ある日、家に帰ってダイニングに入ると、電子レンジの前に翠がいた。その手には卵らしきものが。「ゆっでたっまごをつっくるですぅ~♪」
だあぁっ!翠のバカ!この前爆発させてたのを忘れたの?「あ、アス姉おかえりです」早く卵を出しなさい、危ないでしょ「フッフッフ、翠星石を見くびらないでほしいです、ローゼンメイデンは同じ過ちを繰り返す人類とは一味違うですよ?」どこのセリフを引用したのか知らないけど、そんな事より卵を出しなさい「大丈夫です、ちゃんとラップに包んでるです」え?ラップに包むと大丈夫なの?「翠星石の思いつきですぅ」腰に手を当てて胸を張ってそう言う妹。・・・アンタバカァ?アタシは眉間に指を押し付けてそうつぶやいた。「ほらでも、爆発しないですよ?」確かに、普通に入れただけだと爆発するであろう時間が経っても、爆発しない。もしかして本当に効果があるのかしら?アタシがレンジの中の卵を見つめていると、「これは翠星石の分です、欲しかったら自分で作るですよ」そんなに浅ましくないわよ、アタシは。
チーン「でっきたっですぅ♪ゆっでたっまごっです~ホッホッホ~おいしそうですぅ」どう見てもただのゆで卵だ。でも翠は自分の思いつきがうまくいって嬉しかったのだろう。アタシに見せ付けるようにゆで卵をレンジから取り出した。「ふっふ~ん♪お塩を忘れてたです、ゆでたまご、おとなしく待ってるです」食卓の上にゆで卵を置いて、キッチンに戻ってきた翠。なんかアタシも小腹が減ってきたな、なんて思って冷蔵庫の中を覗いたその時
ボン!
何が起こったかわからなかった。翠も同じように呆けている。「ただいま~!今日ネットをいじってたら面白そうなの見つけちゃったのよ~♪卵、卵・・・あれ?」ハル姉の声。リビングに入ってきたらしい。「お、おかえりですぅ」翠がアタシの後ろに隠れながらハル姉に挨拶をした。怒られると思ったからだろう。「ちょっとちょっと!これ、どういう事よ!」「ひ、ひいぃぃ~」ハル姉がこっちに来た。こら翠、もう観念なさい。アタシも謝ってあげるから。アタシが止めなかったのも悪かったし。「だったら姉らしくドーンと1人で罪を被って欲しいですぅ」・・・こいつは。
「ねえ!これ、やっぱりラップに包んで作ったの?どんなだった?ねえ、どっちが作ったの?」?ハル姉あんまり怒ってない。それどころか目が輝いてる気がする。「わたしもちょうどね、さっきネットで面白いのを見つけたの!ラップで包んで卵を暖めると、レンジの中で爆発しないで時間差で爆発すんのよ! レンジが部室になかったから家で作ろうと思って」う~む、なんだか話が読めてきたわ。ほら翠、ハル姉は怒ってないから説明なさい。「翠星石が前回の失敗を踏まえて、ラップで包んで作ったです・・・でも爆発は想定外ですぅ」顔を半分だけ出して翠が説明する。おとなしいとカワイイわね「そうなの?2人とも卵から離れてたから、知ってて作ったのかと思っちゃった。 あっはっは♪それにしてもさすがわたしの妹ね!同じ事を思いつくなんて。 ほら、片付けましょ、アスカも。それでもう1回作りましょっ!」両手を広げてハル姉は言った。「ひいぃ、もうゆで卵はごめんですぅ」またアタシの後ろに隠れる翠。スカート引っ張らないでよっ「・・・そ、まあいいわ。結構すごいみたいだし。じゃあ片付けましょ、掃除機持ってくるわ」
そう言って、ハル姉はリビングを出て行った。やけにあっさり引き下がったわね。きっと後でSOS団で作るんだろう。キョンさん達ごめん。翠、片付けるわよ。「アス姉、翠星石は急にラップで包む事を思いついたです」翠はアタシのスカートを握ったままそう言った。「やっぱりハル姉の」ストップ、偶然よ、偶然。翠は翠でしょ?とにかく、今度からはゆで卵を作る時は素直にゆでなさい。いい?「う~!ツンデレのアス姉に素直になんて言われたくないですぅ」さっきまでの脅えはどこへやら、性悪の顔に戻った翠。かわいくない妹だわ全くっ!誰に似たのかしら!・・・しまった、コレを言うと「ハル姉とアス姉に決まってるですぅ~♪」そう言ってアタシから離れていく翠。待ちなさい!「待てと言われて待つのは阿呆の極みですぅ」こうして追いかけっこをしてしまって卵の残骸を余計に散らかし、掃除機を取って戻ってきたハル姉に2人そろって怒られてしまった。ここにいると、飽きない。そう思ってから、アタシもハル姉に似てきたんだな、と思った。
※ラップに包んで卵を温める行為は危険なので、絶対にマネをしないでください
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