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「思い出」(2007/08/21 (火) 20:31:25) の最新版変更点
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<p> ルリがアルバムのページをめくると、ハルヒは楽しげに言った。<br>
「これは何の写真?」<br>
「みんなで海水浴したときの写真です。あ、これはアイドルコンテスト」<br>
2人が見ているのは、ルリがナデシコにいた頃の写真だ。<br>
「なんだか旅行みたいね!」<br>
「……まぁ、当たらずとも遠からず……かな。色々ありましたけど、今となっては<br>
いい思い出ばかりです」<br>
ルリの答えに、ハルヒはしばし考え込む。<br>
「なるほどね。うん、それよそれ」<br>
「……なにがですか?」<br>
「じゃ、ルリちゃん、あたし用ができたからおいとまするわ!麦茶ごちそうさま!」<br>
そう残して、ハルヒはルリの家を出た。</p>
<p> 桜田家に電話をして、遊びに行っていた翠星石を呼び出し、続いてアスカの携帯を鳴らす。<br>
妹たちに駅前集合の旨を伝えると、ハルヒはコンビニに立ち寄ってから自分も駅に向かう。</p>
<p> しばらくして、ハルヒが待つ改札口に、アスカと翠星石がやってきた。<br>
「おそい!SOS団なら罰金よ!」<br>
開口一番そう言うハルヒに、少々不満げなアスカが返す。<br>
「しかたないでしょ?いきなり呼び出された身にもなってよ」<br>
そんなアスカの様子も気にとめず、ハルヒは2人に切符を配る。<br>
「あんたたちの分も買っといたから。じゃ、行くわよ!」<br>
「アス姉の言うとおりですぅ。で、どこに行くんですか?」<br>
「それは行ってからのお楽しみよ!」<br>
訝りながらも、二人はハルヒについていく。ハルヒの手にはガイドブックらしきものが<br>
握られていた。</p>
<p> 電車に揺られること数十分。<br>
「さっ、着いたわ!」と降りた先は、敷地内に自然公園などもある、ちょっとしたテーマパークだ。<br>
ハルヒは高台を指さしながら笑顔で言った。<br>
「あそこからの眺めが最高なのよ!はやく行きましょ!」</p>
<p><br>
たしかに、絶景だった。<br>
ハルヒを先頭に高台まで来ると、見晴らしのいい場所に立つ。<br>
ちょうど夕暮れ時。模型みたいに小さな街が淡い緋色に染まり、言葉を発することも忘れ、<br>
景色に吸い込まれるように見とれる3人。<br>
ふと、翠星石が疑問を口にした。<br>
「そういえば、ハル姉はどうして突然ここに来ようと思ったんですか?翠星石たちまで連れて」<br>
「……ここはね、思い出の場所」<br>
「な~に、キョンとの初デートで来たとか?」<br>
「違うわよ。だいたい、ここ来たの初めてだし」<br>
「はぁ?」<br>
「なんですかそれ?初めて来たのに思い出の場所なんですか?さっきも、ここからの眺めが最高って、<br>
まるで来たことあるような言い方でしたよ?」<br>
「あ、それはガイドブックに書いてあったから」<br>
いよいよ分からないといった顔でアスカが訊ねる。<br>
「じゃあどうして思い出の場所なの?」<br>
「たった今、思い出の場所になったからよ。あたしたち3人の思い出の場所」<br>
ハルヒは、嬉しそうにそう答えた。</p>
<p>「ねぇ、それって単にちょっとした旅行がしたかっただけなんじゃないの?」<br>
「やれやれですぅ」<br>
呆れかえるアスカと翠星石をよそに、ハルヒはコンビニで買っておいたカメラをポケットから<br>
取り出すと、通りがかりの人に渡して写真を撮ってもらうよう頼んだ。<br>
「ま、いいじゃない!ほらほら、写真撮るわよ?」<br>
夕焼け空と遠くまで広がる街を背に、3人の笑顔をフィルムにおさめた。</p>
<p> 数日後、ハルヒはその写真をそっとアルバムに挿んだ。<br>
アルバムには1枚の写真しかないけれど、ハルヒは満足そうにそれを引き出しにしまった。</p>