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夏休み、俺の隣の家に可愛い女の子が引っ越してきた。
それで家が隣ってこともあって一緒に帰ったりしてるんだけど……
女「あはは、男君可愛いね~!ネコの鳴き声で怖くて眠れなくなるなんて」
男「ちがっ、ホラー映画見た後だったし、暗い部屋で一人だったからビックリして……」
女「でも、ネコだって普通分かるよ?男君面白いなぁ」
男「おい、こんな事人に言うなよ?!」
女「言わないよぉ!ボクと男君だけの秘密だねッ!ふふ」
男「う、うん……」
どうやら俺はこのボクっ子に好かれているらしい。
お互いに口に出す事はしないが、ただのお隣さん、友達以上の関係になりつつあるのは確かだ。
女「だってボク”だけに”話してくれたんだもんね!」
男「あ、ああ……」
女「ところでさ……」
男「何?」
女「昨日の放課後、一緒に居た子、誰」
男「え?」
女「一緒に居た、女の子。……誰?」
こいつは時々こんな風に嫉妬深くなるんだよなぁ。てかまだ告白とかもしてないんですけど。
まあ女の子ってのはそういうものなのかも知れない。
男「昨日一緒に居た、ってショートの子?」
女「そう」
男「ああ、委員長だよ。いい加減覚えろよな~」
女「仲、いいの?」
男「ん~、まあね」
女「ボクより?」
男「いやー、幼馴染みたいなもんだし……」
女「ボクより、あの女の方がいいのって聞いてるの!」
男「は、はぁ?そんな訳……」
女「好きなの」
男「え?」
女「好きなの。男君」
男「え、俺を?」
女「そう。でもね、男君はボクより他の子が好き?」
男「いや……女が、好きだ」
前から言おうと思って言えなかった言葉。初めて確認しあう、想い。
女はずっと俺の事を思っててくれたんだ。取り乱すほどに。
それだけだ。こうして気持ちを伝えあえば、女も冷静になってくれる。

女「嬉しい」
満面の笑みだった。見てる俺も思わず微笑む。
男「ああ」
女「でもね―――」
女「ボクが好きなのに、他の子と仲良くしてるのって、酷いよね」
俯いて声のトーンを下げる女。
男「いや、あの時はクラスの仕事で……」
女「嫌」
男「え?」
女「イヤ、嫌、厭……男君が、他の女の子と……!」
男「分かった分かった、必要以上に仲良くならなきゃ良いんだろ?」
女「うん」
顔を上げてにこっと笑う女。そういえばこいつもモテるのに男子とはほとんど喋らないもんな。
やっぱり想い合う同士っていうのはお互いだけを見てるべきなのかもな。

男「分かったよ。でも、俺が好きなのは本当にお前だけだから。信じろ」
女「うん……」
男「委員長だって、別に好きで一緒にいるわけじゃないんだからな。仕事だったんだよ」
女「うん……じゃあ、もうあんなふうに笑ったり、しないでね」
男「……え?」
女「笑ってたじゃない、楽しそうに。二人っきりの教室で。あ、ボクが居たから3人だね。あはははははは」
男「待てよ、あの時お前居なかったじゃないか……ッ!」

そうだ。あの時教室には俺と委員長しか居なかった。何で女が俺と委員長が一緒に居たこと、委員長の冗談に俺が笑ったことを知ってるんだ?!

女「男君が他の子と仲良くしてると、ボク、妬いちゃうな~」
いつもの柔らかく悪戯っぽい笑顔で俺の顔を覗き込む女。

女「やきもち焼いて、委員長の事、
                      消 し ち ゃ う か も よ ?
                                          あはははははは」

男「わ、分かったから、分かってるから……」
思わず後ずさりする俺。
女「じゃあ、また明日ね」
気付けば俺の家の前。女は隣の家に姿を消した。
男「ふー、女の子って結構怖いのな……俺も家入ろっと」
向きを変えたその時

