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最近アスカの元気がなかった。とはいってもSOS団がらみで時々外へ連れ出すと、
ブーブー言いながらもはしゃいでいるし、翠や有希との漫才もしてくれる。
でも1人の時のアスカを見てると、どこか遠くを見てる気がしていた。
そしてなにより、ご飯を残す。本人はダイエットだなんて言ってるけど…
わたしには心当たりがあったけど、認めちゃうと姉として悔しいから、その前に自分でいろいろ工夫してみた。
アスカの好物ばかりを並べてみたり(露骨なのは嫌だから、そうじゃないのも一品混ぜておいた)
味を薄めにしてみたり、お皿を変えてみたり、向こうの方にいた事もあるらしい翠にドイツ料理を聞かせてもらったりもした。
でもだめだった。わたしの料理のレパートリーが増えるのに比例して、アスカの残すご飯の量も増えていく。
もう限界だった。姉としてのプライドよりも、アスカの身体の方が大事だ。出会った時のようなアスカを二度と見たくなかったから。

翌朝シンジは大量のビニール袋を持参して家にやってきた。いくらなんでも多すぎる。
その後ろには「はぁ~い♪」と手を振る手ぶらの葛城さんも一緒だった。呼んでないのに。
アスカはいつも寝坊だから、ご飯が出来るまで寝かせておくことにする。
翠の相手を葛城さんに任せて、私はシンジを手伝いながらお手並みを拝見することにした。
からかわれているらしい翠の怒鳴り声をバックに、シンジの手際は確かによかった。でもそれは男子中学生にしては、だ。
時々口を挟みそうになったけど、見た目はともかく味がいいという料理が無い事はない。
シンジの料理の真価は味にあるとして、わたしは黙っていた。
あらかた完成し、大笑いしている葛城さんと、その横で顔を真っ赤にして半泣きだった翠に、アスカを起こしに行かせる。
下りてきてシンジの姿を認めたアスカは、白から青、そして赤へと信号の様に顔色を変えてから逃げようとしたけど、
葛城さんが阻止してくれた。いてくれてよかったわ。呼んでないけど。

静かに始まった朝食。でもシンジの「アスカ、おいしい?」の一言で空気は一変した。
うるさいだの、腕が落ちただの、ハル姉のほうがキレイに盛り付けるだの言いながらもおかわりまでする始末。
わたしも食べてみた。おいしい。でも期待外れ。自分の作ったものとそこまで差があるかどうか首をかしげていると、
アルコールの臭いと共にいつの間にか隣に葛城さんが座っていて、
「それは調味料の差よん♪」とビールの臭いを吹きかけてきた。
調味料?シンジが作っているのを見てたけど、特別なものなんて使ってなかったわ。料理は愛情とだでもいうわけ?
わたしの反論に葛城さんは人差し指を立ててチッチッチ、と横に振る。なんか腹立つわね。
そして「調味料はシンジ君自身よ」
意味が分からないので返事に困っていると、葛城さんは立て続けに、わたしが今日来た理由が分かるかと聞いてきた。
わからないと答えると、アスカに会いたかったからよ、と言われた。もしかしてアスカは…
ようやく事態を飲み込みだしたわたしを、優越感たっぷりの目で見ながら葛城さんは続ける。
「花だって水だけじゃ元気になれないわ。お日様も必要なのよ。アスカには両方とも必要なの。シンちゃんも、ハルちゃん達もね」
そうだったのか。わたしはアスカがシンジの料理を欲しているのだと思っていたんだけど、少しずれていたみたい。
アスカに関してはまだ葛城さんの方が一日の長があるようだ。なんか、悔しかった。

「ハルちゃんだってほぼ毎日パトロールしてるみたいじゃない?無意識に太陽を見に行ってるのよ、ハルちゃんのね」
今度こそ本当に意味が分からない。SOS団の本懐は世の中の不思議を見つけることであってそれを夏休みだからって見逃す事はSOS団として…
「さあさ、久しぶりにアスカの顔も見れた事だし、レイ達も呼んでなんかしましょうよ」
わたしは無視され、葛城さんはまだ膨らんでいるビニール袋の方へ歩いていく。あれはお昼の材料なのかしら。
うひょ~という悲鳴と共に、ビニール袋からは大量の缶が姿を現した。全部ビールみたい。
プシュと音をさせて早速飲み始める葛城さん。本当にアスカに会いに来たんだろうか、呼んでないのに。