイプライン切断の術式で使うからってパンツを見たり、うわ結構やばいかも責任問題とかなっちゃうかもいやいや俺個人なら責任問題はないかでもやっぱり罰せるのか魔術世界の拷問とか怖すぎるって誰か弁護士を呼べー!!
上条が一人で悶えているのを見つめながら、斎子は内心ため息をつく。
(とまぁ意味ありげに言っても、本当の事は言えないのよなあ)
確かに上条は今2つ勢力の中心人物である。しかし、だからといって何も上条の側にずっといる意味はない。むしろ諸外国で起きた時などは、かえって動き辛くなるというデメリットを抱える。
だが、そんなものを擲ってまで学園都市に来た理由というのが―――
(女教皇が、もうちょっと素直に行動してくれれば、苦労せんのよなあ)
今天草式の人々は、ある工作にあちこちを走り回っている。ここまでくると、もはや異常といえようものだが、彼らは少しでも不器用な聖人が幸せになれるなら、いかなることでもするのである。
しかし―――
「教皇代理、変な気は起こさないでくださいね」
未だ悶える上条を、斎子が面白げに見ていると、いつからいたのかすぐ隣にウェイトレスが立っていた。
「変な気って、一体私が何を起こすってえのよ、五和?」
そう。そこには天草式の五和が、お盆を抱えながら、訝しげに斎子を見ていた。
「起こさないなら、いいんです。少しだけ滞在してわかりましたが、彼にはライバルがとても多い事がわかりました。これ以上増えられたら、困ります」
それだけ言うと、彼女は今までの表情からぐるりと変わって、溢れる笑顔を上条に向けながらお絞りをそっと手渡していた。上条は、急に現れたのが彼の絶賛悩みの種であった五和であったため、大いに慌てたものの、その笑顔な当てられたのか、なんだかだらしなく笑っていた。
そんな上条を見つめながら、斎子は思う。
(変な気なんか起こせんのよ。“今は”、な。まぁミイラ取りがミイラに、ってのは、ありきたりすぎるかもしれんのよな)
あまりに馬鹿馬鹿しくも、ありえないといいきれない自分がいることに、ついつい微笑んでしまう。それが上条の目に入り顔を真っ赤にさせた上条に五和が怒り、斎子は更に笑うのであった。





後日上条が通う学校に、三年生の転校生と、臨時の体育教師がやってくることになる。
そして、その転校生と体育教師を目の当たりにした上条が卒倒し、そこでもトラブルが起こるのだが、今は関係がない。




「学業……ですか?」
「そう、学業。女教皇はどれくらいの学を積んでるのか気になったのよ」
そう言って現天草式教皇代理―――建宮斎子(たてみや さいし)は不適に笑う。その質問を受けた人物―――女教皇こと神裂火織は、最初なぜ彼女がこんな質問をしたのか意図をはかりかねていた。
なにせ小さい頃よりやれ聖人だ、やれ教皇様だ、と崇め持ち上げられていたのだ。正直な話、彼女は学校というものには行った記憶がない。行かせてもらえなかった、と言うべきなのだが、故に、学業というか学歴というか………とにかくそういったものは一切持っていないのだ。
だが、そんなことは何より当時から女教皇の側近であった斎子が“知らないはずがない”のである。
だからわからない。最近天草式がそわそわしていると聞いたが、はたしてこの質問にそれらを暗喩する部分があるのかどうか、判断できなかった。
(そもそも私、天草式とは連絡とか接触とか全部避けてたはずなのに、普通に話しかけられてます?)
ますます混乱ばかりが増すのだが、斎子は特に気づいた様子はない。
「いや、女教皇が阿呆の子、ってわけではないのよ。我らがいる世界で、無学は罪故、誰しも研鑽しとるのはわかってますしな」
ここまで自分から説明されたら、神裂は益々わからない。とうとう頭がおかしくなったのか、と神裂が不安げな表情をし出した頃、ようやく斎子は本題を言った。
「つまり青春をしようってことなのよな」
「起と結から全く話が噛み合っていませんから!!」
「いやいや、女教皇が日頃から18歳に見えないだの、老け……だのはやっぱり同年代との交流がないからだと思うのよな。だから、ここはいっそ学生でもさせてみれば変わるんじゃないかと、我らは結論つけたわけなのよ」
「余計なお世話です!!」
あぁ天草式はもうおしまいか、と神裂が頭が頭痛な感じで落ち込んでいると、斎子は一枚の髪を神裂につきつけてきた。
「………これは?」
「転校手続きですよ。いや、学園都市ってのは本当に苦労するとこなのよ。最近なぜか理事会トップの判断が適当な時があるらしく、やっと書類を造りあげたわけなのよな」
「学園……都市………?」
「それじゃさっそく日本に行きますかぁ。あ、拒否権とかないからねえ」
ずりずりと、未だ放心している神裂の襟元を引っ付かんで、斎子は嬉々として女子寮を後にした。

