「はるひけ」
『第一話 ホットケーキにしましょう』

家に帰ってくる翠星石。
翠星石「ただいまですぅ」
アスカ「おかえり」
家にいるのはアスカ一人。
アスカは一人居間で暇そうにしている。
アスカ「と言うかアレねあんたは早く帰って私の遊び相手をすべきよ。こんな時間までどこほっつき歩いてたの、この野郎」
翠星石、居間の時計を確認。時間は四時半。
翠星石「勝手な理屈を並べ立てた上この野郎ですか。これはもう、あれですぅ」
翠星石、右向け右で庭に向かう。
翠星石「花の世話をしてくるです」
アスカ、慌てて翠星石を止める。
アスカ「ごめん!遊んでください、暇なのよ私!」
翠星石、「ヒマ」という言葉に反応。
翠星石「ヒマってアス姉…晩ご飯の用意はどうしたですぅ?」
アスカ「え?」
アスカはその言葉の意味を解せ無い。
回想~
ハルヒ「今日は帰り遅くなるから、晩ご飯お願いね」
以上回想~
翠星石「ハル姉が言ってたですぅ」
アスカ「ああ…そういえば」
翠星石、テーブルにあったせんべいを一枚掴むと、庭へ向かう。
アスカそんな翠星石の足を掴み、引き止める。
アスカ「手伝って、翠星石様」
翠星石「花たちに水をやりたいですぅ」
アスカ「私の料理の腕を知ってるでしょう?今私を見放したらどうなるか」
アスカはウフフフフと不敵な笑みを浮かべている。
アスカ「庭の手入れを終えていい感じに空腹のあんたをかつてない一皿が襲うぞぉ」
翠星石はその光景が思い浮かび、冷や汗を垂らす。
アスカ「全部飲み込んでもらうよぉ。うふふふふ」
翠星石の心がぐらぐらと揺らぐ。
アスカ「だから手伝って」
耳元で囁かれるその一言で、翠星石はエプロンをつけることとなる。

アスカ「よーし、じゃあ何をつくろう?」
台所でエプロンをつけたアスカが気合を入れる。しかしその横で翠星石は不満顔。
翠星石「まず、冷蔵庫のチェックです」
アスカ「はいはい」
冷蔵庫を開けるアスカ。しかし中は牛乳やバターなどで、食材と呼べるようなものはない。
アスカ「シェフは機嫌をそこねた!こんな材料で料理はできない!」
遅れて冷蔵庫を確認する翠星石。翠星石、アスカを背中越しに眺めながら、
翠星石「料理に必要なのは腕です。愛情といい食材がそれに続くですぅ」
アスカ、翠星石を睨みつけるが、翠星石は動じない。
翠星石「しかしアス姉は腕はおろか愛情もゼロです。食材でごまかすのも不可能ときたら……エゴのかたまりの生ゴミになることうけあいですぅ」
翠星石、アスカ一人台所に残し、居間へ。
アスカ「…どこ行くの?」
翠星石、居間の電話を取る。
翠星石「出前を頼むですぅ」
アスカ「!」
アスカ、慌てて電話を切る。
アスカ「晩ご飯は私が作る!他者の介入は認めないわ!」
翠星石「アス姉……ムキになるなですぅ。電話一本で食卓に笑顔が戻るですよ?」
アスカ「ここで引き下がっちゃ姉としての立場がないでしょ」
アスカ、腰に手を当て思案。
アスカ「晩ご飯のイメージに縛られすぎていたようね。世間の常識に合わせることなく…簡単確実おいしいもの…」
アスカ、ひらめく。
アスカ「ホットケーキを焼きましょう」
翠星石「お」
翠星石、ホットケーキという単語の表情が明るくなる。
翠星石「いいです。それ、いいですぅ。でかしたです、アス姉……」
アスカ、翠星石に褒められ、まんざらでもない。
アスカ「そうでしょうそうでしょう。あんたホットケーキ好きでしょう」
翠星石「どんなバカでもそれなりに焼けるですし」
アスカ「お前からキツネ色に焼いてやる」
アスカ、フライパンを振り上げる。


料理開始。ホットケーキ粉をボールでかき混ぜる翠星石。台所でアスカがフルーツの缶詰を見つける。
アスカ「ねえ翠星石」
翠星石「ん?」
アスカ「フルーツを入れよう!」
翠星石「ん」
翠星石、悪い予感がする。
アスカ「ヨーグルトもいいな。あ、ジュースも入れよう」
翠星石「ちょ…待つです!工夫するなです!素人の浅知恵は危険すぎるです。ホットケーキはこれが最も完成された…」
アスカ「甘いからきっと相性いいわよ。みんな入れちゃおう」
そういうと、アスカはジュースやヨーグルト、缶詰を翠星石の持っていたボールにどぼどぼとぶち込んでゆく。
心底楽しそうなアスカに、不安で表情をゆがめる翠星石。
アスカ「さあ焼くぞ」
全てを混ぜたボールを翠星石から取り上げると、意気揚々とアスカはフライパンへ向かった。
そして翠星石は固まったまま動けなかった。

火に掛けられたホットケーキが、ぐつぐつと煮立つ。しかし、固まる様子は無い。
さすがにアスカもこれは危険だと気付き始める。
アスカ「か……かたまらない…」
翠星石「当然です。生地がゆるいです」
アスカ「粉は?」
翠星石「もう無いですぅ」
アスカどうしようもなくなったこの状況で、遂に諦める。
アスカ「…そいじゃ、まあ、その…クリームシチューってことで」

ハルヒが家に帰ってくる。
ハルヒ「ただいまー。遅くなってごめん」
翠星石「ほら、飲んでみるです。ほら、おかわりもあるですよ」
アスカ「ごめんなさい」
ハルヒは、翠星石が得体の知れない液体をアスカに食べさせる光景を、不思議そうに眺めていた。

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最終更新:2007年02月13日 20:55