女王R団の熾烈かつ無意味な戦いは、明確な勝敗を付けることなく、自然と終結した。この事変を、傍らから見守るものが居た。オシリアの友人である少女コダマと、そのパートナーであるアブソル、「ツルハシ」である。彼女らは鶴橋駅の3番乗り場で、オシリアを待っていた。

コダマちゃん「・・・R団蟲の女王の戦いは、終わったようですね」
ツルハシ「ようやく終わったか・・・。あんな無意味な戦いをよくここまで続けられたものだ」

ツルハシは鶴橋で購入したキムチを食べながら呆れて語った。

コダマちゃん「・・・そもそも、この事変の発端は、R団団長・・・すなわちロンシャンさんの、挑発行動だったんですよね」
ツルハシ「そうそう。しかし、その挑発行動に対し、あの慈悲深い蟲の女王が、血相を変えて激怒した。・・・当然と言えば当然なのだが、その規模はロンシャンの想定を遥かに超えていた」
コダマちゃん「その後数週間にかけて行われた、R団に誘拐された虫ポケモンの救出を名目とするR団の基地マダツボミの塔への報復攻撃・・・」
ツルハシ「この報復を知ったロンシャンは、女王のこれ以上の反撃を恐れ、R団の4幹部を筆頭に部隊の再編を行った」
コダマちゃん「部隊の再編も終わりかけという時になって、R団の崩壊が始まったのですよね」
ツルハシ「そう・・・。女王との全面戦争もやむなしという緊迫した情勢になった矢先に起きた、最高幹部ウエロクの更迭、その後任ウオッカ♪の専制独裁による、信用の失墜。」
コダマちゃん「これで、4幹部を筆頭として結束していたR団の統率は次々と砕かれ、部隊はバラバラになってしまって・・・」
ツルハシ「追い討ちをかけるかのごとく、
上級メンバーが謎の刺客に襲われて倒される事件が相次ぎ。
次に神官ウジヤマダのクーデターが勃発。
さらにはロンシャンの暗殺未遂事件が発生。
幹部会議会場でのテロ発生による幹部の戦線離脱。
挙句の果てにHSウメダが突然のR団脱退。
・・・次々とR団に襲い掛かる誤算と反乱にR団の指令系統は完全に崩壊。
大パニックに陥った。」
コダマちゃん「・・・わたし、これは何か出来過ぎていると思うのですが・・・。『全てが偶然』とはとても思えませんけど」
ツルハシ「傍らから見ていれば、そう思うのは必然だろうな。」
コダマちゃん「?」
ツルハシ「考えてみろ。R団はついこの間まで、ポケモンの枠を超えて1つの団体として結束していたんだぞ。それが『偶然』起きた1つの事件で、こんな短期間に『偶然』瓦解するものか」
コダマちゃん「えっ?200年間政権を持っていた江戸幕府だって、ペリーに開国させられてすぐ滅亡したじゃないですか?」

そうコダマちゃんが言うと、ツルハシはくどく、江戸幕府が滅びた原因を語り始めた。

ツルハシ「開国は1つの原因だよ。ペリー来航だけが江戸幕府滅亡の理由ではない。江戸幕府崩壊までには数々の伏線があった。4度にわたった大飢饉、数々の大火による復興費用の累積、田沼意次の政策の失敗による民衆の不満、桜田門外での大老暗殺、ええじゃないかの大騒動、薩長土肥の結束、将軍の後継者問題・・・多数の原因が絡みに絡み、260年以上続いた江戸幕府は滅んだ。江戸幕府は偶然起きた1つや2つの事故や事件で滅亡したんじゃない。起こるべくして起きた事件の連鎖で滅んだのさ。」
コダマちゃん「???」

