ウサギとカメ

俺はイガカンベ
R団最速の忍者だ。
俺の前を走るやつはいない。
誰も俺の背中しか見られない。
俺の背中に描かれた「人」の文字は伊達じゃないぜ。
なのになんだこの扱いは?
本編で出番や台詞がないことはいいとしても、ロンシャンのページに紹介すらされていない。
こんな軍団さっさと辞めてやるぜ。
おれは見切りをつけるのも早いんだ!

イガカンベテッカニン) 「お~い!ローンウルフのロンシャンさんよ~!」
ロンシャン 「なんだよ?そのローンウルフのロンシャンってのは?」
イガカンベ 「知らないのかい?団長のくせに情報が回ってくるのが遅いんだな。」
ロンシャン 「だから、なんなんだよ!そのローンウルフってのは?」
イガカンベ 「軍団内じゃ団長のことをみんなローンウルフ・ロンシャンって呼んでるぜ!」
ロンシャン 「ちぇっ!あのときの赤ずきんちゃんの余興がまだ尾を引いてるんだな。」
イガカンベ 「俺はその余興の話は知らんが、どのみち、あんたは、ローンウルフ・ロンシャンだ。」
ロンシャン 「響きは悪くないが、あだ名を付けられた理由が理由だけに気にくわない。で、僕に何の用だい?」
イガカンベ 「俺は、こんな軍団辞めてやる。」
ロンシャン 「勝手にしろ。」
イガカンベ 「ああ、辞めてやるぜ!大体のろまなあんたが団長であることが気にくわない。」
ロンシャン 「あ!聞き捨てならないことをほざいたな!」
イガカンベ 「俺は、R団、いや世界最速のポケモンだ!何ひとつ、あんたより遅いものはない。」
ロンシャン 「言ったな!」
イガカンベ 「もし、俺があんたより遅いものがあるとすれば、持続力だけだ。あんた早すぎって噂だぜ。」
ロンシャン 「ああっ!僕が一番気にしていることを言ったな!セミにここまでコケにされて黙ってられるか!勝負だ!」
イガカンベ 「よかろう。受けて立とうではないか。」
ロンシャン 「よし!明朝10時が決闘開始時刻だ!逃げるなよ!」
イガカンベ 「望むところだ!」

【翌朝10時前】
パーコ♪パラセクト) 「みなさん、おはようございます♪パラセクトパーコ♪です。今まさにR団団長と元団員イガカンベとの世紀の大決闘が始まろうとしています。本日、わたくしが司会・進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いします。そして、本日の解説はR団あゆみさんです。どうぞよろしくお願いします。」
あゆみ 「よろしくお願いします。」
パーコ♪ 「さて世紀の大決闘がいよいよ始まろうとしていますが、競技種目は一体なんなんでしょう?」
あゆみ 「かけっこです。」
パーコ♪ 「おっと、かけっこですか?R団で最速の男を決定する世紀の大決闘に相応しい種目が選択されたようです。あゆみさん、勝敗の行方はいかかでしょうか?」
あゆみ 「のろまな方が負けるでしょう。」
パーコ♪ 「おーーと!これも単刀直入の鋭い勝敗予想が返ってまいりました。なお、本イベントは、R団で最速の男を決定する世紀の大決闘ということで、『R団で最も早いやつは誰だ?ローンウルフvs忍者かけっこカップ』、略して『早狼杯』と名付けられております。」
あゆみ 「『はやおおかみはい』って読んでくださいね。」
パーコ♪ 「おおおっと!イガカンベ選手の入場です。」
イガカンベ 「ミーン!ミーン!」
パーコ♪ 「さすがポケモン界最速の男!歌を歌いながらの余裕の入場です。そして、一方から、ローンウルフことロンシャン選手の入場です。」
観客 パチパチパチパチ!
観客 ブーブー!ブーブー!
パーコ♪ 「おおっと!まばらな拍手の中、ブーイングです。ロンシャン選手人気急落か?はたして、この決闘自体が無謀だったのか!」

審判 「ルールを説明します。ここから見えるあの小高い丘まで行き、丘の頂上の旗を回って、先にここまで帰ってきた方が勝ちです。」

あゆみ 「さあ、ロンシャンさま、この靴に履き替えてください。」
ロンシャン 「なんだあゆみは、今日は解説じゃなかったのか?僕のセコンドなんかやっててもいいのかい?」
あゆみ 「大丈夫です。」
ロンシャン 「って、何だ!この靴は?パワーシューズじゃないか!」
あゆみ 「ハンディです。」
ロンシャン 「ハンディって・・・。こんなの履いて走れないよ。」
あゆみ 「何言ってるんですか。これくらいのハンディで勝てなけりゃ、ローンウルフの名が廃りますよ。」
ロンシャン 「わかったよ!これで走ればいいんだろ!やってやる!」

