人形遣いアリス・マーガトロイドは百発人形マグナム、解体人形ジェニー、盗掘人形モールスを操れるのか・・・


とあるフライゴンに一目ぼれしたみえ。彼女はそのフライゴンを追い、海岸沿いの森へと入っていった。しかし、森は思った以上に深く、フライゴンを見失ってしまったのだった。

みえ「むむむー、見失ってしまいました。でもこのあたりに来たはずですぅ」

それでも、みえは諦めなかった。彼女は一目ぼれした相手ならばどこまでも追い続ける娘だった。みえは首を右へ左へと振りながら、そのフライゴンを探した。無論、深い森の中でそう簡単に見つかるはずはなく、見つからぬまま時間は過ぎていく。

みえ「いませんねぇ。手がかりとかあったら楽なんですけどねぇ」
???「そこで何をしているんです?」
みえ「はひぃ!?」

みえの後ろから、突如何者かの声が聞こえた。もうR団の部隊が嗅ぎ付けてきたのだろうか? みえは恐る恐る後ろを向いた。しかし、後ろにいたのはタンバジの部下、即ち快速軍の仲間のゲンガーのササヤマだった。

???「そんなに驚かなくても。自分です、ササヤマです」
みえ「・・・何だぁ、ササヤマさんですか、驚かさないでください」

ホッとするみえだったが、彼女はすぐ、タンバジがいないことに気づいた。タンバジある場所ササヤマあり、その逆も然りな2匹だ。普通なら一緒にいるはずである。

みえタンバジさんはどうしたんですか? いつも一緒でしたよねぇ」
ササヤマ「タンバジさんかい? あの人なら・・・あなた除く幹部が皆ハロア♪杯とかいうR団主催のわけのわからない大会に参加するって言うから、様子を見るためにキキョウの方へ行ってしまったよ」

みえハロア♪杯のことなどちっとも聞かされてはなかった。当然、彼女にとっては初耳であり、状況が飲み込めるはずもない。

みえ「ほぇ? 何ですかそれ、そんな大会が開かれるなんて、みえは聞いてないですよ」
ササヤマ「そりゃそうですよ、あなたがいない間に告知が来て、開催日は今日って言うんですから」
みえ「まさに昨日の今日ですねぇ。キキョウのどこで開催ですか?」
ササヤマ「確か平城遷都1300年祭のメイン会場と、あやめ池とか・・・」
みえ「だいぶ大きな場所でするんですねぇ。1人のトレーナーさんが貸し切れるような場所じゃないですよ」

みえハロア♪杯の規模を相当大きなものと見積もった。もちろん、ササヤマが疑問に思っているのは、そんなくだらないことではない。『自分達快速軍がR団を襲撃しているはずなのに、ほとんど無意味に近い大会を開いている』という点が不自然に思えたのだ。

ササヤマ「それよりも・・・そのハロア♪杯とやらは、R団団長ロンシャンの息子ハロア♪の誕生記念大会と銘打たれている・・・。タンバジさんにR団4幹部の一角テンマバシを破られておいて、そんなのん気に興行を開催する余裕があるとはとても思えないのですが」
みえキシュージさんがR団の女の子と戦って勝った、って話も聞いてますよぉ。状況的に考えたらちょっとおかしいですねぇ」
ササヤマ「何かの作戦なのか・・・それとも我々程度に危機感を抱くまでもないと思われているのか・・・」

ササヤマがハロア♪杯への疑問を濃くする中、みえもササヤマに対して疑問が浮かんだ。

みえ「そういえば、ササヤマさんはどうしてこんなところにいるんですか?」
ササヤマ「その件ですか・・・。」

みえの質問に、ササヤマは急に表情を硬くした。

みえ「・・・はい? そんな深刻な話なんですか?」
ササヤマ「深刻というわけではありませんが・・・。この近くには、R団の隠された実力者が潜んでいるというのです」
みえ「隠された・・・実力者・・・R団4幹部の他にですか・・・?」
ササヤマ「はい、その他にもです」

R団にはR団4幹部の他にも、まだ隠された実力者がいる―――衝撃の事実を聞かされたみえは驚きを隠せない。

みえ「それってどんな人なんですか・・・?」
ササヤマ「正体はよくつかめていませんが、その強さはR団4幹部はもちろん、チャンピオンリーグマスターのポケモンにすら匹敵するとも言われています」
みえ「そんなに強い人が本当にいるんですかね?」
ササヤマ「実際、最高幹部のウエロクはチャンピオンリーグマスターのポケモンを破った経験がある・・・。その対抗馬がいる可能性は十分にあります」
みえ「ははぁ・・・。」
ササヤマ「自分はその正体をつかむため、ここに。ところで、あなたは・・・」

