大和彼氏


選評

選評1

まず前提の世界観の設定を軽くおさらいしておくと
イチガクという、設立10数年だがやたら影響力がある高校の次期生徒会長(キング)を今年は主人公が選ぶ
ことになってしまってさあ大変。という話
キングは学内の特進科(エリート集団)から選ばれることになっており、また生徒会長としてだけでなく
日本の政治すら動かすレベルの権力を持つことになる

というのが共通の世界観になる
この時点で多くの人は不安になり厨二設定好きは歓喜することになるが、残念ながらこの設定がストーリーに
生かされることはない
やたらとキング偉いキングすごいキング最強おれもキングになりたい、と強調されるが実態として何をして
いるのかは全く不明である。そもそも高校生なんだから参政権すらないのにどうやって政治を動かすんだと
EDにはキングになった状態のボイスもあるが、ほぼどのキャラも「忙しくて大変ーラブラブチュッチュ」で仕事内容は不明
たぶんライターもキングが何か分かっていない
また一応学園モノであるが、特進科以外の生徒は全く出てこず
授業風景もほとんど出てこないため学園モノだということをうっかり忘れそうになる

ストーリーは短い、急展開、意味が分からないの3拍子そろっている。あらすじはだいたい以下のとおり

攻略キャラ(以下関西)のことをよく知ろうと話しかけてみたら下僕にさせられる
一方関西の元には「あなたこそキングにふさわしい人です云々」と、怪しい組織の人物が近づいてくる
そいつらが学校のセキュリティに侵入して、停電させたり色々こまごまと何かやらかす
それが学校側にばれ、関西が組織に呼び出され殺されそうになる
しかしそれを察知していた関西、密かに呼んでいた学校の治安維持部隊が逆に組織の人間を捕まえてめでたしめでたし

つっこみどころは多々あるが、「武装した傭兵のような(※原文ママ)」部隊を抱える高校のわりに警備がザル
すぎるのが面白かった
おかしい文章といえば「紫の瞳」という地の文もどうかと思ったが近未来なので本当に紫なのかもしれない
また選択肢は全体で各章1箇所(全4章で4箇所)×3つ=81通りしかなく
選択肢によってストーリーが変わることがないので(直後の文章と、ED分岐に関わるパラメータが変わるだけ)
全通り試すには非常にありがたい。がノベルゲーとしてそれでいいのか?と

肝心の恋愛部分だが
「下僕にさせてください」から始まる恋なので評価が難しいところである
下僕といってもコンビニまで食べ物を買いに走らされたり見ていたテレビを消される程度できついイジメや
エロ方向の描写はほぼないので安心してほしい。いやがらせでキスされるくらいである
逆に主人公の方は、しぶしぶ行った下僕宣言後、次の章ですぐ他の女性に嫉妬したりそのせいで眠れなくなったり
しているのでもしかしたら生来の下僕根性持ちかもしれないので地雷の人は注意した方がいい
個人的には、主人公は典型的な「いい子」かつ「都合のいい子」キャラだと感じた
しかし全体の8割を占めるボイス部分で一切登場せず
ノベルで印象に残る部分というとたまに上から目線で正論を吐くところくらいなので、正直よく分からない
上記のように主人公が関西をいつ好きになったかも分かりにくいが
最初にキャラ選択をした時点で恋愛EDしか用意されていないので、ことさらに描写する必要はないのだと納得するしかない

関西の方には公式属性として「ドS」の看板がついているが、ただの口の悪い自信家レベルだと感じた
高熱でフラフラになりながら「風邪ごときに屈服する俺ではない(キリッ」にはうっかり母性をくすぐられてしまった
ドS好きさんの感想が聞きたいところである、がなかなか高額なゲームなので無理強いはできない

絵、立ち絵はそこそこ安定していてある意味がっかりしそうになったが
最後に表示されるキスフラッシュではメガネが顔の曲面に合わせてしっかり折れていて安心した
ちなみにキラキラ効果はなくなっていた、が、にゅるーは健在である
そして主人公の横顔のきもさも安定したレベルを保っているので、心の準備をしてから見るよう忠告しておく

ボイスは確かに量が多いし関西弁も不自然ではない
ただし全てが一方的に話しかけられている状態なので慣れないと厳しいものがある
そして「ドS」ボイスを期待すると肩透かしをくらうこと必至

まとめると
あまりにも厨二一直線な設定とシナリオだが、
そもそも薄すぎて何がなんだか分からないまま終わってしまった、という印象
これで945円(税込み)、CD一枚よりはリーズナブルだが
実際には売れない割れない貸せないそもそもゲームじゃなかった、なのでわりと酷いと思った

選評2

2011年も変わらず安心のぼtt・・・課金体制で、大和彼氏の配信は続いていた。

2011年元旦、ひととおり目当てのキャラに課金し終えたユーザーを退会させず引き止めるための案であろう、
やまかれみくじなるものが配信され始める。
これは5通りのおみくじボイス×10人(+隠し1人)分=55種類あるボイスを完全ランダムで手に入れられる
というもの。
もっとも一回引くのに2pt(つまり有料)かかるわ、数回しか引いていないのに余裕でダブるわ(ダブった
ものを誰かにあげることなど当然出来ない)、キャラによっては30秒近くあったりギリギリ10秒程度だったりで
長さにばらつきがあるわ、正月限定と思いきや2011年の12月31日まで実施中で季節感ガン無視だったりするわ、
その上コンプしても特に意味はないなど、いろいろと悲しい出来である。