「今日も不幸だ、元気に行こう」
少しでも前向きに考えようとして言った言葉が、あまりにも致命的な一言を含んでいたため、今日も上条当麻は悲しさを抱えて学校を登校するはめになった。
「む、上条じゃないか。いつにも増して不幸そうだな」
教室のドアを開けると、開口一番から人が気にしている事を仁瓶もなく突きつける神聖ロリっ子、天井亜衣がいた。
「うるせぇ神聖ロリのくせに、上条さんは変態がつかない紳士だから許してやらないこともないかもしれないけど、次あたりは青髪突きつけてやる」
(天井ー、いくらなんでもそれはないんじゃないかなぁ、って上条さんは優しく教えてあげるんだぁ)
「……定番で言えば、本音と建て前が逆になってるぞ。いや、お前の心の中の声とか聞こえないけどさ」
うわ定番かよ!?っていうか何言いたい事ベラベラ話してますか俺やっぱ馬鹿だ、っと頭を抱えながら近くの机に頭を何度も打ちつける。
ちなみに席の住人は遠巻きに彼を哀れな目で見ていた。
ついにギャグキャラ突入なのか、と絶望一色に染まっている上条を見据えながら、天井が一言洩らす。聞こえるギリギリの声で、
「あいつをけしかけたらひのをお前の家に突貫させてやる」
それを聞き取ったのか、上条の動きがぴたりと止まる。やがて、小刻みに動きだしたと思ったら―――
「天井ー!!それだけは、それだけは平にご容赦を――――!!!!」
「だぁー!!寄るな触るなすがりつくなついでに涙と鼻水は絶対に近づけるな!!」
シュール。ただただ幼女の如きルックスの天井に抱きつくようにしている上条は、警備員に殴り飛ばされとも文句は言えないだろう。
天井の必死な表情も、なんだか犯罪臭さを感じさせる。
しばらく続いた農民がお上に年貢引き下げを頼み込むかのごとくの珍騒動も、ひのが途中で木板振り上げながら突っ込んできてさらに混沌としたものの、小萌先生による可愛らしい仲裁のおかげで終結した。
落ち着いた頃に、上条はふと疑問に思うことがあった。吹寄が介入しなかったのは、単純に彼女がいなかったからだが、こと天井が関わると必ずというくらい介入してくる、愛すべき馬鹿がいなかったのだ。
ちなみに土御門は欠席が確定している。どうやら賞味期限が切れたシチューが当たったそうだ。それでも全部食べきったあいつは、賞賛すべき馬鹿である。
「なぁ天井、青髪は?」
「ん?あぁ奴なら―――」

