「……んー……」
居間に敷かれた三枚の布団。
そこに並ぶのは二人の少女と一つの大きな鞄。
ハルヒ、アスカ、翠星石(の鞄)だ。
息も凍るほど冷えきった深夜。
アスカは目を擦りながら体を起こした。
何のことはない、トイレである。
「……さむ」
小さく身を震わせて、トイレに向かう。
その帰り道。
暗闇の中目測を誤ったアスカは、翠星石の鞄に躓き盛大にひっくり返った。
「うやぁ」
「ぐえっ」
潰されたハルヒが目を覚まし、何事かと辺りを見回す。
「ごめんハル姉。転んだの」
「人のいない所に倒れなさいよね。もう、目が冴えちゃったじゃないの」
「ごめん」
謝りながら布団に潜り込むアスカ。
ハルヒとアスカの間には大きな鞄。
「……正直、邪魔よね」
「そうね」
溜め息混じりのハルヒの意見にアスカも同意する。
「なんで鞄に入って寝なきゃいけないのかしらね」
「さぁ。鞄に何か秘密があるんじゃない?」
「秘密……ね」
秘密と言う単語に、ハルヒの目が光る。
「開けてみようか」
「寝てればバレないんじゃない?」
正直さっさと寝てしまいたいアスカは適当に同意した。
ハルヒは鞄を近くに寄せ、手を掛ける。
「開けるわよ」
「どーぞ」
アスカの気の無い返事に眉を寄せながらも、ハルヒは鞄を開いた。
「……………」
「……ハル姉?」
反応の無いハルヒを不審に思い、声を掛ける。
「……………」
しかし、返答は無い。
たっぷり一分程停止して、ハルヒは鞄を閉じた。
「……寝るわ」
それだけ呟いて、ハルヒは布団に潜り込んだ。
「何かあったの?」
「別に……別に何も無かったわ」
「……そう」
ハルヒの言動に首を傾げたものの、自分の睡眠欲を優先したアスカは布団に横になり、目を閉じた。

それからハルヒは、鞄を開けて見たものを語ろうとはしなかった。

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最終更新:2008年01月26日 00:25