平日の昼間、普段なら誰もいない居間でワイドショーと、それに対する批判的な意見がユニゾンしている声が響いていた。 翠星石はオーブンで温め直した手作りのスコーンと煎れたての紅茶を運んで、テレビに釘付けの二人の姉を見やる。 スピード離婚、電撃入籍、自己破産、脱税、大食い、流行のトレンド……いつもなら翠星石も含めて家では誰も観ない情報の類いが四角い箱から放出されていた。 こと有るごとに流れるテロップが翠星石の目にも止まる。安眠マクラの紹介のようで、『至れり尽くせり夢でも快眠!』と緑の爽やかな文字が画面を駆けていく。 限りなく馬鹿馬鹿しいにもほどがあるわよねっ翠。 二人の姉こと、ハルヒとアスカはソファの上でふんぞり返り、テレビプログラム内容の低俗さをなじっていた。
「テスト期間て暇よね~。ハル姉のとこのよく判らない無駄な活動に参加した方が幾分マシだわ」「ちょっと無駄とは何よ! あんたが我がSOS団に入っても永遠にヒラ団員の席しかを用意してあげないんだから! それに今日活動無しなのはキョン以外のSOS団員の勉学を尊重したまで」 「どうせあのキョン人間と痴話喧嘩したに決まってんですぅ」 アスカも「同感」と口ごもるハルヒの顔を見つめて翠星石と顔を見合わせた。ハルヒは壁に顔を反らして頭上で束ねたポニーテールの先を指に絡ませる。 涼宮ハルヒがこの髪型をする時の条件は、両人ともお見通しだった。
「まあ、明日はハル姉の学校もテスト終わりなんだしぃ仲直りを兼ねて二人でデートでもして来たら」「なんで団長の私とヒラ団員のキョンがデートしなきゃならないのよ! もし宇宙人と未来人、超能力者に準ずるものならいざ知らず、平凡を平凡で成立させてるあいつなんかとっ」 「はいはい、デートはしない、明日はSOS団は普段通りに活動予定、そーいうこと?」「そうよ!」「翠、明日ハル姉が昼間帰ってきても家に上げちゃ駄目よ!」「アイアイサーですぅ」
二人とも可愛くないわ! 年上をもっと敬いなさい! ハルヒはぶすくれて睨んだがスコーンと紅茶を出され、渋々それを受け取る。美味しいティタイムが悪いのだ。 お笑い芸人の滑ったネタがタレントキャスターの失笑を買い、冬のスイーツ特集を見ずにアスカがテレビのスイッチをオフにした。翠星石がお気に入りのCDをコンポにセットして、定位置の席に座る。 ハルヒはいただきますと低く呟き、どこよりも美味しい甘いスコーンをかじった。
END
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