++エミリ♪とむう♪++

ゴースト・マスターの家】
まりさ♪ 「コホン。」
エミリ♪(む) 「姉ちゃん、何緊張してンだよ。」
まりさ♪ 「うるさいよ。マスターが混乱したらだめだから、あたしが説明するまでむう♪は、しばらく黙ってな。」
エミリ♪(む) 「わかったよ。」

キンコ~ン♪

マスター 「は~い♪どなた?」
まりさ♪ 「こン、こンばンわ♪」
エミリ♪(エ) 「おはようございます。」
マスター 「あら、まりさ♪ちゃんにエミリ♪ちゃん。こんばんわ♪」
まりさ♪ 「ン、うン。」
エミリ♪(エ) 「先輩・・・。何緊張してるんですか。」
マスター 「まりさ♪ちゃん、今日はかわいい女の子連れなのね。少し妬けちゃうな。」
まりさ♪ 「え?」
マスター 「クスクス・・・・。冗談よ。まあ上がって。」
まりさ♪ 「オジャマシマス・・・。」
エミリ♪(エ) 「先輩、声が裏返ってますよ・・・。」
マスター 「クスクス・・・。今日は、いつも一緒のむう♪ちゃんはいないのね。あら?」
エミリ♪(エ) 「え?」
マスター 「ふ~ん。そういうことなの。クスクス・・・。むう♪ちゃんが中に入っちゃったのね。」
エミリ♪(む) 「マスター、わかっちゃいましたか?」
マスター 「クスクス・・・。そのことであたしに何か聞きたいの?」
エミリ♪(エ) 「これもありますが、ほかにもお聞きしたいことがあるんです。」
マスター 「分かったわ。中でお茶でも飲みながらゆっくりお話しましょう。」

マスター 「ふーん。そうだったの。まず、むう♪ちゃんの件は、簡単なことね。」
エミリ♪(む) 「どういうことですか?」
マスター 「あなたは、おばけだから幽体離脱や憑依なんてお手ものでしょ。」
エミリ♪(む) 「そうだけど。でも、普通は、憑依される側の意識がしっかりしてれば、乗り移れませンよ。」
マスター 「衝突のショックで無意識のうちにエミリ♪ちゃんに憑依しちゃったんでしょうね。」
エミリ♪(む) 「だけど、ボク元の体に戻れないンです。」
マスター 「ほっとけば。何かきっかけがあれば、そのうち戻るんじゃない。」
エミリ♪(む)(エ) 「そンなあ・・・。」・「そんなあ・・・。」
まりさ♪ 「むう♪の体は、どうしたらいいでしょうか?」
マスター 「そうねえ・・・。元々霊体だから、腐ったりしないと思うけど。心配なら軒先にでも吊して干しておけばいいんじゃない。」
エミリ♪(む) (T_T)「マスターまで、姉ちゃんと同じで酷いこと言ってるよ・・・。」
エミリ♪(エ) 「あのぅ、私、マスターにお聞きしたいことがあるんです。」
マスター 「何かしら?」
エミリ♪(エ) 「ここに来る前にむう♪から聞いたことなんですけど、ゆきちゃんの虫歯のことです。」
マスター 「何のことかしら?」
エミリ♪(エ) 「え?おぼえてないのですか?」
マスター 「ええ。まったく記憶がないわ。」
エミリ♪(む) 「ええー。そンなはずないですよ。」
エミリ♪(エ) 「マスター、申し訳ありませんが、お薬箱を見せていただけないですか?」
マスター 「ええ。いいわよ。」

