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昔々ある所に、みすぼらしいドールがいました。名前を翠星石といいます。
翠星石は活躍が打ち切られ、未だに映画やゲームで活躍している姉達にいびられていたのです。
可哀相な翠星石。本当はとても高貴で美しいのに。

ある時、集英城でパーティがある、というお触れが町の人々に出されました。
姉達も当然はりきっていました。1番上の姉はこう言います。
「私を知らない人はいないでしょうね。集英城のパーティーでも私が主役よ!」
それを聞いた2番目の姉もこう言います。
「お姉はアタシの全盛期を知らないのね。一般的にも名前を知られてるのは、このアタシの方よ!」
2人の姉が言い争っている隅っこで、翠星石は今日もスコーンを焼いていました。
本当は自分もパーティーに行きたい。でも、自分の活躍の場は打ち切られてしまっているのだから、出て行っても恥をかくだ

けだ…
なんて健気な子なんでしょう。実力を出せば2人の姉なんて屁でもねえのに、翠星石は奥ゆかしい子だってのです。

「翠?あの眼鏡の、…誰だったっけ?打ち切られてたから忘れちゃったわ。とにかく裁縫が得意な子がいたでしょう?
 その子にとっておきのドレスを作っておくように頼んでおいて!頼むわよ!」
「アタシのも頼んどいてよね!」
それだけ言うと、2人の姉はアホ面さげてどこかへ行っちまいました。
だけど翠星石は泣きません。あんなひどい事を言われても泣かないなんて、なんて強い子なんでしょう!
粛々と、チビ人間の所へ仕事を頼みに行ったのでした。


そしてパーティー当日。日が暮れ始めると、城からは花火が打ちあがり、町はいつも以上に賑わっています。

「うーん、いいじゃない!…えーっと、誰だっけ」
「さ、桜田ジュンです」
「そうそう、ジュン君。さすがね、打ち切られちゃってその才能がもったいないわ」
「ホーント。冴えない顔してるけど」
「「じゃ、留守番よろしくー」」
とうとう翠星石に声はかかる事はなく、2人の姉は出て行ってしまいました。とことん性悪な姉達です。

「おい、翠星石」
「なんですか」
「お前も、パーティーに行きたいんじゃないのか?」
「!!す、翠星石が行くと主役を独り占めしてしまうですから…」
本当は行きたいのに気丈にふるまう翠星石。素晴らしい子です。淑女の鑑です。

「あのさ、これ作ってみたんだけど」
そういってチビ人間が差し出したのは、翠星石がお父様からもらったものにも劣らぬ、きれいなドレスでした。
「つ、ついでに作ったんだ。僕だってその…一応ミーディアムだしな」
「でもそんなの、もらってもいいのですか?」
本当は欲しいのに遠慮する翠星石。なんて欲のない子なんでしょう。
「そこまでいうなら着てやるです…」
せっかくの好意は受ける素直な翠星石なのでした。空気の読める子です。


そして着替えた翠星石は、それはそれは美しく…チビ人間はしばらく直視できないほどでした。
「でも、今からお城に向かっても間に合いそうにないですね…」
翠星石がそう言った時、本棚のマンガ本が光り輝き、中から人が出てきたのです。
その人間は魔法使いのようなとがった帽子をかぶり、桃種と名乗りました。

「わたしが君をお城へ連れて行ってあげよう」
そう言って手に持ったステッキを振った途端、チビ人間が馬になり、汚れていたお父様の鞄が綺麗になり、
姉が酔狂で買ってきたバニースーツが、タキシードを着たウサギになったのです。
「さあ、その鞄に入って。ウサギにお城まで連れて行ってもらいなさい。今まで辛い思いをさせて悪かったね…」
そういうと桃種は消えてしまいました。
すると、ウサギが桃種の後を引き継ぐように言いました。
「さあ、お嬢さん。皆はあなたの復帰を待ち望んでおります…」
ウサギはシュッと空間を引き裂くと、翠星石の入った鞄をその空間の穴に引っ張り混んだのです。
「ちょっと待て、僕はどうなるんだ!このままなのか!」
チビ人間の声が聞こえた後、周りは暗闇に包まれました…

翠星石が気がつくと、花火の音と優雅なヴァイオリンの音が聞こえてきます。どうやらお城についたようです。
「お嬢さん、一つ忠告があります。この時間は魔法の時間。それはいつかは解けるもの…
 12時には魔法は解けてしまいます。どうかお気をつけて…おっと」
ウサギは最後に指を光らせると、さっきと同じように空間を引き裂き、その中に入って消えてしまいました。
そして翠星石の手には懐かしい金色に輝く如雨露が。
「これで…これで翠星石復活をアピールできるです!かたじけないです」
いついかなるときも感謝の心を忘れない、賢い翠星石なのでした。


集英城の大広間ではパーティが開かれています。それぞれが編集長に自分を売り込もうと必死です。
翠星石の姉2人も大広間にいました。
「なによ、確かに別のお城に出てたりするけど、わたしの器は1つじゃ足りないのに…ムカつくわね」
「アタシのだって、あっちじゃ間隔が長すぎるから、ここで活躍してあげてもいいって言ってるのに…ケチな編集長だわ」
どうやら2人はお眼鏡に適わなかったようです。ざまあねえですね。

その時、大広間が一瞬静まり返りました。翠星石が入ってきたのです。
静々と歩く翠星石に、みんなの目は釘付けです。そこへ若い編集長が翠星石に声をかけました。
「君の事を詳しく知りたいんだ」
こうなればしめたものです、翠星石は如雨露を振りかざしました。
「スィドリーム行くですよ、健やかにぃ~伸びやかにぃ~」
翠星石の周りはみるみるうちにきれいな花で包まれます。若い編集長は叫びました。
「本物だ!これで全員揃ったぞ!」

大広間は拍手で包まれました。照明が落とされ、太鼓が鳴り響きます。
どこからかマイクを受け取った若い編集長は、ジャンプしながらまた叫びました。
「次の主役は、この子達です!」
一斉にライトが向けられたその先には、7つの小さい影がありました。
「遅かったわね、翠星石」
「翠星石!」
「わぁ、翠星石久しぶりなの~」
「真紅、蒼星石、チビ苺!」
真紅達に向かって優雅に手を振る翠星石。とても絵になります。
若い編集長に手を引かれて壇上に上がり、ドール達との再会を堪能した後、パーティーはこの7人を中心に進んだのでした。
魔法が解ける前に主役を射止めるなんて、翠星石はさすがですね。
「キィー!クヤシー!わたしは認めないわよ!」
「出来レースよ出来レース!こんなのズルイわ!」
うるせーのが2人ほどいますが、主役からは遠くて見えません聞こえません。
めでたしめでたし。


「ダメダメこんなのダメ!なんかやりっぱなしが多すぎるわよ?魔法とか馬とか」
翠星石の渾身の傑作は一瞬にして否定されたのです。せっかく映画の台本を募集してたハル姉を助けてやろうと思ったのに。
「意味がわからないし笑えないわ。とりあえずこの姉2人をどうにかしてよね」
シンデレラの姉ってのはそういうもんです。
「多数決ね。反対の人、ハーイ!」
「ハーイ!」
ちょ、これは数の暴力です!
「なに言ってんの、純然たる民主主義の法に倣っただけよ」
「そうそう、残念でした」
ちぇ、まあいいです。これから翠星石はスターダムを駆け上がるのですから!
きっとこの台本通りに、現実も翠星石を欲しているのです。
応援してくれる人たちがいる限り、翠星石は何度でも蘇るのです!
今後とも、よろしくするですよ!

おわり