女「恋人なんだよね?ボクたち」
男「うわ!女!お前さっき家の中に……」
女「恋人だから、明日から男君のお弁当も作ってあげるね。うふふふふ」

俺は挨拶もそこそこに家に駆け込んだ。

次の日。
朝迎えに来た女はいつも通り可愛らしい笑顔だった。
変わったことは、やたらと手を繋ぎたがったり、「恋人らしく」したがる事だった。
俺は未だに「恋人が出来た」という実感が持てず、何だかボーッとしていた。夢のよう、とでも言うか。

昼休みになった。
女「男君、お弁当持って来ちゃったの?」
男「あ、忘れてた。ごめんなー!」
女「誰が、作ったの」
男「母さんだけど」
女「お母さんの手作り弁当と、ボクの手作り弁当……どっちにするの?」
男「え、えっと……」
女「捨ててよ、それ」
声のトーンが落ちて、目に怪しい粘着質な光が宿る女。
昨日と一緒だ。昨日の、あの顔だ!気のせいなんかじゃなかったんだ。
男「え、でも……」
女「ボクのお弁当、食べないの?」
男「た、食べる!食べるって!」
女「じゃあお母さんのお弁当、要らないよね?捨ててきて?」
男「そ、その……両方食べるから!な?食べ物粗末にしちゃダメだし!」

女「そっか、男の子だから食欲旺盛だもんね!」
そう言って微笑む女は天使のような無垢な笑顔だった。

男「いただきま……」
バシッ、カターン
食べようと箸をのばした瞬間、女が俺の弁当を手で払いのけた。
男「何するんだよ!……ッ」
声を荒げる俺の目の前に、女がもう一つの弁当を突き出す。
女「どうして、ボクのじゃなくてお母さんのお弁当を先に食べるのかなぁ?」

結局俺は散らばった弁当を掃除する暇も、騒ぎ出すクラスメートに弁解する暇も与えられず弁当を食べさせられた。
でもとうとう耐え切れず、クラスの視線が痛いと文句を言った。
女「冷やかされたって気にしない気にしない!」
男「でもなお前―――」
女「男君は、ボクの事が嫌い?」
男「いや、好きだよ」
そういう俺の声は酷く虚ろに響いた。

女「だったら、周りの目なんてどうだって良いでしょ?ね!」
天使と悪魔が入れ替わる。クラクラと眩暈がして、俺は椅子から崩れ落ちた。


――――――……くん。男君。男君男君男君男君男君男君男君男君……………

男「ぅ、ん……?」
目を開けると視界いっぱいに女の顔。
女「男君!良かった……急に気絶しちゃうから、ボク……」
涙を瞳いっぱいに溜めて安堵する女は本当に地上に舞い降りた天使のようだった。
男「お、俺は……?」
手のひらにはご飯粒。それで俺は全てを思い出した。
床に落ちた母さんの弁当の上にまともに落ちたらしい。服が汚れてしまった。
女「大丈夫?男君……良かった、気がついて……」
俺を抱き締めて泣き出す女。心配かけてしまったようだ。
何だか口の中がしょっぱい。鼻にツンと鉄のような匂い。倒れた時口の中でもぶつけて切ったかな。

その日の放課後。
男「ごめんな、今日いきなり倒れちゃって。貧血かな」
そうだ。貧血に決まってる。朝ご飯ちゃんと食べてなかったし。そうに決まってる。

女「良かった。血をあげて正解だったね!」

男「え……?」
体が固まる。今何て言った?
女「あのね、男君真っ青だったからボク、こうやって手首を切って……」
ポケットからカッターナイフを取りだして手首の上で引く真似をする。
既にその細い手首には一筋の紅い傷がついていた。


女「それで、その血を男君の口に入れたの。そしたら目が覚めたんだよ!」
誉めて褒めて、と言いたそうな可愛らしい顔。
でも俺は気付いていた。あともう一息で姿を現しそうな狂気に。
女「皆びっくりしてたけど、男君が貧血だってボクはちゃんと分かったんだから!偉いでしょ?」

吐き気がする。あの時の味と鉄っぽい匂いは血だったのか。
思わず背を向けて口を押さえる。
ところが目の前には女が立って、首をちょこんとかしげていた。
女「男君、顔色悪いよー?そうだ、貧血だね?ちょっと待ってて、ボクが良くしてあげる!」
男「や、やめ、ろ……」
カッターナイフ。女の細い手首をすべる刃。赤い血。血。血。血血血血血血血血血血血血血血血……

