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赤、紅と出会う」(2007/11/16 (金) 21:14:21) の最新版変更点

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<p>アタシは惣流アスカラングレー。エヴァンゲリオン弐号機のパイロット。<br> そんなアタシも、わがままで負けず嫌いで脳みそと体が直結してる上にトンでもパワーを持つ姉と、<br> これまたわがままで口も悪い人形の妹、そして容姿端麗頭脳明晰天真爛漫なところを除けば普通の女の子。<br> だから話題に乗り遅れないために、毎週月9のドラマはチェックしてるわ。<br> それにドラマに出てくる男はみんな加持さんみたいないい男。バカシンジみたいなのはお呼びじゃないの。<br> アンタなんて端役がいいところなのよ。</p> <p>それはまあ置いといて、アタシがあの子に出会ったのは月曜日だった。<br> リビングでくつろいでいたアタシと翠。ハル姉も団活から帰ってきて晩御飯の用意をしていた、そんな時刻。<br> 突然庭に面した窓が勢い良く割れたの。</p> <p>「「キャー!」」<br> 「なに、どうしたの!宇宙人の侵略!?」<br> ハル姉の戯言はほっといて、アタシは顔をかばっていた両手を下ろした。<br> 目の前には3つのカバンが浮いていた。間もなくカバンがあいて、3体のドールが降りてきたわ。<br> 翠が叫ぶ。</p> <p>「し、真紅!どうしたですか」<br> 「突然おじゃましてごめんなさい。窓は後で直すわ。それよりも」<br> 真紅と呼ばれたドールは、目ざとくリモコンを見つけるとテレビのスイッチをいれた。</p> <p>「なんとか間に合ったわね…あぁ…でももうオープニングは終わってしまっているわ、<br>  ごめんなさいくんくん…それでも私を待っていてくれたのね」<br> 真紅はそう言ってテレビにかじりついてしまった。<br> アタシはようやく我にかえる事が出来た。とりあえず翠に詰め寄る事にする。</p> <p>「ちょっとどういう事よ」<br> 「翠星石に聞くなです、わけわかめ意味トロロです!」<br> 「ヒナもくんくん探偵見るの~」<br> 「ごめんよ翠星石。ジュン君の家のテレビが壊れちゃってさ…」<br> リボンをつけた、一際ちっちゃいドールが真紅の元へ行き、シルクハットを乗せたドールが説明をしてくれた。<br> その子、蒼星石は翠の対で作られた双子らしい。目の色も対になってる。性格も翠とは逆で真面目そうだわ。<br> …で、肝心の説明はというと、この子達の住んでる家のテレビが壊れてお気に入りの人形劇が見られなくなり、<br> 翠のいるここへ来たのだそうだ。</p> <p>「僕のマスターのところでもよかったんだけど、DVDプレイヤーがないから…ごめんよ翠星石」<br> テレビにかじりついている真紅とチビドール雛苺の分も謝る蒼星石。損な性格の子ね。<br> アタシにも真紅の気持ちは少しわかったから、怒る気持ちはおさまったわ。<br> でもハル姉はそうじゃなかったみたい。ドラマを見るなんて時間の無駄だなんて思ってる人だから。</p> <p>「ちょっと真紅ちゃん?翠の妹だって言うのはわかったけど、ちょっといきなりすぎない?」<br> 「静かにしなさい。今いいところなの。あと紅茶をいただけるかしら」<br> それは確かに、静かな重みのある響きのある声だった。その証拠にハル姉は退いたわ。<br> さすがに紅茶は出さなかったけれど、あんなに呆気にとられたハル姉を見たのは初めてかも知れない。<br> おずおずとアタシのそばに寄ってきた。</p> <p>「わたし、なんかおかしな事言ったかしら?」<br> 言ってない言ってない。</p> <p>「ごめんなさい、ハルヒさん。