審判 「では、レースを開始します。両者位置について!よーいドン!」

パーコ♪ 「さあ、両者一斉にスタートしました。飛び出したのは、イガカンベ選手だ!早い!早い!さすがポケモン界最速のポケモン!あっという間に見えなくなった!一方ロンシャン選手は、まだとろとろとスタート付近を走っているぞ!この走りは?走りというより歩みだ!この歩みは、まるで亀だ!この決闘無謀だったか!ローンウルフの名が泣いているぞ!どうしたロンシャン選手!男粋を見せてくれ!」

ロンシャン 「足が・・・。足が重いいいいい。」

イガカンベ 「ミーン!ミーン!おっ?ロンシャンがぜんぜん見えなくなったぞ!なんだ楽勝じゃねいか。そろそろ折り返し地点だし。ちょっと休憩すっかな。ロンシャンが来るまで待ってやろう。ボロ勝ちじゃあ面白くないしな。」

ロンシャン 「足が重い。まるでストップモーションみたいだ。もう汗だくだ。まだ折り返し地点も見えないぞ。どうした自分!がんばれ自分。」

ロンシャン 「あれ?幻聴かな?歌が聞こえてきたぞ。あの歌だ。なつかしいなあ。小学生のころ歌ったっけ・・・。」

ロンシャン 「もし、もし、カメよ、カメさんよ、世界の中でお前ほど、あゆみののろいものはない・・・。」

ロンシャン 「!」

ロンシャン 「そうだ・・・。これは、あゆみの呪いだったんだ。」

イガカンベ 「zzzzz」

ロンシャン 「あれ?イガカンベが眠ってる。油断したな。でも、この勝負もはや敵は関係ない。僕自身の戦いなんだ。僕は僕に勝つんだ。」

パーコ♪ 「さあ、両者がスタートしてかなり時間が経過しましたが、まだいずれも姿を現しません。一体どうしたのでしょう?あゆみさん!」
あゆみ 「知りません。ロンシャンさまがのろまなだけでしょう。」
パーコ♪ 「ああ!姿が見えます。あれは!あれはロンシャン選手です。ロンシャン選手が先に帰ってきました。しかし、遅いです。とても肩で風切るようなかっこいい走りではありません。」
あゆみ 「ロンシャンさま~!がんばってーーー!」
パーコ♪ 「おっと!声援です。ロンシャン選手にあゆみちゃんだけが声援を飛ばしています。しかし、ロンシャン選手、あごが完全に上を向いています。グロッキーです。フラフラです。しかし、ロンシャン選手、棄権しません。がんばっています。1歩1歩カメの歩みを続けています。」
あゆみ 「ロンシャンさま~!がんばってーーー!」
観客 パチ。パチ。パチ。
パーコ♪ 「おっと、観客からまばらながらも拍手が起こっています。」
観客 パチパチパチ。パチパチパチ。パチパチパチ。
あゆみ 「ロンシャンさま~!がんばってーーー!」
観客 「がんばれ~!」「がんばれ~!」
パーコ♪ 「声援です!観客からロンシャン選手に声援が飛んでいます。ロンシャン選手、1歩1歩カメの歩みを続けています。がんばれ!がんばれ!ロンシャン選手!がんばれ!」
観客 「ロンシャンロンシャンロンシャンロンシャン!」
パーコ♪ 「会場からロンシャンコールが沸き起こりました。がんばれ!がんばれ!ロンシャン選手!ゴールはあと少しだ。がんばれ!ロンシャン選手!がんばれ!」
観客 「ロンシャンロンシャンロンシャンロンシャン!」
パーコ♪ 「ゴーーーーーーーーーーーール!!!!!」
観客 「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
パーコ♪ 「ロンシャン選手やりました!倒れ込みながらもなんとかゴールのテープを切りました。あゆみちゃんが駆け寄っています。えらい!ロンシャン選手!最速の男はともかく、君はローンウルフの異名に恥じない立派な団長だ!おめでとう!感動をありがとう!」

あゆみ 「ロンシャンさまー!」
ロンシャン 「ははは、やったよ。僕はやった。僕は僕に勝ったよ。みんなあゆみのお陰だよ。ありがとう。」
あゆみ 「いいえ。あの靴は、私の呪いだったのよ。」
ロンシャン 「え?」
あゆみ 「あんた!浮気したでしょ!」
ロンシャン 「え?」(・・・ばれた?・・・)
あゆみ 「団長の寝室にて、読んだわ。私が入院中なのをいいことに。」
ロンシャン 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
あゆみ 「この落とし前はきっちりつけてもらいますからね。」
ロンシャン 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

パーコ♪ 「さあ、表彰式です。優勝者には優勝トロフィーの『早狼杯』と、副賞として、はるか♪製薬からバイ●グラと避妊具1年分が送られます。」

あゆみ 「じゃあロンシャンさまは、今夜から持続力の方も鍛えることにしましょうね。」
ロンシャン 「ごめんなさい。許してください。僕は、R団最速の男なんだよーー!!」
イガカンベ 「やっぱり俺は噛ませ犬かよ・・・。」

<<ウサギとカメ・おわり>>

(2009.10.14)

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最終更新:2009年10月14日 20:22