石原都知事 公費私的流用問題

サンデー毎日 06.12.31

最終更新:

ikarino_tomin

- view
管理者のみ編集可

石原ファミリーへの新たな現金"ウラご祝儀"を暴露

「500万円を出したのも選挙応援も、あの女の言う通りや」


本誌が先週号でお伝えした「石原ファミリー」をめぐる現金授受疑惑は、燎原の火のごとく広がっている。石原慎太郎都知事(74)がダンマリを決め込む中、三男・石原宏高衆院議員(42)に新たな「ウラご祝儀」問題が発覚。現金の送り主――それは「平成の政商」水谷建設の水谷功元会長(61)だった。

  まずは、ファミリーをめぐる高級焼酎「森伊蔵」疑惑を振り返っておこう。

  前回衆院選から3日後の昨年9月14日夜。東京銀座の高級料亭「吉兆」に、5人の男が集まった。主賓は、初当選したばかりの宏高氏。最初に到着したのは水谷元会長で、やがて慎太郎都知事、糸山英太郎元衆院議員と埼玉県の石材会社社長、宏高氏が姿を見せた。
「5人は2階の座敷で芸者を呼んで会食し、水谷元会長の部下や知人の女性社長、糸山氏の秘書らは1階で弁当を食べた。弁当の費用約15万円は女性社長が支払いました」(出席者の一人)

  関係者によると、会食直前、糸山氏と慎太郎都知事は短時間、2人だけになり、間もなく3人が同席する形だったという。水谷元会長は前日の13日、胆のう治療のために入っていた病院を退院したばかり。
「腹部に巻いたさらしに血がにじんでいたようで、体調が悪そうだった。会長に誘った女性社長の顔を立てるために参加したようです」(別の出席者)

  座の話題といえば、慎太郎都知事が水谷元会長に、
「『つくばエクスプレス』が開通したから、土地の値段が上がるね」などと話しかけ、糸山氏と埼玉県の石材会社社長は「石の話をしていた」(同)という。女性社長が用意した輪島塗の小判型の特性お盆(3万5000円相当)を贈られた慎太郎都知事は、
「芸者さんにもらった千社札をご機嫌の様子で背広の胸に貼り付け、見送りの水谷元会長らに敬礼をして帰っていった」(出席者)

  さて、問題の「森伊蔵」疑惑発覚の発端は、女性社長が本誌の取材などに、
「会食の当日、新札の500万円を入れた紙袋を糸山氏の事務所で秘書室長(当時)のA氏に渡した」

  と証言した事にある。

  A氏は別の経理担当秘書(当時)に紙袋を渡したという。女性社長が話す。
「A氏らから後日聞いたところ、500万円は経理担当秘書が新札の帯を破いて1枚ずつ数え直し、石材業者社長が用意したという500万円と合わせた計1000万円を、(個人筆頭株主である)日本航空から糸山氏に送られてきた国際線限定販売の『森伊蔵』(720㍉㍑)の箱に詰めた、というものでした」
「1000万円のうち、1000万円の束八つは箱の中に縦に入れて、その上から残りの2束を、横にアーチ状に曲げて詰めたといいます。そうしないと1000万円は、箱に入りきらないからです」

  さらに「糸山氏は会食の前に、『宏高氏の当選祝いのために2000万円を用意する』と周辺に話していたから、糸山氏自身が不足分の1000万円を出し、同じようにして別の空き箱に入れさせた」(関係者)という情報もある。

  計2000万円を詰めた疑いのある2箱の「森伊蔵」。それは糸山氏の関係者の手で「吉兆」まで運ばれ、会食の席で、
「慎太郎と宏高に1本ずつ渡した」(糸山氏)

  一見、つじつまが合うが、最も重要な点が、関係者の間で決定的に食い違う。

  女性社長側が「森伊蔵」の中身は「現金」だと訴えるのに対し、糸山氏側は「ホンモノ(の焼酎)」と主張しているのだ。真実は、どこにあるのか――。

  都心のビルの一室。女性社長から「500万円入りの紙袋を渡した」と名指しされたロマンスグレーのA氏が、穏やかな口調で語る。
「(9月14日に)糸山事務所で彼女から紙袋を受け取ったのは間違いない」

  A氏によると、渡された紙袋は、女性社長の言う通り、確かに経理担当秘書に手渡した。
「『秘書室長はカネに触らない』のが糸山事務所のしきたりなので、中身については確認しなかった」

  では、経理担当秘書による「1000万円の詰め替え」を後日教えられたという女性社長の証言や、糸山氏から「2000万円を用意する」と聞かされた、という点についてはどうか。
「それらが事実かどうかも含めて、女性社長が(近く糸山氏を相手取って)起こす500万円の返金訴訟に提出する私の陳述書にありますから・・・・・・」

選対会議で"消えた"50万円

  詳細になると口ごもるA氏だが、かつて仕えた糸山氏に対する憤りは収まらないようだ。
「まるで私が500万円を着服したうえに、右翼団体と組んで糸山氏を恐喝し、カネを脅し取ろうとしたかのような発言を(本誌の取材に)していますが、事実無根。返金訴訟では女性社長の側に立って法廷で証言する考えもあります」
「もし経理担当秘書が、私から『紙袋は受け取っていない』と主張するようなら、見に覚えのない汚名を着せられるわけいにはいかない。法廷で対決することになるでしょう」