「カミやんカミやんカミやーん!!!」
「―――今日も頭が狂っている」
短く吐き捨てた天井を恐ろしく思うも、事実だよなぁと思ってしまったことは、悪くないと思う。
ドアを軋ませる勢いで入ってきたのは上条も天井も馴染み深い友人である青髪ピアス(本名不詳)は、なぜだかひどく興奮していた。
少し気持ち悪い。
「もー、青髪ちゃんも、そんな風にしたらドアが壊れちゃいますよ!」
「先生、僕だけなんで名前とちゃうんですか?」
よくわからないやり取りをしながら席につく青髪ピアスに、上条は仕方なさそうに声をかける。
「なぁ、青髪。なんでそんなに嬉しそうなんだよ?」
「ふふふ、やっぱりカミやんも僕の新情報が気になるみたいやね」
いや、実にどうでもいいんだが、聞いてやらないと独り言をしそうだったから先に手をうっただけである。
「実は―――!!」
「青髪ちゃんは補修確定ですよー」
「小萌先生堪忍や――!!!」
話が先に進まない。
HR後にわらわらみんなが集まってくると、青髪は自慢げに話だした。
「実はね。今日転校生が来たんよ!!」
「へぇ」
「うん。それで?」
「どうでもいいんだけど」
「……だからなんなんだ」
「エンゼル様エンゼル様、今日は彼にどんなアタックをしたら……」
「みんなひどいし一人は聞いとらへんってどういうことやー!!」
どうやら青髪情報によると、新たに上級生が転校してきたそうだが、同じ学年ですらあまり興味関心が沸かないというのに、他学年ではなおさらだ。ある意味、彼らの反応は正しかった。
「もうごっつ美人やねん!!僕は一瞬で恋してしもうたんやあ!!」
みんなから白い目で見られているのに気づかず、青髪ピアスはどこまでも年上の良さを熱弁していた。
こうして、上条は苦せず転校生の存在を知ることができた。しかし、過ちとして彼は、この時『名前』を聞かなかったことが、後に後悔するはめになる。

昼休み、上条としてはこのまま何もないまま終わってくれることを切に願いながら、なぜだか最近昼食を一緒に取るようになった天井とひのに疑問を感じながらも、手作りのスキルが上がってきた弁当を机の上に乗せる。青髪は戦場へと向かったのでまだ帰ってこない。
しばらく他愛もない会話と、ひのによる電波な会話を交えつつ、昼食を食べていると、ガラッとドアを開けて、教室に訪問者がやってきた。
別段これだけなら珍しくない。他クラスの友人や、部活の先輩後輩がくるなど、よくある事だからだ。
しかし―――
「あー、この教室に上条当麻って奴はおらんかなぁ、いや、無礼なのはわかってんだけどなあ、まぁとにかくいない?」
とても変な前口上だった。
その声は、子供らしい声ではなく、どこか呑気そうな大人の女性のものだった。
こと女性関連に関しては録なことがない上条だが、むしろ教室に残っていた男子達は“女性が”“上条を”という2つのキーが揃った時点で殺気立っていた。彼らは上条の苦労を知らないのだ。知っていても変わらないだろうが。
「ん?俺か?」
考えなしに教室の入口を見た上条は、瞬間的に口に残っていた飲み物を吹き出した。
着弾地点は、天井の顔面。
「上条……お前何か私に恨みでもあるんだろう?」
「うわ違うんだ天井――!!っていうか何で!?!?」
バタバタと慌てる上条をよそに、件の人物を見つけた女性は教室に入ってきた。

「おぅおぅいたいた。なんだお前さん。“やっぱり”予想した通り『こっちサイド』でもモテモテってえのかい」
気さくそうに話かけてきた人物―――建宮斎子(inスーツ)はニヤニヤとしながら上条のそばまでやってくる。
普段ダボダボの服を着ている彼女だが、スーツまではそうはいかなかったのか、本来の、線の細いスラッとした体のラインが印象的だった。
「がほ、ごほ、なんで、えっふげふ、お前が…?」
息も絶え絶えに言ってくる上条に、斎子はいたずらが成功した子供ねように笑う。
「前に言ったよなあ?私はお前さんのすぐ側にいるって、確かにいったのよなあ?」
「はぁ!?お前だからって、えぇ!?!?」
混乱している上条をよそに、教室内はどんどん殺気に包まれていく。
誤解を完全に生んでいるが、ここでいう私は、天草式全部を指す。もちろん斎子は誤解するだろうことは、わかっていて言ったのだが。
上条は、気づかない。
「あぁそうだ。まだ紹介してない人がおるのよ」
嫌な汗が背中を伝うが、上条は割り込めない。どちらにしろ状況がわかっていないのだ。身勝手に動いたらどうなるかわかったものじゃない。
斎子の言葉に反応したのか、教室のドアが再度開く。
そして入ってきた人物が―――
『『うおおおぉぉぉ!!!』』
と、教室の男子が興奮し、一部の女子も、なぜだか頬を赤く染めた。
「な、な、な、ななな、なん、な、なんで………」
そこにいたのは、服の下から制服に反逆するか如きの二つの宝を携え、髪は後ろ高くくくったポニーテール。その整った顔も、凛々しい瞳がさらに際立たせる。若干頬が赤いのは恥ずかしいからだろう。
そこには、世界でも二十人といないまさしく『聖人』神裂火織がいた。
「犯罪だろ――――!!!!」
直後、『聖人』の素晴らしき力をもって、上条は宙に浮くという体験をしたのち、意識を手放した。


