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「何も無い日」(2007/03/27 (火) 20:25:14) の最新版変更点
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<p>今日は日曜日。<br>
ハル姉は例の集まりでいないのが通例となっている。<br>
つまり用事がない限りはアタシ、アスカと、<br>
「アス姉、掃除終わったですぅ」<br>
「ご苦労さん、じゃ洗濯するから」<br>
「はいですぅ」<br>
この妹、翠星石の二人ですごすことになる。<br>
「ほら早く脱いじゃって。アンタのは先にしないと駄目なんだから」<br>
「わかってるですぅ。ちょっとまちやがれですぅ」</p>
<p>基本的に我が家は家事は分担制だ。<br>
食事はハル姉、洗濯はアタシ、掃除は翠の担当だ。</p>
<p>
ハル姉はなんでもできる人なので恥ずかしながら料理経験の薄いアタシと、ゆで卵をそのままレンジに入れてしまう<br>
ような翠にはまかせておけないということになったので必然的に料理担当になった。<br>
翠は当初洗濯の担当を希望したが、洗濯物をとりこむのが難しいことと、誤って洗濯機に落ちてしまったことがあったので<br>
結果、洗濯がアタシになり、翠が掃除になったわけだ。<br>
それでも最初は大変で掃除機ー翠がいうところの「ゴミ食べ機」ーを扱うのが大変でハル姉としっかり使い方を叩き込んだ。<br>
後になってローゼンメイデンの蒼い子に感謝されたっけ。以前ひどいことになったんだってさ。</p>
<p>
そんなわけで休日は翠は掃除機かけ、アタシは洗濯をこなす。アタシもまるくなったものよね。進んで家事なんて。</p>
<p>「ほーら、ちゃっちゃっとする!」<br>
「ちょ、せかすなですぅ!今終わるですぅ!」<br>
アタシは翠の着ていたドレスを受け取るとそのまま洗濯機に放り込んだ。なんでも、お父様からもらったものだとかで<br>
生地もわりといいのを使っているのでいつも先に洗うことにしている。最初、翠は手洗いを希望したがさすがに手間がかかるので<br>
拒否。タグもついてないし、あとでちゃんとアイロンかけるから我慢なさい。</p>
<p>
「まわれ~洗濯物~ちゃっちゃと汚れをおとすですぅ~」<br>
微妙にテンポの悪い歌にアタシはちょっと吹き出す。抗議された。悪かったわよ。<br>
ちなみにうちの洗濯機は中のドラムが斜めについているやつだ。<br>
わりと新しいものの記憶があったので調達してきたハル姉に聞いたところ、<br>
「団長様は顔が広いのよ!」とのこと。・・・見知らぬ人、お気の毒さま。</p>
<p>
ほかにあせってする用事もないので、二人でぼうっと洗濯機を見つめている。こういった時間は貴重だと最近知った。<br>
「アスカはいつも走ってる感じだから、たまにはなにもしない時間も必要だと思うよ」<br>
うるさいバカシンジ。・・・まあ、悪くないから感謝だけはしといてあげるわ。心のなかで。</p>
<p>
隣りでは翠が下着姿で洗濯機の上で腕を組んでいる。無論「翠専用登り台」使用。<br>
何の気なしにそちらを見る。・・・球体状の間接が目に入る。<br>
今ではハル姉もアタシも気にすることはほとんど無くなったが、翠は「生きる人形」だ。<br>
最初はそりゃ驚いたが、人間、慣れるものでいまでは「人とちょっと違うくらい」としか思わなくなってしまった。<br>
その典型がハル姉で、今日も翠をほうって「不思議探し」なんぞをしている。これって灯台下暗しってやつじゃない?</p>
<p>
ふと、頭の中で「人形」という言葉を思ったアタシは昔のことを思い出した。<br>
そういうことってない?連鎖的に記憶が呼び起こされるってヤツ。<br>
しかもあんまりいい記憶じゃないのよね・・・</p>
<p>「あんな人形に?」</p>
<p>「アンタだって人形のくせに!」</p>
<p>「アンタはアタシの人形なんだから!」</p>
<p>
「とにかく、アタシのいうとおりに動いてればいいのよ!」</p>
<p>
・・・思い出してへこんだ。ファーストにもひどいことをいったものだ。<br>
一度謝っておくべきかな・・・やめた。ガラじゃない。いまも好きなわけじゃないし。</p>
<p>再び翠のほうを見る。<br>
人間長生きはしてみるものだ。いや、14年しか生きてないけど。<br>
とにかく、人形というものを嫌悪(といってもいいと思う)していたアタシに妹という一番近い立場で「人形」<br>
が現れた。この黙ってもいなければ言うことなんて聞きやしない「人形」をアタシは受け入れていた。<br>
思えばそのことで抗議したこともなかった。なぜだろう?<br>
キョンのいうところの「ハル姉の不思議パワー」のせいかもしれないけど・・・きっと関係ない。人形か人間かなんて瑣末なこと。</p>
<p>翠はアタシたちの妹なのだから。</p>
<p>そんな都合のいい考えでよしとする。</p>
<p>翠の頭をわしわしとなでる。</p>
<p>「ちょ、いきなり何するですか!」<br>
顔を真っ赤にして抗議する翠。<br>
「そんな気分になっただけよ」<br>
「やるなら・・・ちゃんといってからやりやがれですぅ」<br>
そういって抱っこをせがんできた。正直可愛い。口にはしないけど。<br>
「はいはい」おとなしく要求に従う。<br>
肩とひざに手をまわし、そっと持ち上げる。こうしないと翠は怒る。<br>
ジュンが真紅を抱きかかえるときと同じらしい。ジュンにしてもらいたいなら正面向かって言えばいいのに。<br>
「アス姉はんなこといえるんですか?」<br>
無理ね。ごめん。</p>
<p>
すすぎの終わった衣類を乾燥に切り替える。翠の服はこれ一着しかないのでスピーディに完了させる。<br>
今度、新しい服をジュンに作らせよう。たまには他の服もいいと思うのよね。</p>
<p><br>
「たっだいまー!ついでに晩御飯買ってきたわよー!」<br>
洗濯が終わって翠がすでにドレスに袖を通したころ、我が家の長女が帰還なされた。<br>
「ハル姉が帰ってきやがったですぅ。はやくいくです、アス姉!」<br>
「そんなにせかさないでよ!わかったわかった」<br>
結局今日は家事だけで終わってしまった。<br>
それでもいい。三人はどうせ明日もあさっても一緒なのだ。今日も特別でないただの一日。<br>
でも大切ないちにち。<br>
「ハル姉、今日はなに~?」<br>
「期待してるですぅ~」</p>
<p>アタシたちは頼りになる長女に向かっていった</p>