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ゴールデンウィーク。ニッポン人は働いてばかりのイメージがあったけれど、休む時は休むものなのね。
去年はネルフへ張り付いてたアタシも、ハル姉の不思議パワーで使徒も来なくなった今、普通に連休を満喫していた。
もう連休も今日と明日を残すのみ。この連休、特にどこへ行くでもなかった。もちろんヒカリや他の友達とショッピングに行ったりはしたけど。
そして、それはハル姉も翠も同じみたいだった。連休だから特別なことをするんじゃなくて、普通の休日を重ねていってる感じ。
普通が嫌いなハル姉にしては珍しいな、とアタシは思っていた。

今日ものんべんだらりとリビングで雑誌を広げるアタシ。午後からはヒカリと約束がある。
ハル姉は連日の不思議探索とかでいない。翠はテレビで人形劇を見ていた。いつもの休日の光景だ。

「はあぁ~、ゴールデンウィークも終わっちまうですぅ」
そんな呟きが聞こえたので翠の方を振り返る。翠はテレビの方を向いたままだった。

「アンタに連休もクソもないじゃない」
翠は学校などには行っていないはずだ。

「おバカですねぇアス姉。翠星石はアス姉の事を心配してやってるんですよ?」
アタシには翠の言っている事がわからなかった。素直にそう言い返す。

「連休だってのに、特にどこへ行くでもなく家でゴロゴロしているアス姉が哀れだって言ってるんですぅ!」
アタシは瞬時に切れかけたが、すぐに治まった。アタシも成長したもんだ。才色兼備にこの心の広さ。何で加持さんは振り向いてくれないんだろう。
でも、もうここにいるのも気分が悪い。アタシはわざとドタドタ足音を立てて部屋に戻り、ヒカリとの約束の時間まで部屋を出なかった。

 

「ふふっ、翠ちゃんの言いたい事、なんとなくわかるなあ」
結局昼食をとらずに家を出たアタシは、ヒカリにお腹の鳴る音を聞かれてしまい、ファミレスで遅い昼食をとっている。
そこで理由を聞かれたので、さっきのやりとりを話してみたところ、ヒカリはそう言った。
アタシにはわからないのに、ヒカリには翠の事がわかるという事に少しだけ嫉妬しながら、どういう事か聞いてみる。

「翠ちゃん、寂しいのよ。多分、アスカとどっか行きたいんじゃないかな…」
どこをどう聞けばそう聞こえるのか。アタシはそのまま声に出して訊ねた。

「どこをどうって…翠ちゃん、そういう子じゃない。寂しいって、言えないのよ。もちろん、そうだって言い切る事はできないけど…」
「午後の組み合わせを決めるわよーっ!」
店の入り口から聞き慣れた声が聞こえてきた。その人物は目ざとくアタシ達を見つけ、手を振りながらこっちに来る。

「あ、アスカっ!ヒカリちゃんもいるのね~こんにちは。ここ、座ってもいい?」
座ってもいいか聞きながらすでに座っているのは、もはやハル姉の専売特許なのでアタシは突っ込む気もない。

6人掛けのテーブルに7人が座り、次々と注文をするハル姉と、そのたびにビクついているキョンさんを見ながら
アタシは翠の事を考えていた。翠だって、時々真紅ちゃんの所へ遊びに行ってる事は知ってる。でも、家では1人なんだろうか…
そんな姿が目に浮かんだ瞬間、アタシはテーブルに手を叩き付けていた。

バン!