ササヤマがみえに疑問を投げかけると、彼女は即答した。

みえ「みえですか? みえは、ここに運命の人を探しにきたのですっ!!」
ササヤマ「・・・・は?」

当然、ササヤマは彼女の言っている事が理解できなかった。疑問を呈した表情を浮かべるササヤマを目の前にしても、みえは話を続けた。

みえ「みえは、あるフライゴンさんに一目ぼれしてしまったんです! ポケモンなのに道具を上手く使うあの手つき、優しげな表情、優しい声!・・・」

みえはそのフライゴンへの魅力を熱く語りだすも、話が理解できないササヤマは完全に置いてきぼりであった。

ササヤマ「・・・あのー、みえさん? 1匹で話してますよ。自分置いてきぼりです」
みえ「・・・はっ、すみませぇん、思い出しただけでつい興奮してしまって・・・」

みえは無邪気な笑みを見せながら照れてその場をごまかした。その無邪気な笑みをかき消すように、何者かが足音を立てながら後ろから近づいてきた。

???「お前達、誰だ・・・?」
みえ「はっ!?」

のそのそと足音を立ててやってきたのは、森の警備と思われる1匹のカイロスだった。

ササヤマ「何者だ、R団か!?」
???「まぁな・・・。・・・お前達か? 最近騒がせてる快速軍とやらは」
ササヤマ「我々を知っているのか」

どうやら、カイロスR団のメンバーで、快速軍の事を知っているらしいが、快速軍の存在を知っているR団はごく僅か。カイロスは続けた。

???「知っている・・・と言えば語弊があるがな。テンマバシの部隊をフワライド1匹で皆倒してしまったらしいな?」
ササヤマ「タンバジさんのことだな・・・。」
???「俺だって最初は知らなかったさ、その事を始めて知った時は驚いたぜ。そんな重要な情報を、ロンシャンさんは公開していなかったんだからよ。息子の誕生祝の企画が先だとか言ってな。危機感が無さ過ぎるってのは困ったもんだぜ。目の前に火の粉が舞ってるのに、火の粉を振り払うよりも近くの宝を眺めるのが先なんだからよ」
ササヤマ「公開していなかっただって? ならば何故お前はその事を知っていたんだ!?」

「最初は知らなかった」という言葉に驚きを隠せないササヤマの言葉に、カイロスは淡々と返事をする。

???「そんなことか、ただ我々が独自に調べ上げただけだよ。」
ササヤマ「独自にだって!?」
???「ああ。戦いってのは先を読んだ者が勝つんだ。通達ばかりに任せずにな。先も読まず、自分の力を過信して作戦も立てず突っ込んだから、あの時女王に無様な負け方をしたんだ。」
みえ「・・・あなたは、一体誰なんですか!?」

みえの言葉を聞いて、カイロスはようやく自らの名を語った。

???「俺か? 俺の名は『ツ』・・・。R団の上級メンバーだよ。」

カイロスの名は「ツ」。R団の上級メンバーだった。だが、「ツ」というあまりに短い名前に、みえは聞き返した。

みえ「ツ・・・? それだけですかぁ? 名前が短い人ですねぇ。寂しくないですか」
ツ「寂しくなんかないさ、むしろそれだけで十分だ! 俺に長ったらしい名前は、いらねぇ!!」
みえ「ひゃあ!?」

その瞬間、ツはものすごい勢いでみえに突っ込んできた。しかし、ここにササヤマが間に入る。

ササヤマ「おっと、コイツの相手は自分がしましょう」
みえ「ササヤマさん」
ササヤマ「こんなパワーバカ、自分でも時間稼ぎくらいにはなりましょう。みえさんは集中してくださいよ、『運命の人』探しとやらをね 」
みえ「・・・そうでした! では、この場は任せましたよー!」

ササヤマの言葉を信じ、みえはツの相手をササヤマに任せ、運命のフライゴンを探しにさらに森の深くへ向かった。そして、残ったツとササヤマは対峙した。

ツ「随分信頼されてるじゃねぇか」
ササヤマ「仲間との信頼なくして、グループは成り立たない・・・当然のことだろう?」
ツ「まぁな、それは同意しよう・・・。俺は今、戦いたくてウズウズしてるんだ! あの時女王と戦うはずが、あの方の命令で戦うことができなかったからな!」
ササヤマ「あの方だと? 誰だそれは! 団長ロンシャンか、最高幹部のウエロクか、ポリドリか、テンマバシか・・・ウメダか!?」
ツ「いいや、どれも違うな。それをお前が知る必要はないぜ!」
ササヤマ「そうか・・・言う気がないなら、バトルで負かして言わせるまで!」
ツ「ようやくバトルか。俺を負かしたら言ってやる、そらよっ!」