女「さあどうぞ、男君」
さあさあさあさあさあどうぞどうぞどうぞどうぞどうぞ男君男君男君男君男君……

男「うわぁぁぁぁああ!!」
俺は走って逃げ出した。手首を真っ赤に染めた女が笑いながら追いかけてくる。
女「男君、貧血で走ったら危ないよ~!ボクの血、分けてあげるから!うふふふ……」
男「やめろっ!来るなよ!」
女「何で?男君強がりはダメだよ~?あははははは、うふふふふふ……」


取り敢えずエイズとか夢オチとか、あと血を飲んでシュヴァリエになるとか言う展開はやめておこう。

男「やめろ、来るなよ!血なんか要らないからっ!」
女「何で?大丈夫だよ。ボク病気とか持ってないから……ね?」
男「厭だ、来るなぁぁあ!」
気付けば俺は目を瞑って走っていた。足元の空き缶につまづく。
女が追いついて、血まみれの手で襟首を掴む。

女「ほら、意地張らないで、ボクと男君は、恋人、でしょ?」

口の中に広がる味。
女「ボクの味だよ、男君!これで貧血なんか治っちゃうよ!うふ、ふふふふふ」

俺は女を突き飛ばして逃げた。
シャツに血がついたが構ってなどいられない。
いつの間にか知らない道にきていたが、とにかく走った。
走って、走って、どうにかして家に帰り着いた。


↑の別エンド

男「はっ、はっ、はっ!」
女「男くーん! 待ってよお!」
 息が切れる。足がもつれそうになる。なんでこんな時に限って誰も周りにいないんだ!?
男「もうっ、勘弁してくれっ……!」
 …………。
男「?」
 声と足音が、しなくなった。
 振り返ると、女が、地面に血だまりを作って倒れこんでいる!
男「お、女!?」
 そりゃ、手首から血をだくだく流しながら全速力で走れば倒れて当然だ。
男「大丈夫か……! っ……」
 駆け寄ろうとして、一瞬躊躇してしまう。馬鹿か僕は! 人の命がかかってるんだぞ!
男「おいっ!」
 肩をゆすろうと手をのばして――ガシッ!
 ――腕を、万力のような力で掴まれる。
女「心配してくれたんだ? 嬉しい♪」
 女は、顔を自分の血にぬらしたまま、にっこりと笑った。




家に着いてすぐに俺は、普段ならしないうがいを丹念にした。
それから自分の部屋に入る。やっと一息。
母さんの呼ぶ声に下の階に降りてみると、「女ちゃんよ」。
母「早く出てあげなさい。待たせてちゃダメよ」

しぶしぶ外に出る。女はさっとドアの前に移動した。
俺「何、何か用?」
そんな俺に優しい笑顔で話しかける女。
女「明日は、お弁当、持ってこないでね?二人分食べたいなら、ボクが作るからさ?」
俺「わ、分かったよ」
女「それから、これっ!ジャーン!」
それは苺ジャムのビンだった。
男「手作りか?」
女「当たり前じゃん!真心込めて作ったよ~!」
男「サンキュ。もう用は無いか?」
女「うん。じゃ、また明日ねー!」
男「おう、じゃ」
女はドアの前から離れる。俺はそのドアを開け、家の中に入る。
ドアを閉めようとしたとき、女が隙間から顔を覗かせて言った。
女「今日は、追いかけてごめんね?もっと別の方法があったのに、ね?」




次の日。
女「ジャム、食べてくれた?」
男「ああ。今朝皆でパンにつけて。美味かったぜ」
女「ホントは男君だけに食べて欲しかったんだけどなぁ?ま、いいか」
男「だってジャムだよ?普通皆で食べるって」
女「じゃー、今度はクッキーでも焼こうかな?」
男「楽しみにしてるわ」

