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** 第1話「僕の進むべき道」
「オレ、バイト辞めたんだ。」
母は手を止めた。
しかし、目は自分には向いていなかった。
「あんた、就職どーすんの?」
淡々とした態度だった。
*原案 味塩美沙子 文 優田
「オレ、バイとやめて爪楊枝職人になりたいんだ。」
母は、ふうん、と興味がない感じで言った後、他には何も言わず、ただ洗い物をしていた。
当然だ。爪楊枝職人なんて、興味は湧かないだろう。
しかし、僕が本気で考えていたことを、あっけなく拒否されたみたいだった。
そのことに、寂しさと苛立ちを感じた。
母さん、オレ・・・オレなりに真剣に考えてるんだよ。
そう言いたかった。
しかし、僕は洗い物をしている母さんの後ろ姿を見つめることしか出来なかった。
次の日、僕は新聞の折り込み広告をあさって、爪楊枝関係の仕事を探した。
このままじゃいられなかった。
何か、すぐ行動に出たかったのだ。
「あった・・・」
息を呑んだ。爪楊枝の仕事に関するチラシがあったのだ。
いてもたってもいられなくて、早速僕は受話器を手にとった。
何回かのコールの後、若い女性の声が聞こえた。
「はい、原爪楊枝東京本店ですが。」
女性、というよりも、かん高く、少女のような声だった。
僕の心臓は、さっきからバクバク言ってる。
緊張で、受話器をとる手がかすかに震えてる。
「あ、あの・・・新聞のチラシをみたんですけど・・・僕、地球 終っていって、あの」
そういうと僕は一呼吸ついて
「僕を正社員にして下さい!」
と、叫んでいた。
自分でも、すごいことをしたと思う。
この僕が人に向かって、大声で叫んだのだ。
このことは一生忘れられない。忘れようとも思わないだろう。
「じ、実は僕、前からこういう仕事に興味があって・・・」
叫んだ後、慌てて自分のことや、爪楊枝のことなどを気付けば夢中でしゃべっていた。
いけない。
1人でしゃべっててどうするんだ。
電話ごしからでも、女性が困っているのが分かる。
すると、いきなり声が電話から聞こえてきた。
僕は、また慌ててそっちに集中した。
「あの・・・では、明日にでもこちらに来て頂けませんか。
一応、時間や場所なども言うので、メモかなにか用意していただけると・・・・・・」
「あ、はい。・・・はい、・・・はい。はい。わかりました。はい、
では、明日の10時に。」
そういって電話をきった。
僕は、側にあったソファーに倒れ込む。
たった数分なのに、ひどく疲れた気がした。
改めて、僕は何ということをしてしまったんだろうと思った。
しかし、僕の胸の中にふつふつと喜びが湧き上がってきた。
僕は、ソファーから立ち上がり、のみかけだった麦茶を一気に飲み干した。
冷たい麦茶は、乾いた喉と興奮した心にしみわたってくような気がした。
これで、爪楊枝職人への第1歩を踏み出したのだ。
道が、開けたんだ。
そう思うと、ワクワクした気持ちを押さえられずに叫んだ。
「やった!爪楊枝職人になれる!!」
気がつけば僕は、ガッツポーズまでとっていた。{まだ決まってないのにネ☆}
僕はその日、まるで初めての遠足を明日に控えた子供のように、
ドキドキワクワクして眠ることができなかった。
第1話「僕の進むべき道」 終わり
つづく。