幸若

このお話は、R団本編のifストーリーです。
もしウエロクが更迭されず、そのまま進軍していたら・・・。
登場ポケモンの性格付けは、本編とは少し違っています。あらかじめご了承ください。
また、本編には登場していないポケモンも登場します。

ふぶき♪グレイシア) 「お兄さま!お兄さま!」
ウエロク 「おお!ふぶき♪ではないか。どうした?」
ふぶき♪ 「どしたもこうしたもないです。ここ 福原 の地に来てから、ずっと膠着状態じゃないですか。」
ウエロク 「ふむ。致し方あるまい。女王の居城は、ここから 有馬街道 の夢野口を北上した山間部にある。」
ふぶき♪ 「はい。」
ウエロク 「しかし、女王は、天王谷に堅強な砦を築いて徹底抗戦の構えだ。」
ふぶき♪ 「そうなんですか。」
ウエロク 「谷を抜ける街道は狭い。大軍で菊水山を越えることが難しいのだよ。」
ふぶき♪ 「でも、ずっとこうしてる訳にはいかないのでは?」
ウエロク 「そのとおりだ。だから、俺はある作戦を考えた。」
ふぶき♪ 「どんな作戦ですか?」
ウエロク 「兵を2分し、1隊はこのままここに待機させ、女王軍と対峙して牽制を続ける。」
ふぶき♪ 「はい。」
ウエロク 「そして、別働隊を編成し、高取山の西側を迂回して、明石から三木に抜け、女王の居城の背後に回り込む。」
ふぶき♪ 「なるほど、それは名案ですね。」
ウエロク 「挟撃を受ければ、女王軍はひとたまりもあるまい。」
ふぶき♪ 「それでは、大勝利の前祝いに1曲奏でましょう。」
ウエロク 「おお、そうか。ふぶき♪の笛の演奏は一級品だからな。それでは俺は舞うとするか。」
ふぶき♪ 「それでは、お兄さまのお好きな 幸若 を吹きましょう。」
ウエロク 「頼む。」
ふぶき♪ 「ピィ~ヒョロ~♪」
ウエロク 「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか。」
ふぶき♪ 「ピィ~ヒョロ~♪」
ウエロク 「これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ。」

【別働隊の出発のときが来ました。】
ウエロク 「では、別働隊出発するぞ!村娘、案内を頼む。礼はたっぷりと弾むからな。」
おくう♪ 「わかりました。」

サイダイジ 「ふぶき♪様は、豪奢な甲冑を召されて凛々とした若武者に見えるが、本当はウエロク様の妹君なのだからな。」
KTナラ 「ピィィィィ!」
サイダイジ 「それに端正なお顔立ちの実にお綺麗な方だ。横笛の名手でもある。」
KTナラ 「ピィィィィ!」
サイダイジ 「このような戦さえなければ、キキョウで安寧な暮らしが続けられたというのに・・・。実に不憫だ。」

ウエロク 「ふー。まだ出発して間もないが、少し疲れたな。ここで休むとするか。」
ふぶき♪ 「お兄さま!お兄さま!ほら、海と山があんなに近くて、海がすぐそばにあります。大変綺麗な場所ですね。」
ウエロク 「そうだな。おい、村娘!ここはなんという場所なのだ。」
おくう♪ 「ふふふふ。ここは須磨浦の 一ノ谷 です。ふふふふふ。」
バタバタバタバタ!
ウエロク 「おい!村娘!どこに行く?」
ぶおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!ぶおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!
ウエロク 「何!法螺貝の音!!」
サイダイジ 「何だ!敵襲か!どこからだ!!!こんな狭い場所で!!」

女王ししまる♪オドシシ) 「さあ、皆の者!題目を唱え、鐘太鼓を打ち鳴らすのだ!」
女王軍 「南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!!南無妙法蓮華経!!!南無妙法蓮華経!!!!」ドンドンドンドンドン!!!
女王軍 「南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!!南無妙法蓮華経!!!南無妙法蓮華経!!!!」ドンドンドンドンドン!!!
ししまる♪ 「眼下の敵は慌てておるぞ!この崖を一気に駆け下りて、敵を蹴散らせ!!」

ウエロク 「うわぁーー!!敵の大軍だあ!!どこから襲ってくるんだ!!」
サイダイジ 「ウエロク様!敵は山腹の崖です。鉄拐山頂から、一気に敵が駆け下りてきます!!」
ウエロク 「うわぁーー!!逃げろ!!早く逃げるんだあぁぁ!!!」
サイダイジ 「ダメです!ウエロク様!総大将が逃げ出しては、軍が総崩れになります!」
ウエロク 「うるさい!俺は逃げる!ふぶき♪ふぶき♪!!お前も早く逃げろ!!!」
サイダイジ 「敵の軍勢は虚仮威しに過ぎません!ここは持ちこたえてください!」
ウエロク 「うるさい!うるさい!ふぶき♪!逝くぞ!」
ふぶき♪ 「お兄さま!お兄さま!」