また4月配信のキャラ(隠し扱い)に至っては、あらかじめ945円払って別のキャラを100%攻略していなければ
シナリオロックは外れず無料分すらプレイ不可、さらにそこから攻略するのにまた945円分のポイントが必要になる。
中の人ファンであっても(どころか中の人ひとりにしか興味が無いユーザーなら)課金を躊躇うであろう、
驚くほど強気の金額設定である。

絶妙な気持ち悪さが持ち味の立ち絵やスチル、薄味で駆け足で意味不明な超展開シナリオは今年も健在だが、
実はひそかにほんの少しだけ成長している部分があったりもする。
なんと後期に配信された一部キャラは各キャラ専用BGMや、衣装差分立ち絵が実装されているのである。
こうなると、どいつもこいつも全キャラ共通のBGMしか流してもらえなかったり、
地の文でスーツを着ていようが、ボイスでタキシードを着ていようが
キスフラッシュで入院患者の格好をしていようがシャツ肌蹴ていようが
立ち絵のほうは制服姿のみでゴリ押しされた、初期に配信されたキャラたちが不憫に思えてくる。
だが冷静になって考え直してみると、他のゲームではごく当たり前なはずの「専用BGMがあること」や
「衣装差分があること」が優遇だか格差だかになってしまっているのが、そもそもおかしいのだと気が付く。

プレイしていると評価の基準点がおかしくなってくる、それがヤマカレクオリティ。
新しいキャラが配信されるたびに「ああこいつに比べれば、過去に配信されたキャラはまだマシだった」と
“普通”の感覚が麻痺してゆき、評価のハードルはどんどん下がっていく。
しかし昨年12月末時点(個別シナリオの頭から保健室で主人公を押し倒したキャラ)で下がりすぎてもう
地面スレスレ、土にめり込む寸前だろうというところまで下がったと思われたハードルを、2011年に入ってからも、
  • 1月 天然お兄ちゃんキャラな年上同級生だと思ったら、ボイス部分が不必要なエロスまみれだった
  • 2月 絶対零度の究極ドSという触れ込みのキャラの実態が、純粋に「ドS」を期待しているユーザーには残念なものだった
  • 3月 同じクラスの9人の生徒たちから次のキング(生徒会長の異称)を選ぶ物語なのに、なぜか教師も生徒会長になれた
  • 4月 厨二要素が濃すぎるシナリオに唖然、留年強要EDやゆとり徒競争的EDでさらに唖然
こうも次々下げ続けていったのには、さすがと驚嘆するしかない・・・。

以降から大和彼氏1月配信キャラ・高岡矢太郎(以下四国)の個別シナリオレビュー
ネタバレを含むので注意されたし
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ボイスパートの方言率は常に100パーセント。
キメどころでいきなり方言になったりするだけで基本標準語なキャラや、
語尾しか訛っていないように聞こえるキャラに比べれば評価されるべきだと思う。
しかしその美点すらも「中の人の土佐弁は他で聞き足りてる」とする声もあった。

くじを引けば大当たり、試合や勝負では相手がミス連発して常勝不敗、テストは適当に記入してもいつも満点。
ラッキーボーイどころじゃ済まないレベルの、因果律を無視して好運を繰り寄せる最強最悪の能力者・四国。
しかしながら特筆すべきはそのオカルトじみた特殊能力(何故そんな能力持ちかの説明は最初から最後まで一切無し)
よりも、「妙に生々しくて気持ち悪い」と評判のエロ要素である。
本来のターゲット層である声優ファンを釣るため(程度の差こそあれ)いくつかはそれっぽいボイスを入れて
くるのは、ヤマカレ全体に共通していることなのであるが、しかし・・・。

その1
学校の中庭で鰹たたきを作っていた四国に、切り身をおすそ分けしてもらうが、口の端に食べカスがついてしまう
すると四国が直接、舌で舐め取ってくれた上「甘い・・・ああ、リップクリームかw」みたいなこと言ってくる
(補足:バカップルならともかく、この時はまだ知り合ってそんなには経っていない頃という設定です)

その2
風呂に入ると、入浴時間を間違えたらしく四国と出くわす
出て行こうとする主人公を引き止めて、下のきょうだい(弟は中学生、妹は小学生)と
いつも一緒に入っているから気にしないと、おせっかいにも髪を洗ってくれる
そして湯船に浸かろうと誘うが、主人公がタオルを取ろうとしないところで、ようやく男子じゃなかったと気付く
(補足:近眼で気付かなかったらしいが、声や髪型やタオルの巻き方では気付かなかったのかと)

これ以外にもエロボイスはあるけれど、色々ひどすぎると感じたのはこの二つ。
なお一連のラッキースケベぶりは、プロローグでいきなり主人公を超能力で魅了して押し倒した
魔性の色気キャラ東北(12月配信)や、第一章(無料分)でいきなり嫌がらせとしてキスかました
アホないじめっ子キャラ関西(2月配信)よりも「リアルな気持ち悪さ」「生理的に無理」と言われており、
お兄ちゃんキャラならではの「主人公を妹扱い」や、「マイペースで天然」といった性格設定が
これらエロボイスの言い訳にしか聞こえないのが原因では、と分析された。

また四国は、ED1(ベストED的な位置づけ)が配信当初はバグで封鎖されていたりもした。
それに関するアナウンスや対処法は基本的にツイッターでのみ流すという公式の対応に
アカウントを持っていない自分は、まさしく誰かが叫んでいたとおり
「ツイッター見てない人は永遠にコンプ不可」状態になるところだった。
最終更新:2011年11月15日 20:55