女のくれた苺ジャム、俺は普通に美味いと思った。
でも鋭い母さんは味の異変に気付いていた。
母「ねえ、これ昨日貰ったのよね?それからすぐ冷蔵庫に入れた?」
男「そうだけど、傷んでる?」
母「う~ん、分かんないけど、ちょっと変な感じだよ。微妙に鉄っぽいって言うか……まあ傷んでるわけでも無さそうだし、気のせいかもね」
男「鉄、っぽい……?」
母「別に大丈夫よ。不味い訳でもないし。何か違うなって思っただけ」



女「男君、どうしたのボーっとして」
男「な、何でもないよ。それより女、何かお前の方が貧血に見えるぞ?」
女「あはは、ボクはいいの。これで男君と男君の家族皆、今日は貧血になんかならないね!」
男「なあ女、あのジャムに、何入れた?」
女「別に何も?あ、お砂糖とか」
男「とか、何だよ?!」
女「どうしたの男君、変だよ?そんな怖い顔しないで!」
男「答えろ!ジャムに何入れたんだよ!」
女「………」
俺は女の手首を乱暴に掴んだ。袖をまくると、その細い手首には新たなたくさんの傷があった。
深い傷。浅い傷。白い腕に無数の紅い筋。クラクラする。
男「これ………何だよ……」

女「ジャムの分と、お弁当の分、だよッ?」
ニィ……と笑う女の顔。
男「血を、入れたのか……?」
血、と言う言葉を発音する俺の声は震えていた。歯がカタカタ鳴る。
女「………うん」
聞きたくなかった答え。
男「もう、………するなッ!」
俺は女を置いて学校まで全速力で走った。
後ろで女の泣き声が聞こえたが無視して走った。


昼休み。
俺の目の前には真っ赤なナポリタンが弁当箱にはいって置かれている。
食べるものか。
女「男君、食べないの?気分悪いの?保健室行く?」
男「ほっといてくれ、お前が変なもの食べさせるから……」
女「やっぱりあのジャム美味しくなかった?ごめんね……」
男「違う!血を絶対入れるな!」
女「男君……!みんな見てるよ……」

ザワザワ……
「おい、血って言った?今」
「何々、喧嘩?」
「え、やっぱ男と女さん付き合ってたの?」
「ショックー!」
「おい、女さん泣いてんじゃん」

女「ごめん、でもこれきっと美味しいから、ね、食べて?」
男「いるかっ!」
俺は弁当箱をひっくり返した。床に紅いスパゲティが散らばる。
女「男君、あっ、どこ行くの?」
男「もう俺に構うなよ!」
俺は走って教室を飛び出した。



俺は体育館倉庫に逃げ込んでいた。
扉を開ける音が響いた。扉の向こうに居たのは、
女「……いた!男君、どうしたの急に、探したよ?」
男「うるせぇ、あっち行けよ。来るな」
女「何でそんな風に言うの?ボクたち恋人でしょ?」
男「ふん」
女「ねえ、ボクたち恋人だよね?」
男「知るかよ」
女「男君……?」
男「何だよ、気持ち悪いんだよお前……」
女「何で?何でそんな事言うの?ねえ男君!」
男「あっち行けよ!何でこんな時だけ猫かぶるんだよ!」
女「何のことかわかんないよ……ボクが何かした?悪かったなら謝るから……」
男「消えろよ!もう俺に話しかけるな」
女「男君……」

女「…………うぐっ」
男「?まだ居たのか、さっさと行けよ……!おい、お前何やって……」
女「男君……男君男君男君男君男君男君……」
女はカッターナイフで腕をメチャクチャに傷つけていた。
男「やめろ!やめてくれ!死ぬぞ!」
女「うふふ、男君……綺麗だねぇ……こんな私でも、血は綺麗なんだね……」
ぶつぶつとうわごとのように呟きながら腕を滴る血に見とれる。
男「女!よせって!もうやめて、保健室に行くんだ!」
女「ふふ、うふふ……男君……ふふふ、あは、あはははははは!あはははははははははは!!」
細い腕を何度もすべるカッターナイフ。既に白い腕は血で真っ赤に染まっている。
男「やめろ!死ぬぞ!」
女「うふ、うふふふふ、あはははは、あーっはっはっはっはっ、あはははははははははー!」