エミリ♪(エ) 「鎮痛剤が使われたあとがありますね。」
マスター 「あら、ほんとうね。でも、あたしはそのお薬を使った記憶はないわ。あ!そういえば・・・。」
エミリ♪(エ) 「何か思い当たることはありますか?」
マスター 「そのお薬のことじゃないんだけど、あたしって、ときどき記憶が飛んじゃうことがあるの。」
エミリ♪(エ) 「そうなんですか・・・。」
マスター 「ごめんなさい。お役に立てなくて。」
エミリ♪(エ) 「いいえ。ありがとうございました。大きな謎は解けませんでしたが、小さな謎は解けました。」
エミリ♪(む) 「え?どういうこと?何が分かったの?」
エミリ♪(エ) 「まずね。むう♪マスターの証言が食い違っている。」
エミリ♪(む) 「うン。」
エミリ♪(エ) 「だけど二人とも嘘をつく理由がない。二人が言うことは真実。」
エミリ♪(む) 「うン。」
エミリ♪(エ) 「だとすると、マスターは、無意識のうちにゆきちゃんにお薬を飲ませたことになるけど、そんなことはありえない。」
エミリ♪(む) 「うン。」
エミリ♪(エ) 「結論は、誰かがマスターに乗り移って、ゆきちゃんに鎮痛剤を飲ませたってことになりますね。」
エミリ♪(む) 「そこまで断言できる証拠はあるの?」
エミリ♪(エ) 「ええ。証拠というより推理です。」
マスター 「あたしも聞きたいわ。その推理。」
エミリ♪(エ) 「この鎮痛剤は、すごく眠くなる副作用の強いお薬です。でも、歯の痛みを抑えるだけなら、もっとほかのお薬だってこの薬箱にはあります。」
マスター 「そういえば、そのお薬は、よっぽどのことがないと使わないわね。」
エミリ♪(エ) 「このお薬をゆきちゃんに飲ませることがマスターに乗り移った者の目的だったと考えるのが自然ですね。」
エミリ♪(む) 「誰がそンなことしたンだよ?」
エミリ♪(エ) 「誰かは分からない。でも想像はつきます。」
エミリ♪(む) 「見当がついてるの?」
エミリ♪(エ) 「ゆきちゃん虫歯になったのは偶然じゃないわ。そいつが仕組んだことです。」
エミリ♪(む) 「なるほど。」
エミリ♪(エ) 「たとえ意識が飛んだ状態でもマスターほどの精神力がある人間に憑依できる者。そして、人を虫歯にする魔法が使える者。かなり高位の魔族だと思います。」
エミリ♪(む) 「調べて分かる?」
エミリ♪(エ) 「これだけ検索条件があると分かると思います。それとむう♪に聞きたいことがあるの。」
エミリ♪(む) 「何?」
エミリ♪(エ) 「その魔族がゆきちゃんを催眠状態にしたのは、ゆきちゃんに憑依するためです。そうすると、むう♪たちは、魔族に憑依されたマスターに何かを言われているはずです。たとえば、どこかへ行くようにし向けられたとかがあるはずです。」
エミリ♪(む) 「そうだよ!ボクは、マスターにヒントをもらって、そのあとゆきちゃんとどっかに行ったンだよ。」
エミリ♪(エ) 「どこかって?」
エミリ♪(む) 「あれ?思い出せないよ。なンでだろ?」
エミリ♪(エ) 「魔族に記憶を消されたの?」
マスター 「それは違うと思うわ。おそらくタイムパラドックス。」
エミリ♪(む) 「タイムパラドックス?」
エミリ♪(エ) 「なるほど、そうか・・・。」
エミリ♪(む) 「ねえ、納得してないで、ボクにも分かるように説明してよ。」
マスター 「それは、あたしが説明してあげる。あなたたちおばけは、時間も空間も無視して好きなところに移動できるでしょ。」
エミリ♪(む) 「はい。」
マスター 「でも約束ごとがあるの。たとえば、同じ時間軸に同じあなたが二人も存在したり、過去のあなたに現在のあなたが関与してあなたの未来が変わってしまったりしてはおかしくなるでしょう。」
エミリ♪(む) 「そうですね・・・。」
マスター 「そんなことになりそうなとき、矛盾が生じないように自然に調整がなされるの。」
エミリ♪(む) 「それで記憶がなくなっちゃうンですか?」
マスター 「記憶がなくなるだけじゃない。起こらせてはいけない矛盾を防止するためだから、何が起こるか分からないわ。存在そのものが消えてしまうこともあるみたいよ。」
エミリ♪(む) 「そうなンですか・・・。」
エミリ♪(エ) 「むう♪は、今のあなたが記憶にとどめてはいけない事実を目撃したか、体験したみたいですね。」
まりさ♪ 「でも、エミリ♪ちゃンすごいね。これだけのことから、そこまで分かちゃうンだ。」
エミリ♪(エ) 「そんなことないですよ~。まだぜんぜん真理が見えてませんよ~。」
マスター 「エミリ♪ちゃんの特性はするどい目、真理を見ることができる目だったね。」
エミリ♪(む) 「すごいね。なンでも分かっちゃうンだ。」
エミリ♪(エ) 「違うよ~。私の目は、今あることをありのまま見ることができるだけですよ。」
マスター 「でも、今ある事実から真理を導き出すロジックには敬服しますね。」
まりさ♪ 「ねえ。長居し過ぎだよ。そろそろおいとましないとマスターの迷惑だよ。」
マスター 「あたしは、別にいいんだけど、確かにもうこんな時間ね。」
エミリ♪(エ) 「あ!ほんとだ。ごめんなさい。気がつきませんでした。」

マスター 「じゃあ、また遊びに来てね。」
まりさ♪ 「はい。マスター。さようなら♪」

まりさ♪ 「それで、エミリ♪ちゃンはどうするンだい?」
エミリ♪(エ) 「え?」
まりさ♪ 「むう♪を体ン中に入れたまま家に帰るわけにいかンだろ。」
エミリ♪(エ) 「そういえば、そうですね・・・。」
まりさ♪ 「しばらく家に泊まりなよ。むう♪が悪さしないようあたしが見張っててやるよ。」
エミリ♪(エ) 「じゃあ。お言葉に甘えてそうさせていただきます。」
エミリ♪(む) 「ボク悪さなンかしないよ・・・。」


(2009.9.24)






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最終更新:2009年09月25日 19:58