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普通の学生なら昼までは余裕で寝過ごすような休日。
突然かかってきた電話に起こされた俺は、どういうわけか朝っぱらから駅前に向かわされていた。
休日に女子から出かけようと誘われた…と言えばその通りなのだが、だらだら寝ているであろう他の男子に対して優越感を一切感じられないのは一種の精神病なのだろうか。
いや、違う。断じて違う。
俺の思考は正常に働いているはずだ。
電話の相手があの唐突で突飛な団長様なら誰でもそう感じるだろう。

しかし…一つだけ気になることがある。
ハルヒが最後に言ったあの言葉…。

―『あ、あと今日は妹達も一緒だからね。それと何人か連れがいるから』

妹…ねえ。
せめてあの性格がハルヒだけに現れた突然変異ならいいのだが。


駅前につくと既に三つの人影があった。
「遅いっ!罰金!」
さて、俺は何度この言葉を聞いたんだろうね。
こうなることを予想して、ハルヒに呼ばれた時はいつもより多く金を持ってくるようになった自分に嫌気がさしつつ、やれやれと溜め息をついた。
「へ~、あなたがハル姉の彼氏~?」
ハルヒの横にいた中学生らしき少女がさらりと言った。
「な、何言ってんのよ!?こいつはSOS団の団員その1でただの雑用で…」
「はいはい、さっきのお返しだって。ムキになるところがおかしいけどね~」
まだニヤニヤしている少女と反論を繰り返すハルヒ。
事実無根に相違無いので、別に反論するのはいいのだが「バカ」とか「アホ」とか俺を卑下しまくるのはどうしたものか。
それにしてもこの少女、見た目はハルヒに似てないが性格はそっくりだな。
軽く頭痛がしてきた。
「アスカ、そろそろ止めなよ」
これまた中学生らしき少年が少女を宥め始めた。
ほっ…少なくともこいつは俺と同じ良識ある一般人のようだ。
妙なところに安心しつつ、不毛な争いが終わりを告げたのを確認して、簡単な自己紹介が始まった。

「それでハルヒ、今日は何の用件だ?」
呼ばれて来たのはいいのだが、まるで計画を聞いていない。
なんとなく呼んだんじゃないだろうな。
「そんなわけないでしょ。買い物よ買い物。でもその前に寄るところがあるけどね」
買い物に何故俺や俺と同じくドタキャンならぬドタ呼びされた彼(シンジという名だそうだ)が、わざわざ付き合う必要があるのか聞きたいが、聞いたところで清々しいほど華麗にスルーされるのは判っている。
「それで、何処に行くって?」
「桜田君の家。もう末の妹が迎えに行ってるわ」
三姉妹と聞いていたのに、一人いなかったのはそういう訳か。
「桜田って…誰だ?」
「翠星石の彼氏よ」
先ほどの少女(名をアスカという)が答えた。
翠星石というのはおそらく末の妹のことだろう。
ん、ちょっと待てよ。
「なんでそいつは呼びださなかったんだ?」
「ちょっと問題があってね…」
どんな問題か知らんが、無理やり呼び出されずにすむ方法があるなら、ぜひご教授願いたいものだね。

「チビ人間!いい加減観念して出かけるですぅ!」
「うるさい性悪人形!」
件の桜田家に着くと、玄関前で緑色の服を着た小柄な少女が何やら叫んでいた。
家の中からは少年の怒声も聞こえる。
「あれは一体どうしたんだ?」
「ああ、あれはね…」
説明によると、どうやら彼…ジュン君は最近流行り(?)のヒッキーのようだ。
詳しい理由は判らないそうだが、学校で何やらあったらしい。
その彼を連れ出そうと言うわけか。
「なかなか難航してるみたいね」
アスカがひょいと顔を覗かせた。
俺とシンジ君のことから考えて、この少年もドタ呼びされたのだろう。
まあ、普通ならそんな呼び出しには抗うだろうし、彼の場合外に出たくない理由もある。
「嫌なものを無理やり誘うのはやっぱりおかしいんじゃないか?それに何か予定があったかもしれないだろ」
「それは無いわよ。居候の子の話によれば、一日中家にいるみたいだし」
いやいや、だからと言って無理やり誘う理由にはならんだろ。
「このままじゃ埒が明かないわね…キョン、あんた中に入って引っ張ってきなさい。」
「違うわよハル姉。ここは陰気で根暗のシンジに行かせりゃいいのよ」
「お前が行け」
「アスカが行ったらいいだろ」
理不尽全開の命令に反論して四人で喧喧囂囂と言い争いながら、俺はせめて末の妹くらいは凡人並みにしっかりしてるだろうなという淡い希望を抱いていた。
末っ子はしっかりしてると言うし、なにより三姉妹全員に自己中遺伝子があるなんて確立はそうそう無いはず…
「え~い、往生際の悪い野郎ですぅ!スィドリーム!!」
「うわーーーーっ!」
緑色の光があたりを照らす中、俺はハルヒみたいな奴がもし三人ほど存在していたら、世界どころか宇宙はどうなっちまうんだろうなとかどうでもいいことを考えていた。
もうどうにでもしてくれ…。