しまった…ハル姉達どころか、周りのテーブルの客達もアタシの方を見ている。
こうなったらヤケだ。アタシは咳払いをひとつして、ハル姉に尋ねる。

「ハル姉、明日はアタシと付き合って」
ハル姉はきょとんとしていたが、数回瞬きをした後にこう言った。

「明日も不思議探索があるんだけど」
げえっ、明日もやるのかよ、というキョンさんの悲鳴は置いといて、アタシはハル姉に突っ掛かる。

 

「ハル姉は妹よりも不思議探索の方が大事なの?」
身を乗り出してそう言ったアタシを手で制し、ハル姉は続けた。

「待ちなさいよ。まだ行かないとは言ってないわ。不思議探索を中止するほど事ならアスカに付き合うわよ。
 わたしだってあんた達と離れたくないから、合宿も夏休みに回したんだし」
え?どういう事?しかしアタシはポカーンとするばかりで言葉が出てこない。

「へえ…ハルヒにしては珍しくどこも行きたがらないと思ったら、そういう事だったのか」
「そうよ!今年の連休は前後半別れてて中途半端だし。その代わり、夏休みの合宿にはアスカも翠も強制連行よ!」
「おまえなあ、妹の人権を少しは尊重すべきだとは思わないのか?」
そう言って頭をはたかれているキョンさんはほっといて、アタシは今朝の出来事を話してみた。

「なるほど…確かにヒカリさんの言うように、寂しいととらえる事もできますね」
古泉さんが笑顔を崩さずにそう言う。この人は疲れないのだろうか。

「そうか?単に、休みに家にいて邪魔だって言ってるようにも聞こえるぞ。俺も昨日母さんに言われたし」
「あんたは本当に邪魔なんでしょ、誘ってやってんだから感謝しなさいよね」
「ああ感謝するさ、おかげで財政破綻しそうだがな」
ま~た始まった。もうこの2人はほっとこう。アタシは他の4人に顔を向ける。すると朝比奈さんと目が合った。
朝比奈さんはアタシが意見を求めていることに気づくと慌てだし、でも真剣に答えてくれた。バカシンジも見習って欲しい所だわ。

「え、えっと…きっと翠ちゃんは、連休中に何かあると思ってたんじゃないでしょうか…
 でも残り2日になっても何もなくて、それでイライラしてキツイ言い方になっちゃったんだと思います…」
「わたしも同意見。性格から分析して妥当な結論。明日は誘ってあげることを推奨する」
朝比奈さんに長門さんも続く。それにしても朝比奈さんて意外に説得力ある事言うのね。アタシにもそんな気がしてきた。

 

「でもさ、わたしは連休初日に不思議探索に誘ったのよ?それでも嫌だって言ったから、予定があるのかと思っちゃって」
ハル姉が割り込んできた。どうやらキョンさんは無条件降伏したらしい。尤もハル姉に勝てる人間なんてアタシは知らない。

「連休の序盤はもっと大きい事を期待して、断ったと考えられる」
長門さんが素早く返答する。なんだか姉として情けなくなってきた。アタシよりみんなの方が翠の事わかってる。

「そうだな。なんたって、ハルヒの妹だしな」
早くも復興したキョンさんが付け加える。

「あ…そっか…」
意外にもハル姉はシュンとしてしまった。ひょっとしたら、ハル姉もアタシと同じで情けなく思ってるのかもしれない。
でもやっぱり、ハル姉はアタシとは違った。顔を引き締めると、立ち上がってこう宣言する。

「予定変更!午後は明日の準備よ!どうせならローゼンメイデンもネルフもネルガルも全員誘って鶴屋山探索にでも行こうじゃない!
 あそこは広いから今まで敬遠してたけど、この人数で行けばきっと何か見つかるわ!」
唖然とする5人。けどアタシは違った。この決断力がアタシにはないもの。ハル姉のいいところ。アタシはとっさにこう言った。

「あ、アタシ、ミサトに連絡してくる!」
アタシは店を出て、ミサトに電話した。案の定酔っ払っていたけど、そのせいか連絡をまわしてくれることを快く承諾してくれた。
店に戻ろうとすると、勘定を払っているキョンさんを除いて、みんなそれぞれ散っていくところだった。

