彼女の目は光に透かすことでどこか違う世界の輝きを帯びる。硝子細工といった無機質なものに収まることのないその瞳が私を見上げて固まった。
優しげな、鳶色の前髪が象牙のような額の上を滑る。糸のように細く、整えられた人毛よりしなやかで豊かな髪がその背中の後ろで揺れた。純白のレースで出来た変わった形状のヘッドドレスが彼女を飾り立て繊細なイメージにさせる。
睫に縁取られたオッドアイがゆるやな頬と小ぶりな鼻、淡い色に染まる柔らかそうな口が次の瞬間、大きく動いた。
「……あああああ!! ルリルリのストーカー!」
「今は自宅警備隊隊長としてこの家を見回り、ルリルリを観察、いや安全を願って」
「言い訳をしたって見苦しい! 死にやがれですぅっ!」
可憐な脚から繰り出される跳び蹴りを私は甘んじて受け入れた。
最近の私の日常でもある。
ロリコンとはこうして世間の偏見から強くなるのだ。
ズタ袋になった私を引き取りに来た冬月の冷たい目がまた私を強くさせる。
END
副題『碇ゲンドウの破滅する常識』