ツは自慢のハサミでササヤマを捕らえようとした。しかし、ササヤマの方が素早さは上手。いとも簡単に避けられてしまい、ハサミの先が直径40センチほどの木に食い込んでしまった。

ササヤマ「ハハハ、ハズレだ。パワーバカめ。それでは身動きできまい! スキありだ」

ササヤマはハサミが木に食い込んだままのツに対して、禍々しい黒いエネルギーを玉状に集めて発射した。シャドーボールだ。ツはまだ動かない。このままでは直撃である。

ササヤマ「先手必勝、ポケモンバトルの常識だ」
ツ「・・・先手必勝だぁ? 何勝った気でいるんだ、俺がパワーだけの単細胞だと思ったら大間違いだぜ」
ササヤマ「む」

ツは木に食い込んだハサミに力を入れた。めきめきと音を立てる木。そして木が完全に切断された途端、何とその木を両手で軽々と持ち上げたではないか。

ササヤマ「何!? 何て力だ、あの細い腕で!」
ツ「パワーだけじゃないってこと、見せてやるよ! おらっ、だあああ!!!」

ツは持ち上げた木を利用して放たれたシャドーボールを叩き潰し、消してしまった。

ササヤマ「何と・・・」
ツ「かっこよく打ち返したかったところだが、それだとかえって他の木につっかえてしまうからな。」
ササヤマ「なるほどな。しかし、自分の方が相性では有利だぞ」

ツはカイロス、ササヤマはゲンガー。ゴーストタイプの技はむしタイプに普通、しかしその逆はこうかがいまひとつ。相性ではツの方が不利だ。しかし、ツはその程度のことでは動じなかった。

ツ「相性が悪いから勝てないってのは、今や昔の幻想だよ。その事に気づいてない奴が、負けるのさ!」
ササヤマ「!」

ツの絶対の自信を感じたササヤマ。ツが怪力で木を振り回してササヤマのシャドーボールを打ち消してしまったことに、ササヤマはツの自信がハッタリではないと実感した。

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場面は変わって、ツとササヤマが戦っている頃の、快速軍が探すR団のアジト。他のR団が大会で盛り上がっているというのに、このアジトでは盛り上がる事はほとんどなく、粛々とした雰囲気が流れていた。暗い部屋、そこに2匹のポケモンがいた。1匹はフライゴン、もう1匹はよくわからないが、大きな翼の生えたドラゴンポケモンであることは確かだ。

あのフライゴン「あなたにお聞きしたいことがあるのですが」
???「何だ?」

そこにいたのは、何とみえが『運命の人』と仰ぐ、あのフライゴンだった。そう、あのフライゴンR団のメンバーの1匹だったのである。そして、その目の前にいるのは・・・。

あのフライゴンロンシャンさんが企画したハロア♪杯ですが・・・あなたは出場しないんですか」
???「そんなものに興味はない・・・。大体、快速軍という正体のわからない敵の脅威に晒されているにもかかわらず、息子の誕生祝パーティとは何事だ?」
あのフライゴン「最近、あの人何をするかわからないですからね・・・」
???「まず我々がすべき事は快速軍とやらの正体! 目的を暴くことだ! それを成し遂げるまでそんなくだらんモノは後回しだ」
あのフライゴン「でも、R団4幹部のうち3匹が参加するそうですよ」

R団4幹部のうち3匹とは、ウエロクテンマバシポリドリである。残りのHSウメダは幹部の座を捨ててしまい、その後も後釜が未だに決まっていない状況であるため欠員なのだ。

???「ウエロクがだと・・・? 奴がそんなくだらん大会に出たところで、全戦全勝だろう、つまらんだろうに」
あのフライゴン「最終的に敗れはしたものの、チャンピオンリーグマスターのポケモンを2匹倒したほどですからね」
???「ウエロクの強さは、この俺もお前もよく知っている。奴が敗れる時は、この俺がより強くなった時だけで十分だ」

どうやら、謎のドラゴンポケモンはウエロクの本当の実力を知っているらしい。続けて、あのフライゴンに命令した。

???「おい、そこのテレビを付けろ。確かテレビ中継されると言っていただろう。試合だけは見届けてやる」
あのフライゴン「あ、はい、わかりました!」

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