「アスカ、それじゃまた明日ね。お弁当、作ってくから。翠ちゃん絶対連れてきてね?」
ヒカリもそう言って帰っていく。最後にキョンさんとハル姉が並んで出てきた。

「キョン、それじゃ明日も絶対来るのよ!来なきゃ死刑20回だからね」
「わかったよ。明日は節約できそうだしな。俺の妹も連れてくるよ」
「当然よ!あーわたしもバカだったわ。もっと早くこうすべきだったのよ」
「大丈夫だ、ぎりぎりセーフってやつだよ。それじゃあな」
ポンとハル姉の肩を叩いてキョンさんは去って行った。なんかかっこいいと思っちゃったのは秘密。


「キレイな夕焼けねー、明日は晴れそうね!」
ハル姉が晴れると思えば晴れるんだろう。でもそれとは関係なしにキレイな夕焼けだったハル姉との帰り道。

「翠は来るって言ってくれるかな?今朝の事、怒ってなきゃいいんだけど」
「そんなので怒る子じゃないわよ。それにジュンも蒼ちゃんも来るんだし、きっと来るわよ」
それでもなにか胸につっかかるものがある。

「ねえ、翠にはアタシから言いたいんだけど、いい?」
アタシの提案にハル姉は少し顔を傾けたが、

「いいわ。わたしは1回断わられてるし、その方がいいかもね。それじゃあわたしは夕飯作っちゃうから、その間にお願いね」
そう言って笑ってくれた。


家に着き、玄関に入るとテレビの音が聞こえる。翠はリビングにいるようだ。

「ただいまー!」
そう言いながらハル姉が入っていく。小さくただいまと呟きながら、アタシもそれに続く。

「あ、お姉おかえりですぅ、翠星石はお腹がすいたですぅ」
よかった。翠は怒ってはないみたい。ハル姉がキッチンに向かうのを確認してから、アタシは翠にきりだした。

「ねえ翠、明日空いてる?」
ハル姉を追っかけていた翠は、しばらくこっちを振り向かなかったが、そのまま

「ま、まあ忙しいですけど、空けてやらん事もないですぅ」
と言った。アタシにもわかる。翠、ごめんね。それを言わせるのが最終日前日になっちゃって。

「今日偶然ハル姉と会って決めたんだけどさ、明日みんなで鶴屋山の探索しようって。翠も来るのよ」
お伺いを立てるように聞けば断わられるかもしれない。そんな気がして、少しハル姉を真似て言ってみた。

「まーた不思議探索ですか?ハル姉も矢追純一並にしつこいですねぇ……しゃーないです、行ってやってもいいですけど、条件があるです」
翠はちらっとテレビに視線を移してから、続けた。

「明日が晴れればピクニック代わりにもなるです。そしたら行ってやるです。それじゃあ、翠星石はスケジュールを調整してくるです」
そう言って翠はリビングを出て行った。アタシはテレビに目をやる。
すでに明日の天気の予報は終わっていたが、明日のこの地方の降水確率予想が0になっているのは見えた。

夕飯ができるまでの間、庭に出て、満天とは言えないけど、雲ひとつない星空を眺める。
ふと後ろを向くと、窓に何か吊るそうとしている翠を見つけた。
アタシは見なかった事にして、リビングに戻る。翠って結構念には念を入れるタイプなのね。

夕飯時は明日の話で盛り上がった。もう翠も楽しみにしてる事を隠そうとしなかった。もちろんアタシも、ハル姉も。

「休日にしてもなんにしても、量より質よね!明日は最高に楽しくするわよ!」
ハル姉がこう言ったのが印象的だった。


午後10時。翠はもう寝てしまい、ハル姉は明日のお弁当の仕込みをしている。アタシも部屋の電気を消して寝ようとしたけど、
ふと思いつき、ティッシュをまるめてもう1枚のティッシュで包み、髪をまとめるゴムを巻いて、窓に吊るす。
アタシって、こんなに念には念を入れるタイプだったっけ?ちょっとだけ自分で自分に笑って、布団に入った。


おわり