ししまる♪ 「よーし、敵は我らを見て、崩れだしたぞ!一気に畳みかける!敵本隊の土手っ腹に我が隊が突撃だ!!!」
女王軍 「わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっーーーーーーーー!!!!!!!」
女王軍 「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっーーーーーーーー!!!!!!!」

サイダイジ 「いかん!我が軍は総崩れだ!最早ここまでか!ふぶき♪様!ふぶき♪様!我らも撤退しましょう!」
ふぶき♪ 「待ってサイダイジ!私は笛を忘れてきてしまいました。あなたは、先に行ってください。」
サイダイジ 「笛はいい!早く逃げましょう!うわぁ!敵が突入してくるぞ!!ちくしょう!応戦だ!!!」

ウエロク 「はあ、はあ、ちくしょう!!ここから先は海かよ!あ!あそこに船がある。あれに乗るぞ!」
KTトバ 「ウエロク様!船の数が足りません。全兵士が船で逃れるのは困難です!」
ウエロク 「構わん!早い者勝ちだ!早く船に乗れ!そして、俺の船を漕げ!!」

女王水軍ツバサ♪オクタン) 「・・・明石のタコを舐めんなよ・・・」

ウエロク 「ふう。取りあえず海に逃れて、俺は助かったようだな。」
KTトバ 「ウエロク様!あれを!!波乗りです!!いや、そんな規模じゃない!!大津波です!!!」
ウエロク 「うわあぁぁぁ!船に捕まれ!!!!!!!」
バッシャーーーーーーン!!!!!!

ウエロク 「助かった・・・。転覆は免れた・・・。」
KTトバ 「ウエロク様・・・・。」
ウエロク 「何だ?」
KTトバ 「海岸にいた兵の大半が今の津波に飲み込まれてしまいました・・・。」
ウエロク 「何だって!そうだ!!ふぶき♪は?ふぶき♪はどこだ!」
KTトバ 「まだ陸にいます!!ふぶき♪様は逃げ遅れたようです!」
ウエロク 「ふぶき♪ふぶき♪!!この船を岸につけろ!早くしろ!!!」
KTトバ 「ダメです。また、第2波の大津波が来ます。うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
ウエロク 「ふぶき♪!!!ふぶき♪!!!!」

ふぶき♪ 「お兄さま!お兄さま!!ちくしょう!沖に出ていた船もほとんどが転覆してしまった!」

ししまる♪ 「よし。おおむね敵は壊滅したな。あとは残存兵を狩るだけだぞ!」
ししまる♪ 「ん?あそこに見える甲冑武者は?あの格好からすると、名のある武将に違いない。よし!」

ふぶき♪ 「私は逃げ遅れてしまった。どうしよう・・・。」
ししまる♪ 「やあ!やあ!そこなの甲冑武者!」
ふぶき♪ 「え?私?」
ししまる♪ 「貴殿、さぞ名ある武将と見受けられる!我こそは女王様が家来ししまる♪!是非手合わせ願いたい!」
ふぶき♪ 「断る!」
ししまる♪ 「ん?一騎打ちを断るとは?おい、お前たち矢を射れ!ただし当てるなよ!」
兵 「ははっ!」
ビュン!ビュン!ビュン!

ふぶき♪ 「きゃ!」
ししまる♪ 「そこなの武将!次は外さぬぞ!貴殿にとっても、雑兵の矢に死せるは名誉にあらず!是非、我との手合わせ頼もう!!!」
ふぶき♪ 「ちくしょう!!やってやる!!!やってやる!!!」
ししまる♪ 「やっと、かかってきたな。よし、これでもくらえ!!」
ガシャーーーン!!!

ふぶき♪ 「きゃ!」
ししまる♪ 「何だ?手応えのないやつだな。いとも容易く組み伏せられたわ。ん?」
ふぶき♪ 「・・・・・・・・・・・・・」
ししまる♪ 「なんと端麗な顔立ちの若武者だ。まだ年端も行かぬ者のようだな。」
ふぶき♪ 「・・・・・・・・・・・・・・・」
女王軍の将 「どうしたししまる♪!早く、その武者の頸を打たんか!」
ししまる♪ 「しかし・・・・。」
女王軍の将 「何だ!ししまる♪!貴様、二心あるのではなかろうな。ならば、貴様もろとも討ち取ってしまうぞ。」
女王軍の兵たち 「ざわざわざわざわ・・・・」
ししまる♪ 「致し方あるまい。戦に来た以上は、おぬしも覚悟の上だろう。せめて一太刀で逝かせてやろう。南無三宝!」
ドシュ!
ふぶき♪ 「お兄さま。お兄さ・・ま・・・・・。」
ししまる♪ 「ん!何だ!こやつ!こやつは女ではないか!俺は、俺は・・・何てことをしてしまったんだ・・・・・。」
女王軍の将 「どうしたししまる♪?どうした・・・・。」

思へばこの世は常の住み家にあらず
草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし
金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる
南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり
人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり
一度生を享け、滅せぬもののあるべきか
これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ

<<幸若・完>>

(2009.10.12)