頭はよくても、日本史が苦手なコダマちゃんにはさっぱり訳が分からない。ツルハシは例えを変えることにした。

ツルハシ「・・・もっとわかりやすい例でいくか。
ジオン公国が敗戦したのは、『ギレンがキシリアに殺されたこと』そのものというよりは、それによって生じた指令系統の一時的な混乱を突かれた事による、ア・バオア・クーのN・Sフィールドの崩壊だ。必ずしも『カリスマ総帥ギレンの死』という短絡的な理由ではない。仮にギレンが生きていたとしても、ドロス・ドロワが沈んでいれば、ジオンは降伏せざるを得なかっただろう。必ずしも、個人の生死や行動でその後全てが決まるわけではない」
コダマちゃん「余計に分かりにくくなったような^^;」
ツルハシ「それに比べ、今回のR団瓦解は『ウオッカ♪の大幹部就任』という1つのキー以外に因果関係が認められる事例が何1つ無い、かといって『全てが偶然=たまたま起きた事故』というには明らかに不自然だ。仮に計画だったにしろ、女王との戦いの前にすることではない」
コダマちゃん「じゃあ、何があったって言うんですか?」
ツルハシ「・・・これはあくまで自分の推測だが、女王がどこかに絡んでいるに違いない」
コダマちゃん「彼女がですか?」
ツルハシ「ああ。最初自分はウオッカ♪女王のスパイだという説を立てたのだが、それだとこの無意味な戦いの原因は、大幹部にスパイを任命するロンシャンの人望がなかっただけ、という結論に達する。しかし、そんなとぼけた団長ではあれだけのポケモンがついて来るはずが無い。ゆえにその可能性は低い」
コダマちゃん「では、どんな説なのですか?」
ツルハシ「・・・キーとなるウオッカ♪や他の側近が、ロンシャンの寵愛を受けたいがために女王と絡んでいたという説だ。」
コダマちゃん「何故そんなことを?」
ツルハシ「ロンシャンあゆみという1匹のミミロップばかりを寵愛した。それに他の側近が不満を持つのは当然だ。」
コダマちゃん「それが原因で内部分裂を?」
ツルハシ「そう。そしてウオッカ♪女王への助けを求め、何者かがロンシャンに最高幹部ウエロクの更迭を要求し、見事成功。計画通りウオッカ♪は大幹部の座を手に入れた・・・が、彼女の人望の無さゆえこれに不満を持った連中が次々と内部分裂を引き起こし、さらにこれによって生じたR団の混乱を食い物に、怒りの収まらない女王R団完全根絶の為に動き出してしまった・・・という説だ」
コダマちゃん「なるほど・・・」
ツルハシ「不審点が残る上級メンバーが倒された事件も、偶然起きるわけがない幹部会議会場のテロ事件も、これなら説明がつかないことも無い。だが・・・その仕上げはウジヤマダ率いるクーデター部隊とイコマ山に集結した守備隊に対して、上空から戦闘ヘリでミサイル乱射。ポケモン相手にそんな物騒なモン使うなっつーの」
コダマちゃん「ひどい・・・」
ツルハシ「結果的にはハッピーエンドだったものの、一歩間違えりゃ国中で内戦だったぞ」
コダマちゃん「怒りに駆られるって、怖いですね・・・」
ツルハシ「だな。・・・ところで、まだ来ないのか、あのドジっ娘は」
コダマちゃん「え?・・・あれ、もう30分オーバーしてる・・・?また電車に乗り遅れちゃったのかしら・・・もう、オシリアさんったら・・・」
ツルハシ「(30分待って気付かないお前もアレだろ・・・)」
コダマちゃん「ところで、さっきは要するに何が言いたかったのですか?」
ツルハシ「要するに、1つにまとまっていた組織が
偶然『だけ』で崩壊するなんて有り得ないって話さ。
例えばだな、真珠湾攻撃に向かうためヒトカップ湾に集結した
日本海軍の空母が次々事故で爆沈して全滅、その後アメリカが宣戦布告、
数日後に東京がエンタープライズやレキシントン艦載機の
空襲を受けて火の海・・・になったら、これが
『航空機の整備不良によって起きた偶然』
と考える奴なんてそうそういない。
敵国の基地へ攻撃に行くのに整備不良なんて、
軍隊失格にも程があるからな。
それが仮に偶然で事故だとしても、
まずは『ローズヴェルトやチャーチルの陰謀』と考え、
むしろ国民は怒りで結束するはず。
そんな『国民』単位の堅い絆が偶然や個人の不和だけで壊れやしないよ。」
コダマちゃん「だから、余計にわかりにくいんですけど・・・」

コダマちゃんは苦笑いした。わかりやすい・わかりにくい以前に、
コダマちゃんにはヒトカップ湾がどこにあるかも、
ローズヴェルトやチャーチルが誰かも、
エンタープライズやレキシントンが何であるかも、
さっぱり分からなかったからである。

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