真紅はくんくんの事になるとああなんです」<br> アンタが謝らなくてもいいのに。蒼星石も苦労するわね。</p> <p>「蒼星石の真面目さは姉として誇らしいです」<br> アンタはもっと妹を見習いなさい。</p> <p>──それじゃ、来週もよろし~くんくん!<br> 画面が切り替わってアニメになった。人形劇は終わったみたい。意外に本格的だったのね。<br> ワーキャー言いながら人形劇を最大限楽しんでいた真紅と雛苺は、ようやくこっちに向きなおった。<br> やれやれだわ。アタシはハル姉と苦笑を交わす。</p> <p>「雛苺、あれを」<br> 「はいなのー」<br> あれ?帰るんじゃないの?そう思ってると雛苺はカバンの中からDVDの束を取り出した。</p> <p>「12、13、14、15…全部あるのー」<br> 「いいわ。早速今までのくんくんの推理を復習よ。早くなさい」<br> 「ちょ、ちょっとちょっと!待ちなさいよ!」<br> さすがにハル姉が止めに入る。そういえば蒼星石がDVDプレイヤーがどうとかいってたっけ…<br> それでも今すぐここで見始めるなんて想定外だわ。</p> <p>「ごめんよ翠星石。真紅は新しい話を見るたびに、初めから通して見る習慣ができちゃって」<br> 「あわわ…真紅はそこまでくんくんにはまっちゃったですか」<br> 「初めから?って、あのDVDの数じゃ、相当時間あるわよね!?」<br> 「ええ、多分ここで一気に見るつもりだろうから、8時間くらいは」<br> 冗談じゃない!それじゃアタシの見たいドラマだって見れないじゃないの!</p> <p>「真紅ちゃん!」<br> ハル姉が真紅達につめよる。こういう時は頼りになるわ。</p> <p>「何?ガラスを先に直せというのなら、そうするわ。紅茶が出てこなかったから、不本意だけれど」<br> 「そうじゃない…訳じゃなくて、それも後でちゃんと治しときなさい、それよりも!」<br> また一歩ずん、と詰め寄る。離れてるアタシから見ても結構な迫力だ。雛苺は青ざめて泣きそうな顔をしている。<br> が、当の真紅は涼しい顔をしていた。</p> <p>「それよりも、何?私はくんくんを見たいの、早く言って頂戴」<br> 「く、くんくんが見たいならまた見せてあげるわ。今日はもう帰った方がいいわよ?おうちの人が心配するでしょ?」<br> アタシにはわかる。今のハル姉の声は怒りを抑えている声だ。翠も感付いたのか、アタシの服にしがみついてきた。</p> <p>「し、真紅のおバカ、ハル姉にケンカ売ってるです」<br> 「ジュンにはここの場所も、長くなる事も言ってあるのだわ。のりへの説得も任せてある。<br>  これでいいかしら?それより、長くなりそうだから紅茶を淹れて頂戴」<br> 真紅、恐ろしい子っ!世界を破滅させる可能性のある小火に油を注ぐなんて!<br> そしてその通り、ハル姉の顔が怒りに満ちて行くのにそう時間はかからなかったわ。</p> <p>「こんなの何よ、たかが人形劇じゃない!わたしだって夏休みに孤島で偽装殺人を推理d「だまりなさいっ!」<br> そして刻が止まった。</p> <p>「私だって、できる事なら家でゆっくりくんくんを見たいのだわ。でもできないからこうしてここへ来ているの。<br>  おわかり?そうまでさせるのは全て、くんくんへの愛!そう、全ては愛がそうさせるのよ!」<br> 瞳を輝かせ、周りに薔薇の花びらを漂わせながら語る真紅。<br> そしてハル姉もびっくりな滅茶苦茶な理論。で、でも悔しいっ!身体が勝手に…<br> いつの間にかアタシはいや~んな感じのポーズをとっていた。いや、ハル姉も翠も変なポーズで固まってる。<br> こんなクサイ台詞吐かれて、雛苺と蒼星石はなんで平気なのよ!</p> <p>「ああ、憎いわ…私をこうまでさせてしまうくんくんが…そしてそれに応えてしまう私自身が。<br>  フフフ…あなたには、ここまで愛する者がいるのかしら?