冬の帰り道を長女が急ぐ。いつもの活動で少し遅くなってしまった、今日の夕食当番だというのに。
家の前まで来ると、通りの向こう側から、ですぅですぅと鼻歌を歌いながら末の妹がやってくる。「こら!こんな時間まで遊び歩いて!」怒ってはみたものの、説得力は無い。翠星石もぺろりと舌を出しただけだった。まあいいわ、と妹と手を繋いで玄関をくぐる。
「「ただいまー!、です」」大きく呼んでみたが、返事は無い。二人してリビングへ。そこでは、こたつに体を半分突っ込んで次女が寝ていた。
ご飯が出来たら起こしてあげようと、珍しく良姉ぶりを発揮してハルヒはキッチンへ向かう。髪を結えて、エプロンを付けて、冷蔵庫の中身を確認する。手際はもう慣れたもの。おかず、お味噌汁と作っていく。翠星石もあれやこれやと手伝ってくれて、後は最後の一仕事のみとなった。次女を起こすのみである。
「アスカ、アスカ起きなさい」珍しくも足でなく手を使って優しく起こしてあげる。これが予想外の反応を生んだ。
「うう~ん・・・。シンジぃ・・・あと五分・・・」『シンジ』!!?妹の同級生兼同僚兼幼馴染。もちろん知っているが、まさかこんな場面で名前が出るとは。
面白いわね。さて『レコーダーは何処だったかしら』などと考えていると、とことことやってきた翠星石が、つんつんとアスカをつつく。「・・・やめなさいよ~ばかシンジ・・・」思わず翠星石と顔を見合わせる。
「ハル姉?」「しっ!静かになさい!今レコーダー持ってくるから!」「待つですぅ!それよりも、直接夢を覗いてやるです!!」「そ、それはちょっとねえ?」「構わんですよ、姉妹にプライバシーは不要ですぅ!スイドリーム!」
「うう~ん、うるさいわね・・・バカ・・・シ・・・・ンジ?」頭の真上でこれだけのやりとりがあれば、当然である。そして幸せな午睡から目覚めたアスカの見たものは、邪悪に微笑む、少なくともアスカにはそう見えた、かけがえの無い姉妹達であった。
目を爛々に輝かせたハルヒが質問をぶつける「アスカ!あんたいつの間にシンジ君とそんな仲に!?」「アス姉も隅に置けんですぅ~」「ち、ち、ちがっ!こ、これはこないだまで、訓練で同じ部屋にいたからでっ!」「へー。一週間の特殊訓練って聞いたけど、そんな訓練だったの?」「なっ!!?ユ、ユニゾンで、仕方なくよ!」「ユニゾン?二人きりだったですか?」「へ?ミ、ミサトも途中までずっと一緒にいたわよ!」「途中まで?」「いや、だから最後の晩だけ二人っきりで・・・って、何でそんな事言わないといけないのよ!!」「で、どこまで行ったの?」「だから、訓練でそんな事は何もないってば!」
赤くなったり青くなったりする次女を散々にもてあそび、この事は姉妹だけの秘密にすると約束して開放してあげることにした。
そして三姉妹を待っていたのは、すっかり冷めたおかずと、煮詰まったお味噌汁だった。
「アスカ、ほんとに何もなかったの? まさかこの姉を差し置いていくとこまで行き着いたとか・・・」「だから!キスしかしてないって・・・・・あっ・・・・」
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