「う、あ―――?」
ぼーっとする意識の中、頭の上に何か重さを感じるものがあった。
(なんか暖かい……)
うつらうつらしていた意識だが、一度意識してしまうと、覚醒へと導くのかそのまま目を開ける。最初に見えた物は、天井。あまいではなく、てんじょうである。
そして、誰かの手だった。
「お。起きたみたいだなあ。どうだい?気分はどんなもんなのよ?」
そこでその手が、斎子のものであることにようやく気づく。
「腹が痛いんですが…」
「そりゃ物理的に体が浮くほどの衝撃を受けたんだあ、仕方のないことなのよな」
若干同情が混じった声だが、自業自得なのでそれ以上言わない。ただ頭を撫でながら、優しい表情の斎子は、とても“聖母”という表現が似合っていた。
「あう……えと、その……」
カーテン越しにこちらを覗き込んでくるのは神裂。どうやら人を傷つけるのが何より嫌いな彼女にとって、いくら上条が悪くても、やはり気落ちしてしまうものがあるのか、落ち込んでいる。
ここで上条は、自分が保健室で寝ていることに気がついた。自業自得とはいえ、恐らく運んだのはこの目の前にいる斎子であろうことは容易に想像がついた。なにせ両手剣であるフランベルジェを軽々振り回すのだ。人一人くらい容易いだろう。
「建宮が運んでくれたんだろ?すまん。助かった」
「ん?ははは、気にするなってえの。まぁ私も少し悪ふざけが過ぎたかもしれないから、おあいこでどうよ?」
「そ、そもそも上条当麻!貴方があんなこと言わなければよかったのですからね!!」
思い出したのか、恥ずかしそうにしながらも、ちょっと落ち込んでいる。それに気づいたのか、上条は内心自分を責める。
いくらなんでも、姿をみた途端に犯罪だ、などと言われたら、誰しも傷つくというものだ。

「ごめん神裂。いくらなんでもあれはひどかった」
素直に謝られて、神裂自身やぶさかではないが、急に言われてしまい、なんだかひどく内心焦ってしまった。
その二人のやり取りを、斎子は微笑ましげに見ていた。
やがて、チャイムが聞こえたことで、未だに学校が終わってないことを思い出した。
「やばっ!!今の五限?まずいなぁ。次の数学で上条さん当てられるの確定してるのに、何にもやってないのでした!!」
誰にともなく解説口調の上条を、斎子は仁瓶もなくベッドに押し戻す。
「がはっ。ちょ、建宮さん?これは一体どういうことでせうか?」
混乱する上条をよそに、斎子はただただ笑う。
「安心しな。私が説明しといたから、お前さんは好きなだけ休んでいけってことなのよ」
そういうと、斎子と神裂は立ち上がる。
「私は授業があるので戻りますが、貴方はゆっくり休んでいてください」
「一応私も教師なんでなあ、失礼させてもらうのよな」
「ちょ、だからちょっとま―――」
「なんだお前さん。あんまり我が儘言って、お姉さん達を困らせちゃいけないな」
そういいながら、再び上条の近くまで行くと、斎子は上条の右手と頭を抑えつけ―――
ちゅ
「なー!なー!なぁ――――!!!!」
「ほら、保健室では静かにしなきゃいけんのよ」
真っ赤になった上条を枕に押し込む。そのまま踵を返すと、同じく顔を真っ赤にした神裂がいた。
「あ、ああああ、貴女一体何を―――!!!」
動揺しまくりの神裂を押し出すようにしながら、苦笑いのまま保健室を後にする。
斎子自身、なぜあの場であのようなことをしたのかは理解できない。
ただ斎子と神裂が部屋を出ようとしたときの、上条の寂しそうな表情に釣られてしまったのかもしれない。

後日談。保健室の近くで監視していた透視能力者(in上条クラスメイト)の密告により本部が行動を起こす。
後、上条当麻がボロボロになって保健室のベッド下に転がっていたのを、保健医に発見されたことを明記しておく。


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