…いえ」<br> やめて、アタシ達の内部電源はとっくに0よ!</p> <p>「こうして素直に愛を語ることができるのかしら?」<br> ピシャーン!何かが体中を駆け巡り、アタシの思考はショートして、目の前が真っ暗になった。<br> 完敗だわ。あんな、あんな自己中で高飛車なドールに!</p> <p><br> 気がつくと、アタシはソファーに寝かされていた。すぐに立ち直っていた翠と蒼星石によると、<br> あの後鬼の形相をしたのり(ジュンのお姉さんらしい)がやってきて、<br> ガラスを直させ、翠にひとしきり詫びて、また後日お詫びに来ると言い残して真紅と雛苺を連れ去ったそうだ。</p> <p>「のりはキレると恐ろしいのですぅ…」<br> 「雛苺がかわいそうだったよ」<br> あの真紅が…世の中上には上がいるのね…</p> <p>一番ショックが大きかったのか、ハル姉はまだ動かない。<br> アタシは外の空気が吸いたくなったので、窓を開けようとすると、何かに引っかかってるのか開かない。<br> 真紅ったら、ちゃんと直して行きなさいよ…アタシはもう一度、力一杯窓を開けたの。<br> すると、なにやら黒い物が落ちてきた。<br> 庭に落ちたそれは、小さくもぞもぞと動くと人型に変形した。でも全体的に小さい。イヤな予感。</p> <p>「いたぁい…」<br> 「!!水銀燈じゃないか」<br> 「お、お前!何しに来たですか!」<br> 翠と蒼星石が反応する。やっぱりこの子もドール?今日はローゼンメイデンのバーゲンセールね。</p> <p>「あ、あたしは真紅達がくんくんに夢中になってる間に、ローザミスティカをいただこうと思ってただけよぉ?<br>  別にくんくんを覗き見に来たわけじゃないわ。それをあなた達が邪魔をするから…転寝しちゃったのぉ」<br> 腰をうったのか、さすりながら呟く水銀燈。なるほど、これがミサトのよく言ってる自爆ってやつね。</p> <p>「水銀燈もくんくんを見に来たんだね…」<br> 蒼星石が突っ込む。この子ホントに真面目ね。癖なのかしら。</p> <p>「ち、違うってばぁ!何よぉその目は…つ、つまんなぁい!くんくんは見れないし、腰はぶつけるし…」<br> そう言うと、水銀燈はどこからか翼を広げて飛び立った。</p> <p>「覚えてなさい人間、今度会う時はただじゃおかないからぁ!」<br> そしてそのまま飛び去ってしまった。</p> <p>「相変わらずよくわからん奴ですぅ」<br> 翠の声に振り向いて見ると、ハル姉はもう起きていた。アタシには何やら不気味なオーラが見えたわ。</p> <p>「フフフ…翠、今の子もローゼンメイデンなの?」<br> 「ハル姉、大丈夫ですか?」<br> 「当たり前でしょ。それよりも、そうなんでしょ?」<br> 「そうです。彼女が1番初めに作られた第1ドール、水銀燈」<br> 翠の代わりに蒼星石が答える。</p> <p>「そう…面白いじゃない、ローゼンメイデン。わたし気に入ったわ。…そうだ、晩御飯作ってる途中だったわ。<br>  蒼星石ちゃんもよかったら食べて行きなさいよ」<br> こうして蒼星石を加え、大体1時間くらい遅れたいつもより少しだけ賑やかな夕食は無事に終わり、<br> 蒼星石を見送った後に、アタシも無事月9ドラマを見られたってわけ。<br> 正直、さっきまでの出来事に比べればつまらなかったわ。<br> 全くあのハル姉を機能停止に追い込むなんて、真紅って子、侮れないわ。ま、そうそう会う事もないでしょうけど。<br> 言い負かされるハル姉なんて珍しいモノを見れたって事で、めでたしめでたし!</p> <p> </p> <p> </p> <p>なんて事にならないのがハル姉。アタシは翌日すぐに真紅の姿を見る事になる。</p>

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