むかしむかし、はんしん村という村にひとりのわか者がやってきました。
そのわか者は、めんどうみがよかったので、みんなから「あにきかねもと」とよばれるようになりました。
今日もはんしん村は、(まゆみ村長はきほんてきにくうきなので)あにきかねもとを中しんに
げんきにみんなで力を合わせて生かつしていました。
そんなある日のことです。
あにきかねもとは、村のしっかりもの・とりたににそうだんをうけました。
「ぼくのしょくりょうのびちくが、しらないあいだにへっていることがあるんです」
それをきいたあにきかねもとは「おれをうたがってんのか」とごりっぷく。
とりたにはあせって言いました。
「ちがいます。どうかはんにんさがしにきょう力してください」
うつわのでかいあにきかねもとは、「まかせとけ」かいだくしましたが、心の中ではあるじょうけいがうつっていました。
「あにきっていうのも…いろいろ…いろいろたいへんなんや…」
だれにいいわけしてるのか、そうつぶやきながらとりたにのしょくりょうをあさっているじぶんのすがた。
しかしちかごろは、だめだめなつらいさんを見ながら
「これじゃあいかん」
と、しょくりょうあさりはやめていたし、あさったことのないせきもとのいえにもひがいがでたので、ほかに犯人がいるはず。
あにきかねもとはそうかんがえました。
そしてあにきかねもとは、そいつをつかまえてぜんぶなすりつけようとかんがえました。
次の日から、あにきかねもとととりたにせきもと、あとなぜかあかほしもふくめて4人ではりこみをかいししました。
あかほしはさいしょ「(おれはどろぼうに)入られてねぇんだよこのやろう」とさけびましたが、
あにきかねもとに首をつかまれるとすぐにおとなしくなりました。
これもあにきかねもとのかりすまがなせるわざなのです。
はりこみをかいししてしばらくしたころ、とりたにの家にはいっていく人かげをみつけました。
そして
「しもさん…」
とりたには思わずつぶやいてしまいました
とりたにはすぐさま、しもさんをとめようとしました。
が、あにきかねもとに
「しばらくようすを見よう」
とさとされました。
しばらくして、はだいろが少しよくなったしもさんがでてきました。
4人はあとをつけることにします。
しもさんはせきもとの家と、あとかのうの家にも入っていきました。
しもさんにためらいなどありません。
しもさんが家にはいるたびに、あにきかねもとは「まだや…」とみんなをせいしました。
しかし、しもさんがあにきかねもとの家にはいるとあにきかねもとのようすがげきへんしました。
あにきかねもとはいまにもVやねんもうだショーをかいさいしかねないいきおいでしもさんにちかづいていきました。
3人はやばいと思い、ひっしにとめました。
あにきかねもとのつよすぎる正ぎの心が、少しのどろぼうというあくをもゆるせなかったのです。
とりたににサブミッションをきめながらタバコをすったあにきかねもとはすっかりおちつきをとりもどしました。
「しもさんはどこからくるのか」
4人はどろぼううんぬんより、そのぎもんをかいけつしたいと思ったのです。
しもさんをついせきすること数十分。しもさんは、みょうなちゃ色の家に入っていきました。
それは家、というよりは「はこ」のようないんしょうをうけましたが、
まわりにもたくさんおなじようなものがあるので、きっとしもさんの村があるのだ、と4人は思いました。
あにきかねもとはあかほしに
「おまえきりこみたいちょうやろ、いってしもさんひきずりだしてこい」
とエールをおくりました。
さっきはどろぼうをきにしないそぶりをしていたあにきかねもとでしたが、ふつうにねにもっていたのです。
このころにはすでにあかほしには、ぱぶろふのいぬのように、
あにきかねもとにくびのいちに手をもってこられると、めいれいをきいてしまうかなしいさががみについていました。
おそるおそるしもさん家に入ったあかほしでしたが、なかなかでてきません。
じこぎせいのかたまり・せきもとがみずからしもさん家に入っていきましたがまたしても帰ってきません。
とりたにとあにきかねもとは、仕方ないのでじぶんたちもしもさん家にとつにゅうすることにしました。
なかに入ってみるとあらふしぎ。ぼろそうながいけんとはうってかわって、とてもあたたかくかんじました。
あかほしとせきもとは、しもさんにもてなされていたのです。
あにきかねもとがしもさんにしょくりょうのだい金をせいきゅうしようとしましたが、
それよりさきにとりたにがしもさんにしつもんしました。
「しもさん、このいえはなにでできているんですか。」
しもさんはわらってこたえました。
「みらいにばけるしんそざい、だんボールさ。」
聞いたことのない名前に、あにきかねもとたちはきょうみしんしん。
そういいながらしもさんはみんなにもちをふるまいました。
