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「なあハルヒ、おまえの小さい方の妹はオッドアイだよな?どっちがどっちだったっけ」
退屈な授業の終わりを告げるチャイムが鳴るとすぐに、キョンはこっちを向いてこう言ってきた。
珍しく話しかけてきたかと思ったら翠の話だなんて、なんかムカつく。
けど…あれ?赤と緑だっていう事と、蒼ちゃんと逆だってのいうのは覚えてるんだけど…あれ?どっちだっけ…
知ってるけど教えてあげないと言っておく。
「なんだハルヒも知らんのか」
そう言って明らかに失望するキョン。なんでかしら、ものすごく腹立つわね。
だいたい何で翠の瞳の色なんて気にしてるのよ。
「いや…理由はわからんが、さっきの休み時間に朝倉の声を聞いてたら急に思い出してだな…
 そしたら妙に気になっちまったってだけだ。すまん、気にするな。だからってお前が姉失格だなんて思っちゃいないぞ」
腹立つ。ムカつく!何が姉失格よ、朝倉なんか見てんじゃないわよ!
でも適当な事言って逆だったら嫌だし…
いや、いざとなったら翠と蒼ちゃんにカラコンでも入れてもらって…いやいやダメよ。そんなのゴマカシだわ。
そんな事を考えているうちにキョンはアホ達の所に行ってしまった。何よあいつ、おちょくってるのかしら。

放課後になって古泉君が急にバイトが入ったって伝えてきたけど、わたしは今日団活をやるつもりはなかった。
帰って翠の瞳の色を確かめたかったから。
あれからキョンとは話していない。確認したら明日教えてやるんだから。

 

「で、帰って来たら翠はマスターのとこで晩御飯食べてくるって?あー、もう今日は何なのかしら!」
うるさいわね、翠があそこで晩御飯食べてくるのだって、これまでしょっちゅうあったじゃない。
「今日はなんか色々ちぐはぐっていうか噛み合わないっていうか…」
確かに副団長が応援に行くくらいなんだから相当なんでしょうねえ。
余計な事してくれたもんだわキョン君も。
「ねえ、あんたはわかる?翠の瞳の色」
当然でしょ、姉なら知ってあげてなくちゃ。
「じゃ、じゃあどっちなのよ」
フフフ、焦ってる焦ってる。実はアタシも前に気になった事があったのよね~…で、調べてたってワケ。
もちろんそんな事ハル姉には教えてあげない。さも前から知ってるかの如く答えてやるわ。
「早く言いなさいよ」
あのね、ハル姉。面白い覚え方があるのよ。信号あるでしょ?
「…うん」
信号も赤と緑あるわよね
「あ、信号の並びと同じって事?」
甘い甘い。それこそ妹の事を分かってないわ。翠は素直じゃなくて意地っ張りでしょ?だから信号の並びの逆なのよ。
で、素直でいい子の蒼星石が信号と同じ並び方ってワケ。どう?わかったかしらハルヒお姉さま?
「…」
ハル姉ったら言葉も出ないのかしら。なんだかすごく気持ちがいいわ!
「で?結局右なの左なの?」
…あ、あれ…え~と信号の右って…どっちだっけ。
「ハァ、あんたそれでも大学出てんの?」
ま、まだ日本の信号は覚えてないのよ!ドイツのは縦のが主流だったし。
「でもさ、そんな回りくどい覚え方して結局わかんないなんて、あんたも相当素直じゃないわよね」
なんかニヤニヤしだすハル姉。さっきの優越感はどこ?この羞恥心はなんなのよ!反撃しなきゃ。
ハル姉だって結局わからないのを言ってないんでしょ、それも素直じゃないわよね!
「…ちょっとド忘れしてただけよ」
それが素直じゃないって言ってるのに。
「うるさい!」
そっちこそうるさい!

この不毛な言い争いは、ハル姉のお腹が空く頃まで続いた…副団長ごめんなさい。


「というわけで、こっちから見て右が緑で左が赤!わかった?」
なにが『というわけ』なんだ。
俺の純粋な問いを聞いた途端、みるみるうちにハルヒはアヒル口になった。
「はあ?あんた本当にキョンなの?まさか宇宙人が入れ替わってるとかじゃないでしょうね!」
何を言い出すんだこいつは。キョンがあだ名であって本名こそが本当の俺だという事は置いといて、俺は昨日に限らずずっと俺だ。
「じゃあ覚えてるでしょ、あんたが翠の瞳の色を聞いてきたんじゃない」
…ああ、そういえばそんな事を聞いたような気もするな。
「な、なによそれ!」
いかん、また怒らせてしまった。すまんと謝ってみても簡単には機嫌は直らんだろうな。許せ古泉。
せめて礼くらいは言っておこう。
そりゃ悪かった。ハルヒ、わざわざすまんな。
「わざわざだなんて、そんな事ないわよ。記憶の引き出しの中から拾ってきただけにすぎないわ。
 探したわけでも、誰かに仕入れてもらったわけでもないんだからね!」
そうかい。
せめて少しでも機嫌がよくなってくれてればいいんだが。

ちょうど始業のチャイムが鳴り、前を向きなおった俺の頭の中にまた余計な考えが浮かぶ。
信号といえば、ハルヒ達姉妹のパーソナルカラーは信号色に当てはまるなあ…
ハルヒは黄色、『注意』か…なんか言い得て妙だな。
しかしこれはうっかり口に出すと機関に消されそうだ。俺はこの考えを彼方に葬るべく、惰眠をむさぼる事にしたのだった。


おわり