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サンデー毎日 07年1月7~14日号 33~35ページ

「私が札束を森伊蔵の箱に詰めました」 石原ファミリー「裏献金2000万円疑惑」の核心


糸山英太郎元経理秘書「証言テープ」の破壊力

「森伊蔵」と「ウラご祝儀」――。本誌が連続追求してきた「石原ファミリー」を巡る二つの裏献金疑惑。「平成の政商」の異名を取る水谷功・水谷建設元会長(61)が登場するだけに、コトを「丸く」収めようとする裏社会のうごめきも活発だ。そんな折、疑惑の核心を知るキーパーソンが語った「決定的証言」を入手した。


  案の定と言うべきか。
  暴力団、ブラックジャーナリスト、政界フィクサー・・・・・・。そんな面々が群がり始めた。考えれば無理もない。舞台で踊っている主役が、3選へ向けて出馬を表明したばかりの石原慎太郎・東京都知事(74)とその三男・宏高衆院議員(42)、「物言う株主」として著名な糸山英太郎元衆院議員(64)、そして「平成の政商」なのだから。

  だが、彼らが食指を動かすということは、裏を返せば、関係者がそれだけ事態を「深刻」に受け止めている証左ともいえる。

  すべての発端は、水谷元会長の知人の女性社長による糸山氏を相手取った500万円の返還訴訟の動きが表面化したことだ。

  慎太郎都知事の周辺関係者によると、女性社長の民事訴訟を「抑える」代りに、元金の500万円プラス「数百万円の手数料」を都知事サイドに要求しようという働きかけがあった。これは関係者が「カネの話には応じない」と拒否したため、「未遂」に終わったという。また、ブラックジャーナリストとして知られるご仁は疑惑発覚前、「ある新聞記者に関連資料を預けた」と言いながら、高級料亭「吉兆」での会食の写真を法外な値段でマスコミ各社に売りつけようとした、といわれる。

  最近では、慎太郎都知事や大物衆院議員と親交があるとされる「政界フィクサー」から疑惑にかかわった関係者に対し、「会いたい」という連絡があったという。都知事や糸山氏の「傷」が深くならないうちに、何とか「手打ち」にしようという動きとみられる。
「裏」といえば、ブラックな人たちばかりではない。法人税法違反の罪に問われた水谷元会長の弁護に当たっているのは、東京地検特捜部長や福岡、名古屋両高検検事長の弁護士だが、その周辺関係者が水谷元会長に対し、「(本誌などのマスコミに)ぺらぺらしゃべったから(脱税事件の)執行猶予が取れなくなった」などと、女性社長の民事訴訟に協力しないように働きかけているとされる。

  さらに、である。水谷建設関係者が明かす。
「裏献金疑惑にかかわった人物に対し、『女性社長が訴訟を起こせば、お前を逮捕するために警察が動く』という出所不明の情報が入ったようだ。この人物は『訴訟に協力すると、何か事件をでっち上げられて逮捕されるのではないか』とおびえているそうだ」

  警察当局が、よもや都知事のために「政治的」に動くとは思えないが、水面下では、こんな魑魅魍魎の情報が流れているのは事実である。

「何を聞かれてもバックれる」



  疑惑を追及する勢力と、それを沈静化させようとする勢力――。欲と打算、当局に対する恐れが、500万円返還訴訟を間にはさみ、激しく綱引きを演じているのが現状なのだ。

  そんな「周辺」の思惑にとらわれずに今回の疑惑を素直に見れば、構図ははっきりしている。上のチャート図をご覧いただきたい。

  簡単に説明すると、今回の裏献金疑惑はカネの流れから見て二つに分けられる。

  一つは、例の高級焼酎「森伊蔵」である。
  女性社長と埼玉県の石材会社社長が提供したとされる各500万円に、糸山氏が自身で出したとされる1000万円を加えた計2000万円が、昨年9月14日、糸山氏の事務所内で「森伊蔵」の箱に詰められたうえ、高級料亭「吉兆」での会食時に、慎太郎都知事や宏高氏に渡されたのではないか――というものだ。

  もう一つは、昨年8月22日、宏高氏の当選前に都内のホテルで開かれた拡大選対会議の際、水谷元会長と女性社長が、計55万円の「ウラご祝儀」を宏高氏の島田次郎第一秘書に渡した、と証言している問題だ。

  後者の「ウラご祝儀」をめぐっては、民主党議員の一部が関心を示しているというが、やはり本筋は前者、女性社長が出した500万円が、糸山氏の秘書室長だったA氏から経理担当者だったB氏に本当に渡ったかどうか。そして、それが糸山氏本人の手で慎太郎都知事や宏高氏に渡されたのかどうか――という点だ。