  糸山氏サイドとの「決別宣言」である。

  そうした中、この2000万円の「森伊蔵」疑惑とは別に、宏高氏にからむ新たな疑惑が浮上した。

  水谷元会長からの「ウラご祝儀」の授受である。
「吉兆」での会食の約3週間前――。東京・品川の「ホテルパシフィック東京」で昨年8月22日、衆院選の公示を控えた宏高氏の「拡大選対会議」が開かれ、約800人の支持者が詰めかけた。女性社長が明かす。
「私はこの会議に、水谷元会長や私の会社の女性社員らと参加したのです」

  水谷建設は「本社や子会社、取引先の社員ら数十人の動員をかけていた」(関係者)が、それだけなら小泉チルドレンの選挙応援というだけで、とりたてて珍しいことではない。

  問題はその先だ。

  水谷元会長の一行を会場で迎えたのが、糸山氏の秘書室長だった前出のA氏。A氏はすぐに、宏高氏の島田次郎第一秘書を呼んだという。女性社長がその時の状況を暴露する。
「その時、『石原ひろたか事務所事務局長』だった島田さんと名刺交換し、社名を書いた5万円入りの祝儀袋を、女性社員が島田さんに渡しました。水谷元会長も、表に何も書いていない祝儀袋に50万円を入れて、やはり島田さんに手渡した。その際、『領収書は、いかがしましょうか』と島田さんに聞かれたので、『後日郵送してください』と答えたのを覚えています。元会長も『後でエエわ』と返事をしていました」

  だが、領収書が送られてくることはなかった。

  2人で現金55万円――。

  女性社長が証言した宏高氏側への「ご祝儀」は、吉兆での2000万円疑惑と比べれば、金額は少ない。とはいえ、宏高氏の資金管理団体など関連する政治団体の政治資金収支報告書には、該当する記載は見当たらない。現金授受が事実とすれば、結果的に「ウラ」に回ったことになる。コトは衆院議員の法律違反の有無にかかわるだけに重大だ。

「島田秘書は年内に辞めます」

  本誌は女性社長の証言を裏付けるため、法人税法違反(脱税)事件の初公判(12月8日)で起訴事実を認めたばかりの水谷元会長を12月14日夜、電話で直撃した。元会長は、低く野太い声でこう話した。

――宏高氏に渡した50万円について聞きたいのですが。
「ボクは保釈中の身ですから・・・・・・。『サンデー毎日』さんもデカデカと(一連の疑惑を)書いていますが、勘弁してください」

――糸山氏と埼玉県の石材会社社長が吉兆で『石について話していた』ことなどは記憶にありますか。
「(そんな会話を聞いたことが)『あったかな』という(記憶)だけで、はっきりとは覚えていないんです・・・・・・。そんなところです」
「政商」は言葉少なに語ったが、関係者によると、水谷元会長は、
「(あの女の)言う通りや」

  と、女性社長が500万円を宏高氏の当選祝い名目で出したことや、選挙応援で50万円のご祝儀を渡したことを"確認"している。また、元会長は宏高氏のために子会社や取引先の社員らを動員し、選挙運動に協力した事も"認識"しているという。

  一方で、糸山氏とは昨年8月に共通の趣味であるカジノを通じて知り合っていたにもかかわらず、糸山氏が疑惑発覚直後に、「吉兆(での会食)が初対面」と話しているのを伝え聞き、
「(糸山氏は)デタラメばかり、言うとるな」

  と話しているという。ご不満の様子なのだ。

  では、「ウラご祝儀」を受け取ったと指摘された宏高氏はどう答えるのか。
「島田に確認したところ、『水谷元会長や女性社長から(ご祝儀は)受け取っていない』ということです」

  と、現金の授受自体を否定。そのうえで、
「元会長らが選対会議に出席したかどうかについても、当時の芳名帳を捨ててしまったので確認できませんし、元会長や女性社長から『領収書がほしい』『(ご祝儀を)返してくれ』という直接のアプローチは一切ありませんでした」

  と説明。また、こうも言う。
「島田は(宏高氏の地元・東京都)品川区長選などが終わった今年10月8日付けで、秘書の辞表を提出しています。理由は『一身上の都合』。私としては、考え直してほしいと思って引き留めていたのですが、本人の意志が固いため、年内いっぱいで辞めることになりました。時期が時期ですから勘ぐられるかもしれませんが、辞職と今回のこと(ウラご祝儀疑惑)とは、まったく関係ありません」

  依然、その真相が闇に包まれた2000万円の「森伊蔵」疑惑に加え、新たに発覚した宏高氏側への55万円の「ウラご祝儀」問題。

  そして、疑惑の渦中にいる秘書の突然の辞職――。

  石原ファミリーをめぐる金銭スキャンダルは、どこまで拡大するのだろうか。

  本誌・青木英一/日下部聡
目安箱バナー