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惣流アスカの溜息

 

「んー、ヒマ」
 ハル姉も翠も外出中。
 せっかくの夏休みだってのに、あたし家でひとりか。
 うん、なんかすごく寂しい人みたいじゃない?
 お日さまも浮かれきったように熱を放って、ハメを外すこと推奨みたいな照りつけ方を
してるってのに、あたしはクーラー作動音とセミの声鑑賞中?
 うら若き乙女がこれじゃダメよ。
 もっと、素敵ロマンス満載の夏を!たとえば海で、ビーチで、水着姿のあたしに群がる
男たち!この暑さもきっとあたしに魅入られた彼らの体温のせいね!だってあたしは
あの太陽より輝いてるんだから!仕方ないでしょ?
 ……なんてますます寂しくなるようなことを考えていたら、翠が帰ってきた。
「ただいまです」
 いい遊び相手が来た。うら若き乙女としてダメなことには変わりないけど、
姉として妹の面倒を見てあげることも……
「ちょ、ちょっ、ちょっと出かけてきますぅ!べっ、別に大した用事じゃないですよ?」
 頬を桜色に染めて、いえ、季節的には真夏の果実色に染めて? ああもう何色でもいいわ。
行き先も用事も瞬時に察しがつくような、むしろ見抜いちゃってくださいと言わんばかりの
セリフを残して、翠は帰宅と同時に家を飛び出してった。この敗北感は何?
 またひとりか。
 ハル姉も当分帰ってくる気配ないし。

 

 そうね、仕方ないわよね。妥協とかそういうんじゃないわよ? 何かに飢えてるわけでも、
退屈を嫌っているわけでもないの。ゆったりとのんびりと、時間の流れそのものを楽しむだけの
心の余裕は持ち合わせているわ。ただ、できれば、時間は少しでも有意義に使いたいじゃない?
まぁ、有意義かどうか微妙なとこではあるんだけど。なんていうのかしら、人との関わりを
大切にするっていうか。あたしの社交性がついそうさせちゃうっていうか。それで、たまたま、
思いついたのよね。普段わりと近くにいる人間だし。
 あたしはシンジの携帯に電話をした。

 

 いつも話しているのに、こういう時に電話をかけると、ちょっぴりわくわくする。
なんでだろ。特に、呼び出しのベル。ベルとベルの間の無音。
 ベルの音が途切れると、せき立てられるように言葉が出てくる。
「あ!シンジ?あのさー」
『ただいま、電話に出ることができません。発信音のあとにメッセージを……』
 受話器を置く。無機質なナレーションの音声が耳に残っている。
 大きなため息をついた。
「なによぉぉぉ!? みんなしてさぁぁぁ!!」
 10分後、お隣の家でアイスをごちそうになりながら、あたしはルリちゃんとゲームに興じていた。
 ま、ダラダラすんのも夏休みの醍醐味よねっ。