女「うふふふふ……もう、話しかけるなって……もう恋人なんかじゃないのかなぁ……あははは」
カッターナイフ。血。細い腕。血。ナポリタン。血。血。苺ジャム。血。血。血。
血血血血血血血血血血血血血血血………
暗い体育倉庫の中、女の笑い声と血だけが、はっきりと存在を示していた。

男「女!!よせーっ!!!」
女はそこで始めて俺の存在に気付いたかのように俺を直視した。
女「男君……分かってくれたの?」
男「な、何が……」
女「見てー!ボクの、血!綺麗でしょー!!あははははは!!」
男「だから、何だよ?やめろよ!」
女「分かってくれたの?分かってくれたの?ねえ?あははは!」
男「何だよ、何を分かればいいんだよ!」
女「ふふふ、うふふふふ……ボクはこんなに男君を思ってるんだよ……」
男「いいからいい加減にやめろ!本当に死ぬぞ!」

面白いように流れる血。面白そうに血を流す女。
女「男くぅん……」
男「ひっ!」
女「ボクはねぇ、男君が大好きなんだぁあー!だから、許してもらえるなら死んでも構わないよ~!あははははー!」
男「ゆ、許す!許すから!もうやめろ!死ぬぞ!」



女「許してくれるのッ、本当?」
男「ほ、本当、本当だから……保健室に……」
女「ボクたち、恋人?」
男「えっ……」
じれったそうに女の細い手首をすべるカッターナイフ。
乾いた血の上にさらに赤い鮮血が流れる。
男「やめろよ!」
女「ボクたち恋人?ねえボクたち、恋人?あははは」
一瞬正気に戻ったように見えた女の目がまた虚ろになる。
狂気を表すかのような光を宿した目は、俺の目を焦点をあわせず見つめている。


どうする?

ニア「ああ、恋人だよ」
   「いいからやめろって!」


選択肢A 「ああ、恋人だよ」

女「本当?」
男「ああ。だから早くそれをしまって……」
女「本当に、本当に許してくれるの?ボクたち、恋人、なの……?」
男「おい、女ッ!」

俺は体育倉庫を出ると女を抱えて保健室へ走った。
養護教諭は悲鳴を上げたが、事情を説明して救急車を呼んでもらった。
女は運ばれていく時に、血の気の失せた顔でにっこりと微笑んだ。

数日後。
退院してきた女は真っ先に俺の元へやってきた。
女「ごめんね、心配かけて……でも、ボク、男君が大好きだから」
男「ああ」
女「大好き、だから……ッ」
俺の胸に顔をうずめて、女は泣き続けた。

次の日の昼休み、俺は女の差し出した弁当箱のふたを開けて悲鳴を上げた。
女「あの時、食べ損ねたナポリタンだよ♪」
ソースの上にひときわ赤いものがのっている。
男「おい、これって……」
女「食べないの?うふふ、ボク男君大好きだから、早起きして作ったんだー!」
男「………」
女「男君大好き!」
ゆっくりと倒れる椅子、崩れ落ちる体。
床に叩きつけられ意識を失う寸前、俺は女の声を聞いた。

女「死ぬほどに、ね」


それからは毎日似たようなことの繰り返し。
もう血の味には慣れた。
周囲の目なんかどうでも良い。
俺と女は恋人で、女は俺の事が死ぬほどに好き。
俺はそれだけ知ってれば良い。

女「男君、今日も貧血にならないように気をつけてね!はい、ジャム」
男「サンキュ。そろそろ無くなった頃だったんだ」
女「皆で食べてるの?」
男「いや、最近お前たくさん入れてるだろ、”隠し味”。家族は不審がって食べなくなった」
女「そっか!ボクは男君だけが食べてくれたら嬉しいから!」
男「おう」

