最終話
アスカは戦って死んだ。翠も戦って止まった。まだ翠の方が”まし”だったのかもしれない。昔と変わらぬ姿で家にある。アスカの遺体は帰って来なかった。「酷くて遺族にも見せられない。こちらで処理する」と言われた。処理とは何よ、せめて一目!と泣き喚いたが、黒服の男に連れ出された。
二人が戦っている間、わたしはシェルターの中にいた。こんなの嘘よ!全部無くなってしまえ!何度もそう願った。けど”なぜか”その願いは叶わなかった。その直前、有希とみくるちゃんが別れを告げに来ていた。突然だった。「これからは普通にくらして下さい」みくるちゃんが言い残した言葉、あれは何か関係があるのだろうか。けど、もうどうでも良い。
悲しくて寂しくて、キョンにすがった。誰でも良かったけど、わたしの近くに居たのはあいつだけだった。そのキョンも、もう居ない。卒業する直前に喧嘩して、それっきりだ。同じ大学にも受かってたのに、あいつは別の大学に入学した。遠い、地方の大学だった。
新学期からこの夏休みに入るまで、一度も大学には行って居ない。何もやる気がしない。不思議な事も要らない。不思議な事は、わたしから妹達を奪っただけ。もうどうでも良い。
けれど、今朝は違った。あの頃の感覚が、説明出来ない自信が体に溢れる。もう一度、あの部屋に、SOS団のあの部屋に行けば何かが起こる気がした。服を着替えよう。姿見を見た、酷いありさまね。肌は荒れ、髪はボサボサだ。まずはシャワーか。小奇麗にして、髪をすき、高校の制服を着よう。
そして走った。夏休みで閑散としている母校の校舎に入り込む。「文芸部」、ここだ。鍵がかかっていない!思いっきり開く。
きっと、みんなが居るわ!アスカも翠も、みくるちゃんも有希も、そしてキョンだって!!
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