あかほしは
「これ…うちのだ…」
とつぶやきましたがだれもきいていませんでした。
それからしもさんはいろいろな話をしてくれました。
むかしはわりとゆうふくだったこと、かい犬のラガーのこと、きんじょのみんなでたべた犬なべのこと。
しもさんの話はどれもそうぜつでした。
うみの外に行こうとしたけど、さすがのだんボールもうみをわたれなかった話もしてくれました。
とりたにはすみっこのほうに、ラガーとかいてある板をみましたが、みなかったことにしました。
あにきかねもとは、はやくとりかえすものをとりかえしてかえりたかったのですが、
あかほしがやたらしもさんの話にくいついてはなれません。いぬだけに。
しびれをきらしたあにきかねもとは、しかたないのであかほしのくびのあたりに手をおきました。
よく日、あにきかねもとたちはひっぱりだこ。
なんだかんだいってみんなしもさんにきょうみしんしんだったのです。
それいらい、しもさんがむらにおとずれると話をせがまれるようになりました。
そのせいでしょくりょうちょうたつもしにくくなり、いらいらしたしもさんは「ラガー」とかかれたいたをじめんにたたきつけていました。
そんな秋のある日のこと、はらたつのりしょうぐんがおさめるよみうり城のつかいがしもさんのもとにおとずれました。
はらたつのりしょうぐんがひきいる「巨人ぐん」は、
さまざまな国の人でこうせいされているので、「たこくせきぐん」とよばれています。
はらしょうぐんのつかい「きむたく」はいいました。
「みらいにばけるしんそざいをよこせ。さもなくばはんしん村のせきもとのいのちはないぞ!」
なぜせきもとがぴんぽいんとし名なのかはわかりませんが、しもさんはなやみました。
しもさんにはゆめがありました。
いつかだんボールでつくったふねで、にほんをとびだしたいというゆめが。
たまたまそれをきいていたまゆみ村長は、村のみんなにつたえました。
きほんてきにくうきなので、きむたくには見えなかったのです。
きほんてきにくうきなおかげで、きほんてきにやくたたずからぬけだせたので、ふくざつな気ぶんでした。
あにきかねもとたちはそれをきいて、はなしあうひつようもありませんでした。
「このままやとせきもとがしんでまう。みんなでたすけよう。」
そう言うと、みんなありったけのどうぐをぶきとしてもち、まずはしもさんのもとにいきました。
ちなみにつらいさんはせんいちについていったのでいません。
みんなのすがたをみたしもさんは、それはもうおどろきました。
そしてふだんかもくなぶん、しもさんはかんどうのなみだをながしました。
だとう、巨人ぐん。
はんしん村のみんなはいっちだんけつしました。
よみうり城についたはんしん村のみんなは、なぜかやたら五分五分いじょうのたたかいをくりひろげました。
なかでもあにきかねもとのれんぞくフルイニングはべつにやくにたちませんでした。
かずかずのたたかいをくぐりぬけ、あにきかねもと、とりたに、しもさんはかなりおくまでたどりつきました。
しかしはらたつのりしょうぐんには、ゆうしゅうなかしん・「きょじんおがさわら」と「らみれす」がいます。
さいごまできがぬけません。
とりたにはきょじんおがさわら、あにきかねもとはらみれすとけっしのたたかいをくりひろげます。
「いけ、しもさん!はらたつのりをやっつけてこい!」
あにきかねもとがそうさけぶと、しもさんはけついをひめた目で
「すまんな。」
そうつぶやいてかけぬけていきました。
しもさんははしりました。
とりたに、あかほし、せきもと、やの、あにきかねもと。そしてじぶんのちにくとしていきつづけるラガー。
みんなのかおがうかびます。
はしって、はしって、しもさんがはしりぬけたさきには――――。
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ばつじたいは、どうということはなかったのですが、あのたたかいでしもさんはゆくえふめいになりました。
しもさん家もはらたつのりしょうぐんにもっていかれてしまい、さらちになっていました。
のうさぎょうからかえってきたあにきかねもとは、へっていないしょくりょうにさびしささえかんじていました。
しもさん、めしくらいわけたるからかえってきてくれ。
あにきかねもとはそんなことまでつぶやくようになりました。
いぜんぶちぎれていたあにきかねもととはおおちがい。
しもさんはみんなにあいされていたのです。
あにきかねもとは、あしたもいみふめいなフルイニングをつづけるためにはやめにとこにつきました。
よくあさめざめると、しもさんがじぶんのしょくりょうをあさっていました。
あにきかねもとはおどろき、そしてしもさんにかけよって。
あついてっけんせいさいをくわえましたとさ。
おしまい
最終更新:2009年10月15日 14:01