♪ Happy End ♪





選択肢B 「いいからやめろって!」

男「それを離せって!」
女に飛びついてカッターナイフを奪い取ろうとする。
女「いやぁぁぁああッ!ボク、ここで死ぬー!!あはははははは!」
男「……狂ってる」

カッターナイフを振り回す女を押さえつけ、手首を掴む。
血のぬるっとした感触が気持ち悪い。
女「やめてぇぇ!放して!いやー!」
カッターナイフが血まみれの床に落ちて音を立てる。
俺はそのまま女を抱えて体育倉庫を出ると、保健室に走った。

女は救急車で運ばれた。
数日後退院してきたが、俺は目が合っても無視した。
女の方も、話しかけようとはせず、何かを考えているようだった。
このまま反省してまともになってくれるならいい、俺はそんな甘い考えを後で後悔する事になる。


クラスの誰もが、女とは距離を置いた。
いじめなどは無かったが、女は友達もなく、いつも一人だった。
俺と女についてはいろんな噂が飛び交ったが、たいていの人は俺に同情し、今まで通りに友達として接してくれた。

一ヶ月が過ぎ、気付けば女は学校に来なくなった。
俺は担任の「家に一度寄ってやってくれ」という頼みを拒み続けた。
でも、時々女の家から聞こえてくるすすり泣きなのか押し殺した笑い声なのか分からない声に、俺は何度も眠れない夜を過ごした。
しばらくして、何を思ったか担任が俺に女が転校してきた理由を告げた。

担「女、前の学校で彼氏が居たらしい」
男「彼氏……」
担「女はその男の子の幸せだけを考えて、他の女の子と仲良くしようと、わがままを言おうと、咎めもしなかった」
男「…でも、あいつ俺には」
担「まあ最後まで聞け。女は彼に振られた。他に好きな子が出来たから、と」
男「………それで」
担「相当ショックだったんだろう、何度もその子の家に行って、自分の何が悪かったのか、
  何か改善できる事があれば何でもする、と執拗に訴えたんだそうだ」

担「やがて、あまりのしつこさにカッとなった相手の男の子は、自分の目の前で手首を切ってみろと言った。
  女が切ると、もっと深く、もっと深く、と要求して、最後には男の子の部屋は血で真っ赤だったらしい」
男「それで、女は」
担「男の子の母親が見つけて、女は病院で治療を受けた。危なく死ぬところだったそうだ。
  そして傷跡を消して、ここに引っ越してきた。相手はどうなったか知らん」

俺はその夜、女がどうしてあんなに嫉妬深いのか、なぜ手首を切って見せたのか、分かった気がした。
明日は女の家に行こう。それから、とりあえず謝ろう。
そう思って俺は、電気を消し、ベッドに入った。


―――くん。男君。男君男君男君男君男君男君…………

俺は目を開ける。まだ朝じゃないじゃないか。寝よう。
でも、何だかこの感じ、覚えがある。何度も女に名前を呼ばれて…… 女?……まさか。
?「………くん」
何だ?!今確かに声が聞こえた。いや、でも気のせいかも……
ベッドのスタンドの電気をつけようとして、電球が切れていたのを思い出す。 仕方ないので壁まで歩いていって電気をつけることにする。
男「暗いけどまあ大丈夫だろ」
ベッドから降りると、足元に妙な感触。嫌な予感がする。
いや、そんなはずは無い。さっさと電気をつけて、足の裏に感じるぬるぬるした感触は気のせいだったと思いたい。
手探りでスイッチを探り当て、押す。

男「う、うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」

部屋中が真っ赤に染まっていた。そしてその中心には女。
両腕に無数の傷が。握られたカッターナイフ。
窓が開いている。たまに俺は換気の後鍵を閉め忘れることがある。そこから忍び込んだようだ。
そしてどうやらさっき息を引き取ったらしい。それまでずっと俺の名を……
ぞっとして、とりあえず親を呼びに行こうとドアに体を向けたとたん……

女「あ、やっと気付いてくれたぁ!」
女が俺の足首を掴んでいた。
男「ひっ!」
女「あのね、ボク……男君、大好きだからぁ……許される為なら、
                                         死 ん で も 構 わ な い よ ? ……………」

それきり女は動かなかった。俺の足首を握る手がどんどん冷たくなっても、俺はその場を動けなかった。

♪ Happy(?) End ♪