  先週号では、「(500万円が入った)紙袋を女性社長から受け取った」「その紙袋は経理担当秘書(当時)に渡した」というA氏の証言をお伝えした。

  では、A氏が「渡した」と名指しした相手である元経理担当秘書のB氏は、現金授受を認めるのだろうか。

  本誌は、B氏が疑惑発覚前、周辺関係者に語った「証言」内容の詳細を入手した。その記録はテープにも残され、某所で厳重に保管されているという。仮に周辺関係者をC氏とし、その「証言」を再現してみよう(カッコ内は編集部注)。

× × × ×

C氏
(女性社長が)500万円を糸山事務所に届けたのは(05年9月14日午後)3時半か4時ごろだったね。
B氏
はい。
A氏はカネを受け取った時、「私が森伊蔵の箱に500万円を入れる」と言っていたようだが、あなたの話では違う・・・・・・。
はい、そう。
A氏は「都知事は水谷建設と食事をした記憶もないし、例のおカネを水谷からもらったという認識はないので、もしそれ(現金授受)が水谷建設の調べの中で出てきたとしても、何の関係もないと主張する、と(都知事の)特別秘書は言っている」と話している。さらに「特別秘書は『東京地検から何を聞かれてもバックれます』と言っている」とも話しているが。
はい。

――やや強引ではあるが、B氏の受け答えは「肯定」と解釈できる。やがて、会話は佳境に入る。
(現金を)詰めたのは(糸山氏の)側近なのか、あなたなのか。
(側近だけでなく)ボクも詰めました。
糸山氏はその時、1000万円を出したか。
出しました。
ではその時、2000万円は(森伊蔵の箱に)詰められて行ってるのか。
はい。

× × × ×

  お分かりだろう。会話の中でB氏は、A氏の証言通り、現金500万円の入った紙袋をA氏から受け取ったことを前提に会話を進めている。

コピー用紙を短冊形に切って


  それだけではない。B氏はC氏に対し、別の機会に次のようなことまで打ち明けているというのだ。
「たとえ銀行の帯があっても、それを信じないのが糸山事務所のしきたりなんです。だから、帯を破って銀行員みたいに札を広げるようにして枚数を数え、確認が終わると、A4判のコピー用紙を切って新たに帯を作り、再び100万円ずつの束を作ったうえで、森伊蔵(720㍉㍑)の空き箱に詰めました」
「ボクは糸山氏側近と一緒に、埼玉県の石材会社社長と女性社長から受け取った計1000万円分、100万円の束10個を数えたのですが、ボクのほうが数えるのが遅く、彼が7束数えたのに、3束しか数えられませんでした」
「9月14日午前、まず石材会社社長から500万円が届きました。女性社長の500万円がそれよりも遅れたので、糸山事務所で『遅い、遅い』と騒ぎになったのを覚えています」

  女性社長分の到着が遅れたのはなぜか。当の女性社長が言う。
「当日、一緒に私の会社にいて500万円を紙袋に入れるのを見ていた水谷元会長が、『うちは東京都の仕事なんていらんわ。なんでワシが(吉兆での会食に)行く必要があるんや』と言ったので、ちょっとした口げんかになったんです」

  2000万円の裏献金疑惑のうち、少なくとも1000万円分を「森伊蔵」の箱に詰めた事を明確に認めたB氏。A4判のコピー用紙を短冊形に切り、札束を数え、新しく帯を作って、また札束を包んだ、というエピソードにいたっては、実際に携わった当事者でなければ分からない「秘密の暴露」だろう。

  では、これらは果たして事実なのか。
  B氏はその後、糸山氏の経理担当秘書を辞め、現在は糸山氏が経営する新日本観光グループの関連会社に勤務している。

  本誌は茨城県内にあるB氏の勤務先を訪ね、文書で取材を申し込む一方、携帯電話やメールに再三連絡を入れたが、B氏からの応答はなかった。

  一方、今回判明したB氏の「証言」が事実だとすれば、これまで「ホンモノ(の森伊蔵)を慎太郎と宏高に1本ずつ渡した」としてきた糸山氏本人の主張も大きく揺らぐことになる。そこで糸山氏にも取材を申し込んだが、締め切りまでに回答はなかった。

  都知事は、詳細については「糸山さんに聞いてくださいよ」(12月15日の記者会見)と逃げるばかりだ。だが、前述のB氏の「証言」内容が事実であるとすれば、少なくとも政治資金規制法違反の疑いが濃厚である。この疑惑は、決して「丸く」収めさせてはならない。

本誌・青木英一/日下部聡